はじめに
牡蠣は湾や海に住む海水性の二枚貝です。
牡蠣は海水の汚染物質を濾過したり、フジツボやムール貝などの他の種類の生物に住処を提供するなど、環境システムにおいて重要な役割を担っています。牡蠣には多くの種類があり、その塩辛い、風味のある身は海の珍味と言われています。
媚薬としての効能があるのではないかと噂されることで有名ですが、この軟体動物はそれ以外にも健康への効能も多く持っています。この記事では、牡蠣を食べることの健康への効能、その危険性、どの様に調理すると良いかなどをまとめます。
牡蠣の栄養素
牡蠣は硬く不均等な形をした殻を持ち、それが灰色の色をした、ふくよかな内部の身を守っています。
牡蠣の身は貝肉とも呼ばれ、栄養素が豊富です。実際、3.5オンス(100g)の野生のアメリカ牡蠣は以下の様な栄養素を含んでいます。(参考)
- カロリー:68
- タンパク質:7g
- 脂質:3g
- ビタミンD: 参考1日摂取量の80%にあたる量
- サイアミン(ビタミンB1):参考1日摂取量の7%にあたる量
- ナイアシン(ビタミンB3):参考1日摂取量の7%にあたる量
- ビタミンB12:参考1日摂取量の324%にあたる量
- 鉄分:参考1日摂取量の37%にあたる量
- マグネシウム:参考1日摂取量の12%にあたる量
- リン酸:参考1日摂取量の14%にあたる量
- 亜鉛:参考1日摂取量の605%にあたる量
- 銅:参考1日摂取量の223%にあたる量
- マンガン:参考1日摂取量の18%にあたる量
- セレニウム:参考1日摂取量の91%にあたる量
牡蠣はカロリーも低く、栄養素も豊富で、タンパク、脂質、ビタミン、ミネラルなどを含みます。
例えば、3.5オンス(100g)あたり、参考1日摂取量の100%以上にあたるビタミンB12、亜鉛、銅を含み、1日必要量の75%以上のセレニウムやビタミンDを含みます。
牡蠣は美味しいだけでなく、炎症の制御、心臓や脳の健康を維持するなど、人の体で重要な役割を果たす多価不飽和脂肪酸の一種であるオメガ3脂肪酸も豊富に含んでいます。(参考)
オメガ3脂肪酸を豊富に含む食事を摂取する人では、心疾患や糖尿病などの病気を起こすリスクが軽減します。(参考1, 参考2)
💡 POINT
オイスターは、タンパク質、ビタミン、ミネラル、オメガ3脂肪酸などの不可欠な栄養素が詰まった食材です。特に、ビタミンB12、亜鉛、銅などを多く含んでいます。
牡蠣は重要な栄養素を含んでいる
牡蠣には栄養素が詰まっています。特に以下の栄養素が多く含まれています。
ビタミンB12
ビタミンB12は神経システムの維持、代謝、血球産生に重要です。特に高齢者などの多くの人において、このビタミンは欠乏しやすいです。(参考)
亜鉛
亜鉛は免疫システム、代謝、細胞の成長などにおいて重要な役割を果たします。3.5オンス(100g)の牡蠣には参考1日摂取量の600%以上が含まれます。(参考)
セレニウム
このミネラルは、正常な甲状腺機能と代謝を保つために重要です。また、強力な抗酸化物質としても機能し遊離ラジカルによる細胞の障害を防ぎます。(参考)
ビタミンD
ビタミンDは免疫機能、細胞の成長、骨の健康に不可欠です。特に寒い気候に住む多くの人において、このビタミンDが不足しています。(参考)
鉄
鉄は、人の体ではヘモグロビンやミオグロビンと呼ばれる酸素を全身に運搬するタンパク質を作るために必要とされています。多くの人では、通常の食事だけでは十分な鉄分が摂取できていません。(参考)
人の体におけるこれらの機能以外にも、これらの栄養素の多くは抗酸化作用による保護作用を持ちます。例えば、セレニウムは強力な抗酸化物質であり、体内で過剰な遊離ラジカルが作られた際に起きる体のバランス不調である酸化ストレスから人の体を守ります。
酸化ストレスは、癌、心疾患、認知機能低下など多くの慢性疾患に関連しています。(参考)
さらに、亜鉛やビタミンB12、ビタミンDなども抗酸化作用を持ち、牡蠣自体の持つ保護作用をより高めます。(参考1, 参考2)
