はじめに
自重やジムでのトレーニング、ランニングなどの有酸素運動などを行うためには、1回あたり30分〜2時間程度の時間が必要となります。また、運動をした後にしっかりと身体を回復させないと、次のトレーニングまでのインターバルが伸びたり、翌日の生活や仕事に響くことも考えられます。
少なくない時間を運動に投資するのだから筋トレにしてもランニングにしても時間内のパフォーマンスを最大化したい、運動後の疲れは早めにとって次のトレーニングや日常生活に響かないようにしたい、などと考えるのはトレーニングに取り組む方にとっては当然でしょう。
いくつかのサプリメントでは、
- 1. 最大筋力の向上
- 2. 持久力の向上
- 3. 疲労回復の促進
などといった機能でそういったニーズをサポートすることができる可能性が示唆されています。
今回は、そのようなトレーニングに関連して役に立つ成分・原材料を、それぞれの効果毎に1つずつ詳しく解説していきます。
1. 最大筋力の向上
まず最初に紹介するのは、最大筋力の向上が期待される成分です。こうした成分としては、代表的なものとしてクレアチンやカフェインなどが挙げられます。
ビッグ3(ベンチプレス、スクワット、デットリフト)などのウェイトトレーニングを行う方にとっては、特に有用なサプリメントになるでしょう。
クレアチン
クレアチンは、豚肉や鶏肉、魚などに含まれる有機酸の一種です。体内でエネルギー源として貯蔵されるため、スポーツなどにおいてはその有効性が重宝されています。
100m走や砲丸投げなどの瞬間的なスポーツのほか、サッカーなどのスポーツにおいてもパフォーマンス向上への有効性が認められています。(参考1、参考2、参考3)
また、53件の研究レビューにより、クレアチンのサプリメントがベンチプレスの成績をおよそ5%改善することが分かっています。(参考)
その他、高強度運動のパフォーマンス向上として、摂取の前後でベンチプレスや垂直飛び、100yダッシュのパフォーマンス、また、除脂肪体重が有意に向上することが報告されています。(参考)
また、クレアチンの効果を十分に発揮するためには、ローディングと言って一定期間継続して摂取する必要があるとされています。(参考)
それに対して、ローディングなしでもクレアチンの効果が期待できるように改良されたクレアルカリンという成分もあります。
💡 POINT!
クレアチンを摂取すると、体内エネルギーの貯蔵量が増加します。そのため、より激しく長くトレーニングすることが可能になると考えられています。
クレアチンについてより詳しく知りたい方は「クレアチンとは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説」という記事も公開しているため、興味があれば併せてチェックしてみてください。
カフェイン+L-テアニン
カフェインは一般に、コーヒー、紅茶、ココア、エナジードリンクなどに含まれています。
カフェインもまた、筋力や持久力など幅広い能力に対してポジティブな影響を与えることが期待されています。実際にトレーニングユーザー向けのサプリメントの成分欄で見かけた方も多いのではないでしょうか?
しかし、カフェインはパフォーマンス向上や眠気の解消に役立つ一方で、神経過敏や緊張感、不安などの副作用をともなう可能性があります。これらの副作用は、サプリメントなどでL-テアニンとカフェインを組み合わせることで解消することが可能であると考えられています。(参考)
L-テアニンとは、お茶やキノコに含まれるアミノ酸です。眠気を増やさずにリラックス効果を促進すると考えられています。(参考)
いくつかの研究で、カフェインとL-テアニンの組み合わせが反応速度や記憶力を改善し、さらに身体疲労や精神疲労を軽減することが示されています。(参考1、参考2、参考3、参考4)
💡 POINT!
L-テアニンと組み合わせることにより、副作用を伴わずにカフェインのパフォーマンス向上効果を得ることができる可能性があります。
カフェインについてより詳しく知りたい方は「カフェインの11の効果とは?エビデンスをもとに効能や副作用を解説」という記事も公開しているため、興味があればご覧ください。テアニンについても、「L-テアニンの効果とは?エビデンスをもとに効果や副作用、飲むタイミングを解説!」で詳しく解説をしています。
またalloehではカフェインと、L-テアニン同様にカフェインとの相乗効果が明らかになっているザイナマイトを含んだサプリメント「Zone」を販売中です。こちらもよければご覧ください。
チロシン
チロシンは、体内でも生成されるアミノ酸です。食品では鶏肉や卵、乳製品などに多くに含まれています。
チロシンは、神経伝達物質の生成に重要とされています。これらの神経伝達物質は、精神的および肉体的に厳しい活動をすることで減少すると考えられており、集中力や身体のエネルギーに悪影響を及ぼす可能性があります。多くの研究で、チロシンのサプリメントが注意力やエネルギーを高めるのに役立つことが示されています。(参考)
現段階では、チロシンは神経伝達物質の貯蔵量が少ない人に対して有効であることが示唆されています。(参考)
さらに、チロシンの摂取は安全であることが証明されています。ただし、これはあくまで研究報告上の話であり、実際にチロシンを利用したユーザーの口コミでは吐き気などの副作用が報告されていることもあるため、利用を考える場合には留意する必要があります。(参考)
💡 POINT!
