はじめに
コエンザイムQ10はCoQ10とも呼ばれますが、人の細胞の中でのエネルギー産生を助ける化合物です。
人の体では、コエンザイムQ10が普段から産生されていますが、加齢と共にその産生は減っていくと言われています。しかし、幸いにも、コエンザイムQ10は食事やサプリメントなどから補充が可能です。
心疾患や脳疾患、糖尿病や癌などの病気がある方では、コエンザイムQ10の体内での量が少なくなりやすいと言われています。(参考)
体内のコエンザイムQ10が低いことがこれらの疾患の原因となっているのか、疾患の結果としてコエンザイムQ10が低値になっているのか、という因果関係についてははっきりわかっていません。
一方で、科学データに裏付けされたコエンザイムQ10の、健康に対する効能も複数あります。この記事では、コエンザイムQ10について解説をしていきます。
コエンザイムQ10とは?
コエンザイムQ10は、体内で産生され人の細胞内のミトコンドリアに貯蓄される化合物です。(参考)
ミトコンドリアはエネルギー産生を司っています。また、ミトコンドリアには、酸化ダメージの軽減や、有害な細菌やウイルスによる疾患などを防ぐ効果があります。(参考)
コエンザイムQ10の産生は加齢と共に減少します。特に高齢者においてはコエンザイムQ10が欠乏することが往々にしてあります。
コエンザイムQ10の欠乏症の原因は以下のようなものがあります。(参考, 参考2)
- ビタミンB6欠乏症などの栄養不足
- コエンザイムQ10の産生/利用に関わる遺伝子の変異
- 疾患による組織でのコエンザイムQ10の必要量増加
- ミトコンドリア病
- 加齢に伴う酸化ストレス
- スタチン薬の副作用
研究では、コエンザイムQ10が人の体において複数の重要な役割を果たしていると報告されています。
コエンザイムQ10の重要な機能の一つは,細胞内でのエネルギーの産生を助ける機能です。コエンザイムQ10はアデノシン3リン酸(ATP)と呼ばれる、細胞内でエネルギー運搬の役割を持つ分子の産生に関わっています。(参考)
コエンザイムQ10は他にも、抗酸化物質として細胞を酸化ダメージから守る役割があります。(参考, 参考2)
過剰な遊離ラジカルが酸化ダメージにつながり、細胞の正常機能を阻害します。そしてこの酸化ダメージは、多くの疾患の原因となることが知られています。(参考)
アデノシン3リン酸(ATP)が人の体の機能を保つために使われ、酸化ダメージが細胞を破壊することを考慮すると、これらに関わるコエンザイムQ10の欠乏が、何らかの疾病の原因になると考えても不思議ではありません。(参考)
コエンザイムQ10は、人の体の全ての細胞に含まれています。そして特に、心臓、腎臓、肺、肝臓などのエネルギー必要量が高い臓器に集中しています。(参考)
以下では、コエンザイムQ10の健康への効能を説明していきます。
コエンザイムQ10に期待される効果
心不全の改善につながる可能性
心不全はしばしば、冠動脈疾患や高血圧などの他の心疾患が原因となって起きます。(参考)
これらの疾患は、静脈や動脈に対する酸化ダメージや炎症につながります。(参考1, 参考2)
心不全は、これらの異常が心臓に作用することで、心臓が正常に収縮/弛緩して血液を体に送り出せなくなることでおきます。(参考)
さらに、いくつかの心不全への治療薬は好ましくない副作用を持っており、血圧低下作用や、中にはコエンザイムQ10の低下につながる薬剤もあります。(参考)
心不全の420名を2年間にわたりコエンザイムQ10で治療した研究では、コエンザイムQ10の投与で症状が改善し、心疾患での死亡率が減少したと報告されています。(参考)
また、別な研究では、1年間にわたり641名をコエンザイムQ10投与群とプラセボ投与群にわけ介入を行いました。
介入後、コエンザイムQ10を投与されていた群において、心不全による入院の頻度が減り、心不全による重大な合併症の頻度も減少したとされています。(参考)
コエンザイムQ10による治療は、エネルギー産生、酸化ダメージの軽減、心臓機能の改善など、いずれも心不全の治療に有効な複数の機能を備えていると考えられています。(参考)
💡 POINT
コエンザイムQ10は、心機能の改善、アデノシン3リン酸(ATP)産生の増加、酸化ダメージの軽減などを通じて心不全の治療に補助的に作用するようです。
不妊への有効性
女性では、年齢が上がると徐々に卵巣内の卵子が減少するので、妊孕性(妊娠しやすさ)は低下していきます。
コエンザイムQ10は直接このプロセスに関わると考えられています。