抗酸化物質を多く含む食事をする人では、心疾患、糖尿病、特定の癌のリスクと全死亡率が減少したとする研究結果もあります。(参考1, 参考2, 参考3)
💡 POINT
牡蠣は亜鉛、鉄、セレニウム、ビタミンB12、ビタミンDを豊富に含みます。これらの栄養素の一部は抗酸化作用を持ち健康の増進に働きます。
牡蠣は高質なタンパク源
牡蠣は高質のタンパク質の良い供給源であり、3.5オンス(100g)の牡蠣に7gのタンパク質が含まれます。
牡蠣はまた、人体が必要とする全ての必須アミノ酸を含む、完全タンパク質の供給源でもあります。
食事やおやつにタンパク質を追加することで、満腹感が得られ、体重減量を促すことができます。
タンパクが多い食事は、満腹感を促進するホルモン様のペプチドYYとコレシストキニン(CCK)の体内の濃度を上昇させ、空腹感を安定させる効果があります。(参考1, 参考2)
タンパク質が多い食事ほど、体重減量を促進し、低脂質食や高炭水化物食を摂取する場合に比べて体重が減りやすいことが証明されています。(参考1, 参考2, 参考3)
高タンパク食を取ることで、特に糖尿病の患者さんにおいて血糖のコントロールが改善すると考えられています。
例えば、9つの研究をまとめた研究では、2型糖尿病の患者さんにおいて長期の血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1cが、高タンパク食の摂取によって有意に低下すると報告されています。(参考)
さらに、高タンパク食は2型糖尿病患者さんの心疾患のリスク因子を減らすとも考えられています。
2型糖尿病患者さんに対する18の研究をまとめた研究では、高タンパク質食が心疾患のリスク因子の一つである有意にトリグリセリド(中性脂肪)を低下させたと報告されています。(参考)
タンパク質のより具体的な効果については、『タンパク質とは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説』で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
💡 POINT
牡蠣を含む高タンパク質食は体重減量を促進するほか、2型糖尿病患者さんにおける血糖コントロールの改善や、心疾患のリスク因子の減少につながると考えられています。
牡蠣は特殊な抗酸化物質を含んでいる
ビタミンなどの有益な栄養素が多く含まれていること以外にも、牡蠣には近年発見された、3,5ジヒドロキシ4メトキシベンジルアルコール(DHMBA)の様な独特な抗酸化物質も含まれています。
このDHMBAは、強力な抗酸化作用を発揮するフェノール化合物です。
実際に、ある研究では、酸化ストレスによる障害を防ぐ目的でよく使用される合成ビタミンEの一種であるトロロクスよりも、試験管内において15倍以上の強い抗酸化作用を発揮したとされています。(参考)
また、他の試験管内の研究でも、牡蠣由来のDHMBAが肝臓の健康において特に有効である可能性も示唆されています。
例えば、ある研究では試験管内において、DHMBAが人の肝細胞を、誘導された酸化ストレスによる障害と細胞死から守る効果が認められたと発表されています。(参考)
現時点では試験管内の研究に限られているものの、多くの研究者はDHMBAが肝疾患の予防と治療の将来的に有効であるかもしれないと期待を寄せています。(参考)
もう一つの試験管内で行われた実験では、DHMBAがLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の酸化を減少させたと報告されています。 コレステロールの酸化は動脈硬化(人の動脈の中でプラークが蓄積する)に関連した化学反応で、心疾患の主要なリスク因子の一つです。(参考1, 参考2)
これらの結果は期待が持てますが、DHMBAが人体において本当に酸化ストレスを減らす効果があるのかについては今後の研究結果が待たれます。
💡 POINT
DHMBAは牡蠣に含まれる強力な抗酸化物質です。酸化ダメージを軽減し、肝臓や心臓に有益な効果をもたらすかもしれませんが、現時点でのデータはまだ試験管内での実験データに限られています。