チロシンの摂取は、体内の神経伝達物質の回復に効果を示し、それによって注意力やエネルギーレベルの改善に役立つとされています。
チロシンについても「【徹底解説】L-チロシン、効果・副作用を色々な文献で調べてみた」という記事で詳しく解説しているので、よければご覧ください。
2. 持久力の向上
ランニングなどの有酸素運動はもちろん、ウェイトトレーニングにおいても確保できるレップ数が多ければトレーニングの質が上がるため、どのような運動をする方でもスタミナは大切でしょう。
このセクションでは持久力の向上が期待できる成分・原材料として、シトルリンやビートルートについて解説していきます。
L-シトルリン
体内のシトルリンが増加することでアルギニンが増え、その結果体内の一酸化窒素の濃度が増加するとされています。一酸化窒素には血管を拡張する作用があり、血液の循環を増加させます。(参考)
これにより、血液や酸素、栄養素の体内における循環が強化されます。一方で、一酸化窒素が不足している場合、エネルギー不足が発生する可能性があります。(参考)
L-シトルリンは尿素回路にも関与しており、体内からアンモニアを除去するのに役立ちます。アンモニアの生産は、激しい運動によって引き起こされる疲労の主な原因です。そのため、L-シトルリンは激しい運動に伴う疲労を軽減し、長時間の運動を可能にするとされています。(参考1、参考2)
ある研究では、L-シトルリンのサプリメントを摂取した参加者が、プラセボと比較して、12%長く、7%激しく運動することができたと確認されています。(参考)
また、L-シトルリンの安全性は、多く摂取した場合においても確認されています。(参考)
💡 POINT!
L-シトルリンは、体内で一酸化窒素の生成に関わり、血管を拡張して、栄養素や酸素を体の細胞に届けます。これは疲労を軽減するのに役立ち、エネルギー生産に役割を果たします。
シトルリンについてより詳しく知りたい方は「シトルリンとは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説」という記事も公開しているためぜひご覧ください。
ビートルート
ビートルートは、ビーツやレッドビートなどとも呼ばれる根菜です。食物繊維やビタミン、ミネラルのほか、硝酸塩が豊富に含まれることで知られています。(参考)
硝酸塩には体内で一酸化窒素を生成し、血管を弛緩させ、血流と酸素供給を増加させる効果があります。そのため特に運動に関して、より効率的にエネルギーを生成することができます。(参考1、参考2)
また、いくつかの研究において、ビートルートの補給が運動中に疲れるまでにかかる時間を増加させるという効果が示唆されています。(参考1、 参考2)
他のケースにおいては、ビートルートを含むサプリメントを摂取することで、プラセボを摂取した場合に比べて25%長く運動することができたと報告されています。(参考)
無害ではありますが、ビートルートの色素が原因で尿や便が赤く染まることがあるため、摂取する際にはその点に注意が必要です。
💡 POINT!