加齢と共に、コエンザイムQ10の産生量は減少し、酸化ダメージから卵子を守る機能が低下していきます。(参考)
コエンザイムQ10を補充することで、この加齢に伴う卵子の質と量の低下を食い止める作用があると考えられています。
同じように、男性の精子も酸化ダメージに影響を受けやすく、精子の数の減少、質の低下、男性不妊などにつながる可能性が指摘されています。(参考, 参考2)
いくつかの研究ではコエンザイムQ10の投与が、抗酸化作用を通じて、精子の質や活動性、濃度などを改善させると報告しています。(参考, 参考2)
💡 POINT
コエンザイムQ10の抗酸化作用が男性の精子の質を改善し、女性の卵子数の減少を食い止め、卵子の質改善につながる可能性が示唆されています。
皮膚を若く健康に保つ可能性
皮膚は人の体で最も大きな臓器の1つであり、多くの加齢性変化につながるような傷害性の物質に暴露されます。
これらの皮膚を傷害する物質は内因性、外因性のいずれも存在しています。(参考)
内因性の傷害を起こす因子としては、細胞レベルの傷害やホルモンの不均衡などが挙げられます。外因性の傷害につながる因子は、紫外線などを含む環境から皮膚が暴露される物質が挙げられます。
有害な因子が皮膚に作用すると、皮膚の湿潤度が低下し、外的な刺激から皮膚を守ることが難しくなる他、皮膚自体も薄くなっていくことがわかっています。(参考, 参考2)
コエンザイムQ10を皮膚に直接塗ることは、皮膚細胞内でのエネルギー産生を促し、抗酸化作用による皮膚細胞の保護作用を発揮して、内的要因と外的要因による皮膚への障害を減少すると考えられています。(参考)
実際、コエンザイムQ10の皮膚への直接塗布は、紫外線などによる皮膚への酸化ダメージを低下させ、皮膚のシワの深さなども減少させたと言われています。(参考)
また、体内のコエンザイムQ10の量が少ないと、皮膚癌が起きやすくなるとも考えられています。(参考)
💡 POINT
コエンザイムQ10は皮膚に直接塗布されると、太陽からの障害を減らし抗酸化作用による保護作用を発揮します。コエンザイムQ10の補充は、皮膚癌のリスクを減らすと考えられています。
皮膚の健康に関しては以下の記事でも詳しく解説をしていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
頭痛の改善効果
ミトコンドリアの機能異常は細胞のカルシウム吸収の増加、遊離ラジカルの産生、抗酸化作用による細胞保護機能の低下などを来たします。これは、脳細胞エネルギーを低下させ、偏頭痛などの原因となり得ます。(参考)
主にコエンザイムQ10は細胞のミトコンドリア内に存在しており、ミトコンドリアの機能改善、偏頭痛の際に起きる炎症の軽減などの効果があると考えられています。(参考)
実際、42名の被験者にコエンザイムQ10を投与したところ、プラセボを投与した場合と比べて、3倍程も偏頭痛の回数が減少したとされています。(参考)
加えて、コエンザイムQ10の欠乏は偏頭痛を持つ人でより多く見られています。
ある研究では、1,550人のコエンザイムQ10不足の人に対して、コエンザイムQ10を投与したところ、頭痛の頻度減少と重症度軽減が認められたとされています。(参考)
さらに、コエンザイムQ10は偏頭痛の治療的な効果だけではなく、予防的な効果もあると考えられています。(参考)
💡 POINT
コエンザイムQ10の補充は、ミトコンドリア機能を改善し、炎症を軽減することで、偏頭痛の治療と予防に役立つと考えられています。
頭痛に関しては以下の記事でも詳しく解説をしていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
運動パフォーマンスを改善する可能性
酸化ストレスは筋肉機能に関与しており、運動のパフォーマンスにも影響を与えます。(参考)
同じように、ミトコンドリアの機能異常は筋肉のエネルギーを減少させ、筋肉の効率的な収縮と継続的な運動を困難にします。(参考, 参考2)
コエンザイムQ10は、細胞内の酸化ストレス減少と、ミトコンドリアの機能改善によって、運動パフォーマンスを改善します。(参考)
実際、ある研究ではコエンザイムQ10の身体運動に対する効能を調査しています。
1日1,200mgのコエンザイムQ10を60日間にわたり摂取した人において、酸化ストレスの減少が認められました。( 参考)
さらに、コエンザイムQ10のサプリメントは運動時の力を向上や、倦怠感の軽減などを通じて、運動パフォーマンスの改善につながります。(参考, 参考2, 参考3)
💡 POINT
運動パフォーマンスは酸化ストレスやミトコンドリアの機能異常に影響を受けます。コエンザイムQ10は、酸化ダメージを軽減し、運動能力を向上させ、運度に伴う疲労を軽減します。
運動パフォーマンスについては以下の記事でも詳しく解説をしていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
糖尿病に対する効能
酸化ストレスは、細胞への障害を起こし得ます。(参考)
このようなストレスが、糖尿病のような代謝異常に伴う疾患の原因となります。
ミトコンドリアの機能異常は、インスリン抵抗性に関連していると考えられています。(参考, 参考2)
コエンザイムQ10は、インスリン感受性を改善して血糖のコントロールを改善する効果があると報告されています。(参考)
糖尿病のある方では一般的にコエンザイムQ10の血中濃度は低くなりやすいですが、サプリメントの摂取は、血中のコエンザイムQ10の量を3倍程度まで増加させるとされています。(参考, 参考2)
ある研究では、2型糖尿病のある方に12週間のコエンザイムQ10投与が行われました。
コエンザイムQ10の投与が、空腹時血糖の低下、過去2-3ヶ月の平均血糖を示すヘモグロビンA1c(HbA1c)の低下につながったと報告されています。( 参考)
そして、コエンザイムQ10は、脂肪の分解を促進して、肥満や2型糖尿病につながる脂肪細胞の蓄積を抑制すると考えられています。(参考)
💡 POINT
コエンザイムQ10のサプリメントは、インスリンの感受性を上げることで、血糖レベルを改善させます。
癌に予防的に働く可能性
酸化ストレスは、細胞にダメージを与えて、その機能を障害します。(参考)
体で酸化ダメージが効果的に軽減されないと、細胞の構造が破壊され癌発生のリスクが上昇すると考えられます。(参考, 参考2)
コエンザイムQ10は細胞を酸化ストレスから守り、細胞のエネルギー産生を促すことで、細胞の機能維持と生存などに寄与すると考えられています。(参考, 参考2)
癌患者さんにおいてはコエンザイムQ10の体内での量が少なくなりやすいことが知られています。
コエンザイムQ10の体内での量が低いことは、癌のリスクを53.5%ほど上昇させ、複数のタイプの癌での予後不良を示唆する要因となります。(参考, 参考2, 参考3)
さらに、ある研究ではコエンザイムQ10のサプリメントが癌の再発リスクを減らしたと報告しています。(参考)
💡 POINT
コエンザイムQ10は細胞のDNA保護や細胞の生存において重要役割を果たしており、このことが癌の予防や再発抑制につながると考えられていますが、この因果関係を証明するためにはさらなる研究が必要です。
脳に対する効能
ミトコンドリアは脳細胞においてもエネルギー産生を司ります。ミトコンドリアの機能は、加齢と共に低下する傾向があります。
脳全体のミトコンドリア機能の異常が、脳細胞の細胞死や、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病のような病気の原因になると思われています。( 参考)
残念なことに、脳は脂肪酸を多く含み、酸素必要量も多いため、酸化ダメージを受けやすい臓器です。この酸化ダメージは、記憶、認知機能、運動能力などに影響を与える有害な化合物の産生につながります。(参考, 参考2)
コエンザイムQ10は、これらの有害な化合物を減らし、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの進行を抑制する可能性が示されています。(参考, 参考2)
💡 POINT
コエンザイムQ10は脳細胞を酸化ダメージから保護し、脳疾患につながる有害な化合物の影響を軽減すると考えられています。
脳機能に関しては以下の記事でも詳しく解説をしていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
肺の保護作用
人の全ての臓器の中でも、肺が一番酸素に暴露される臓器です。このため、肺が一番酸化ダメージを受けやすくなります。
肺の酸化によるダメージ増加や、抗酸化作用のあるコエンザイムQ10の不足による肺保護の減少などが原因で、喘息、慢性閉塞性肺疾患などの肺疾患が起こりやすくなります。(参考)
さらに、これらの疾患がある人においては、コエンザイムQ10が低値になりやすいとも報告されています。(参考, 参考2)
ある研究では、コエンザイムQ10によるサプリメントは、喘息を持つ人の炎症を軽減し、ステロイドなどの薬剤治療を要する回数を軽減させたとしています。(参考)