ビートルートには、血管を弛緩させる硝酸塩が含まれています。サプリメントなどとして摂取することで全身の酸素供給量を増加させ、長時間の運動が可能になるとされています。
ビートルートについても「ビートルートとは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説」という記事で解説しているため、興味があればご覧ください。
3. 疲労回復の促進
運動疲労の早期回復は、次回トレーニングまでの期間を短くしたり、私生活や仕事などの日常を快適に過ごすためにとても重要なことです。
ここでは、睡眠に関してのサポートが期待できる成分・原材料としてアシュワガンダとメラトニン、栄養面からのアプローチで疲労回復に貢献する成分としてロディオラ・ロゼアやコエンザイムQ10、ビタミンB群、鉄について解説していきます。
アシュワガンダ
アシュワガンダは、インド古来の医療であるアーユルヴェーダの中でも特に重要とされる、ナス科の常緑低木です。(参考)
アシュワガンダは、身体的および精神的ストレスに対する身体の回復力を高める効果があるとされています。(参考)
ある研究では、アシュワガンダを投与された人々が、プラセボを投与された人々と比較して、ストレスや不安などのいくつかの項目においてポジティブな効果を得たことが確認されています。また、ストレスに反応して増加するコルチゾールのレベルが28%低下したという結果も発表されています。(参考)
この結果は、5件の研究を対象とした系統的レビューにおいても裏付けられています。ここで対象となっている全ての研究で、アシュワガンダの抽出物を摂取した人は、ストレスや不安、疲労を測定する試験においてより良い結果を残しています。(参考)
また、精神的な疲労やストレスの改善に加えて、アシュワガンダは運動に伴って発生する疲労を緩和する可能性があることも示唆されています。ある研究では、アシュワガンダを服用した人は、プラセボを投与した人よりもさらに7%長く自転車を走らせることができたと報告されています。(参考)
さらに、アシュワガンダはサプリメントとして摂取した場合にも安全であり、副作用のリスクが低いことが示唆されています(参考1、参考2)
しかし、アシュワガンダは国内では医薬品に用いられる成分として扱われており、サプリメントとして購入することはできません。アシュワガンダのサプリメントを入手したい場合、iHerbなどの海外サプリメントを取り扱うECから個人輸入する必要があります。
💡 POINT!
アシュワガンダには精神的および肉体的な疲労を軽減する効果があるとされています。
アシュワガンダについてより詳しく知りたい方は「アシュワガンダとは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説」という記事でも取り扱っているため、ぜひご覧ください。
メラトニン
メラトニンは、睡眠に関わるとされている内因性ホルモンです。
メラトニンを補給することで、睡眠障害の解消に繋がる可能性も示唆されています。(参考)
慢性的な不眠症は、回復を妨げてエネルギーを低下させます。 そのようなケースにおいて、メラトニンのサプリメントが疲労の軽減、エネルギーの改善などに役立つ可能性が示されています。(参考1、参考2、参考3)
また、メラトニンの減少は、加齢やアルツハイマー病、2型糖尿病、癌、高血圧などの発症にも関連しています。(参考1、参考2、参考3、参考4)
ただし、メラトニンのサプリメントの服用が、これらの状態の人々の症状を軽減できるかどうかは明確になっていません。(参考)
また、メラトニンのサプリメントは安全であるとされていますが、こちらもアシュワガンダ同様に日本国内では専ら医薬品として使用される成分に指定されているため、サプリメントとして入手することができません。摂取を希望する場合には、こちらもiHerbなどを利用する必要があります。
💡 POINT!
メラトニンは、睡眠において重要な役割を果たすホルモンです。メラトニンの摂取は、不眠症を緩和に対して効果的な方法である可能性があり、疲労の軽減への効果も期待できます。
メラトニンについても「メラトニンの効能、使用方法、副作用と用量について」という記事でより詳しく解説しています。
ロディオラ・ロゼア
ロディオラ・ロゼアは、ヨーロッパのアルプス山脈や北アメリカ東部、さらに日本の高山にも分布する多年生の植物です。日本では、イワベンケイなどの名前でも知られています。
アダプトゲン(ストレスに対処する能力を高めるハーブ)として広く使用されています。
ある研究では、500人以上の身体的および精神的疲労に対するロディオラの効果を調べた11件の研究の結果を組み合わせた分析を行っており、そのうち8件の研究においてロディオラの効果が認められています。(参考)
また、これらの研究ではロディオラのサプリメントに関連する大きな安全性のリスクも見つかっていません。
別の研究においても、ロディオラは副作用のリスクが低く、肉体的および精神的疲労を軽減するのに役立つ可能性があると結論付けています。(参考)
さらに、ロディオらはうつ病にも効果があると示唆されています。(参考)
ただし、抗うつ剤のセルトラリンと比較した研究では、ロディオラにも抗うつ作用は認められるものの、抗うつ剤ほど効果的ではないと結論付けられています。(参考)
💡 POINT!