また別な研究では、コエンザイムQ10が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を持つ患者さんにおいて運動パフォーマンスを改善したとされています。
これは、コエンザイムQ10の補充後、組織の酸素化改善と、心拍の改善によって確認されました。(参考)
💡 POINT
コエンザイムQ10は、肺疾患につながる酸化ダメージや炎症を軽減する可能性があります。
コエンザイムQ10の用量と副作用
コエンザイムQ10は、ユビキノールとユビキノンの2つのタイプがあります。
ユビキノールは、血中や体内に吸収されるコエンザイムQ10の約90%を占めます。このため、サプリメントを選ぶ際にはこのユビキノールタイプのコエンザイムQ10を選ぶことが推奨されます。( 参考, 参考2)
推奨されるコエンザイムQ10の用量は1日あたり90-200mg程度です。用量は、問題がなければ1日500mg程度まで増やすことがあり、いくつかの研究ではさらに高用量での使用でも特に副作用はなかったと報告しています。( 参考, 参考2, 参考3)
コエンザイムQ10が脂溶性の化合物であるため、その吸収速度は遅く、量も限られています。しかし、コエンザイムQ10サプリメントを食事と摂取すると、食事なしで摂取するよりも吸収速度が3倍ほどに増えることが知られています。(参考, 参考2)
加えて、いくつかの製品では、可溶性のコエンザイムQ10やコエンザイムQ10とオイルの合剤など、吸収がしやすく工夫がされています。(参考, 参考2, 参考3)
人の体内ではコエンザイムQ10は貯蓄されません。このため、その効果を確認するためには、コエンザイムQ10のサプリメントなどは継続使用が推奨されています。( 参考, 参考2)
コエンザイムQ10のサプリメントは、人において副作用もなく、毒性も低いことが示されています。(参考)
実際、いくつかの研究では、毎日1,200mgのコエンザイムQ10を16ヶ月摂取した場合にも、特に副作用などは認められなかったとしています。(参考)
しかし、もしも副作用が認められる場合には、1日摂取量を2-3回に分けて摂取することが推奨されています。
💡 POINT
コエンザイムQ10は脂溶性なので、吸収を促進するために食事と一緒に摂取するか、オイルなどと混合された製剤を使用すると吸収が改善するでしょう。コエンザイムQ10のサプリメントの使用は、特に副作用の報告もなく、毒性なども認められていません。
コエンザイムQ10を含む食材
コエンザイムQ10はサプリメントなどから容易に摂取も可能ですが、食材からの摂取も可能です。
コエンザイムQ10はカプセルなどで摂取される場合も、食事から摂取される場合も同じように摂取されます。(参考)
以下に、コエンザイムQ10を多く含む食材としては以下のようなものが挙げられます。
臓器由来の肉 | 心臓、肝臓、腎臓など |
---|---|
筋肉由来の肉 | 豚、牛、鶏肉など |
脂肪の多い魚 | マス、ニシン、サバ、イワシなど |
豆類 | 大豆、レンズ豆、ピーナッツなど |
ナッツ・種子類 | ゴマ、ピスタチオなど |
オイル | 大豆油、カノーラオイル |
💡 POINT
コエンザイムQ10は、いくつもの食材に存在しており、特に臓器由来の肉に多く含まれます。 また、食材に含まれるコエンザイムQ10も、サプリメントに含まれるコエンザイムQ10も同じように吸収されます。
まとめ
コエンザイムQ10は脂溶性で、ビタミンのような化合物で、多くの健康面での効能が期待されています。
コエンザイムは、細胞内のエネルギー産生に関わる他、抗酸化物質としても機能します。これらの効能が、細胞の維持と特定の慢性疾患の予防と治療に役立つと考えられています。
コエンザイムQ10は、心臓の健康改善と血糖コントロールの改善、癌に対する予防と治療の効果、偏頭痛の頻度減少など、複数の効能が期待されています。
また、筋疲労、皮膚の傷害、脳や肺の疾患につながる酸化ダメージの軽減にもつながるとも考えられています。コエンザイムQ10はサプリメントに含まれており、摂取による大きな副作用はありません。
コエンザイムQ10の産生は年齢が上がるにつれて低下するので、どの年齢層の成人でもコエンザイムQ10の補充によって利益を得ることができる可能性があるとされています。
alloehではコエンザイムQ10を含む製品のランキングも作成していますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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