ロディオラは、肉体的および精神的疲労を緩和することで、ストレスへの抵抗力を高める効果が期待できます。また、うつ病の人の疲労を緩和するのに役立つ効果も示唆されています。
ロディオラについても、より詳しく知りたい方向けに「イワベンケイ(ロディオラ)の科学データに基づいた7つの健康への効能」という記事を公開しているので、興味があればぜひご覧ください。
コエンザイムQ10
コエンザイムQ10は、もともと人間の体内に存在する成分で、エネルギーの産生に欠かせない成分です。
コエンザイムQ10は全身に存在していますが、特に心臓、腎臓、肝臓などに多く存在しています。細胞はコエンザイムQ10を使用してエネルギーを生成し、酸化による損傷から身を守ります(参考1、参考2)。
コエンザイムQ10のレベルが低下すると、体の細胞が成長して健康を維持するために必要なエネルギーを生成できなくなり、疲労につながる可能性があります。(参考)
また、原因不明の疲労や倦怠感等の症状が長期に続く慢性疲労症候群患者に対する症状の改善効果も確認されています。(参考)
魚や肉、ナッツなどの食材にもコエンザイムQ10は含まれていますが、体内のレベルを大幅に高めるのに十分な量ではありません。(参考)
したがって、コエンザイムQ10を含有するサプリメントは、コエンザイムQ10が不足している人の疲労を軽減するために役立つ可能性があります。
コエンザイムQ10は年齢とともに減少します。心不全や特定の癌、2型糖尿病などに罹患している方は特に不足傾向にあるともされています。(参考1、参考2、参考3、参考4)
ただし一方で、コエンザイムQ10が必要量に達している人のエネルギーを増加させる可能性は低いとされています。(参考)
また、安全性に関しては、ヒトと動物の両方の研究においてその安全性が認められています。(参考)
💡 POINT!
コエンザイムQ10は、体の細胞がエネルギーを生成するのに必要な栄養素です。加齢や特定の疾患を抱えている場合にはコエンザイムQ10が不足している可能性があり、これが疲労の原因となっているケースがあります。
より詳しく知りたい方は「コエンザイムQ10とは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説」をご覧ください。
ビタミンB12
他のビタミンBと同様に、ビタミンB12には、摂取した食物を細胞が使用できるエネルギーに変換するのを助ける働きがあります。
また、神経と血液細胞を健康に保ち、貧血による疲れを防ぐのに役立つとされています。(参考)
ビタミンB12は、肉や魚、乳製品など、さまざまな動物性タンパク質に含まれています。そのため、食品からも十分に摂取することが可能ですが、以下のようなケースには不足している可能性もあるとされています。
一方で、B12(またはビタミンB群のいずれか)が十分足りている場合には、エネルギーを高める効果は認められていません。(参考)
💡 POINT!
ビタミンB12はエネルギー生産において重要な役割を果たします。加齢や食事からの摂取不足、消化器系に関わる疾患などが原因でビタミンB12が不足すると、エネルギー不足に陥る可能性があります。
ビタミンB12を含めたビタミンB群の詳しい解説として「ビタミンB群とは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説」という記事も公開しています。興味があればご覧ください。
鉄
鉄は体がヘモグロビンを生成するのに必要とされます。ヘモグロビンは、肺から全身の臓器や組織に酸素を運ぶ赤血球中に存在するタンパク質です。
十分なレベルの鉄がないと、赤血球は体の組織に酸素を効果的に運ぶことができません。そのため、鉄が欠乏すると貧血が生じ、疲労感や衰弱感を引き起こすことがあります。(参考)
鉄が欠乏する原因としては、以下のような要因が考えられます。
- 鉄分の少ない食事:鉄は主に、肉や魚から摂取することができるため、このような食事の摂取量が少ないと欠乏する可能性があります。
- 出血:体内の鉄は半分以上が血液中にあります。したがって、失血が原因となって急激に鉄が不足する可能性があります。
- 妊娠:妊娠中の女性は、胎児の正常な成長を支えるために約2倍の鉄を必要とするとも言われています。現状では、妊婦の約半数が鉄欠乏性貧血の傾向にあるとされています。(参考)
上記のようなケースの場合、サプリメントによる鉄の摂取が有効である可能性があります。ただし、鉄の過剰摂取には健康上のリスクがあるため、服薬中の場合は担当の医師に相談するなどの注意が必要です。(参考)。
💡 POINT!
赤血球は、酸素を全身に運ぶために鉄を必要とします。鉄が不足すると酸素の供給が十分に行われず、疲労を引き起こす可能性があります。
鉄分についても「鉄サプリメントの効果とは?症状によって必要な鉄分を解説」という記事を公開しているため、こちらも併せてご覧ください。
最後に
バランスの取れた食事や十分な睡眠の確保など、運動パフォーマンスを維持するためにできることはたくさんあります。
ただ、常にこれらを維持するのは難しいこともあると思いますので、そのような場合には、ぜひサプリメントも有効活用してみてください。
他にもサプリメントを比較してみたい方は、以下のランキングで紹介していますので、併せてご覧ください。
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