牡蠣の摂取について注意すべき点
牡蠣が健康面で非常に有益であることは明らかですが、特に生の牡蠣を摂取する際などには、いくつかの注意すべき点があります。
細菌を含む可能性
生の牡蠣を摂取することは、細菌感染の大きなリスクを伴います。
ビブリオ バルニフィカンスやビブリオ パラへモリティカスなどを含むビブリオバクテリアは、濾過摂食をする貝の中で濃縮されている可能性があります。生の牡蠣を摂取することは、この細菌に暴露する可能性を上げてしまいます。
これらの細菌による感染症は、下痢、嘔吐、発熱、さらには死に至ることもある重症血液感染症である菌血症など、より重篤な症状も来たし得ます。(参考)
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によると、米国ではビブリオバクテリア感染症にかかる80,000人のうち100人もの人々が感染症により死亡するとされています。(参考)
その他の汚染物質
牡蠣はノロウイルスやエンテロウイルスといった健康被害を与えうるウイルスを持っている可能性もあります。(参考)
加えて、これらの軟体動物では鉛、カドミウム、水銀などの重金属をはじめとした化学物質が含まれていることもあります。(参考)
これらの健康への被害の可能性から、子供、免疫抑制状態の人、妊婦や授乳婦などでは生の魚介類を避けることが推奨されています。(参考1, 参考2, 参考3)
生の牡蠣を摂取する際にはこれらのリスクを考慮することが大切です。 現時点では、州や国家の当局が厳しく取り締まっているものの、生の牡蠣の摂取が安全か否かを判別する手段はありません。
このため、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)などの様な主要な健康管理団体では、牡蠣の調理後の摂取を推奨しています。(参考)
その他の危険性
牡蠣は特に亜鉛を多く含んでいます。 このミネラルは健康に重要である一方で、過剰な摂取は健康に害を及ぼします。
亜鉛中毒はサプリメントの摂取で最もよく起こりますが、過剰な牡蠣の摂取でも、銅、鉄など亜鉛と吸収が競合するミネラルの吸収を阻害することで健康への被害につながる可能性があります。
さらに、魚介類にアレルギーがある人においても摂取は避けるべきでしょう。
💡 POINT
生の牡蠣は健康に悪影響を与えうる細菌やウイルスを持っている可能性があります。 健康団体は危険な感染症を避けるために牡蠣の調理後の摂取を推奨しています。
牡蠣の調理方法
健康被害のリスクがあるので、生の牡蠣を食べるときには十分注意しましょう。 牡蠣を買うときは信頼できるお店で買うことを心がけましょう、ただしこれでも安全が保証されているわけではないことは注意が必要です。(参考)
調理によってこれらの有害な細菌が死滅するので、牡蠣は調理して摂取する方が安全です。
以下が、牡蠣を食事に加えるための美味しく簡単に調理する方法です。
- 調理した牡蠣の身をパスタ料理に加える。
- 牡蠣全体をパン粉にまぶして焼く。
- 牡蠣を殻のまま調理して、新鮮なハーブを上に載せる。
- パン粉をまぶした牡蠣の身をココナッツオイルで揚げる。
- 牡蠣を蒸し焼きにして、レモン汁とバターをかける。
- 牡蠣の半分を好みのマヨネーズで覆い、グリルで焼く。
以下に、牡蠣を買うときに安全面で気をつけると良いポイントを挙げます。
- 殻が閉じている牡蠣を買う様にする。殻が開いてしまったら、牡蠣を捨てる。
- 米国食品医薬品局(FDA)によると、調理中に蓋が開かない牡蠣も捨てるべきです。(参考)
- 煮たりするときなどに、調理が行き届かないのを避けるため、たくさんの牡蠣を一度に調理するのは避けましょう。
💡 POINT
感染を避けるためには、調理した牡蠣を摂取する様にしましょう。 殻がしまっている牡蠣を買う様にして、調理中に殻が開かないものは捨てましょう。
まとめ
牡蠣はとても栄養価の高い貝類で、多くの健康への効能を持っています。
多くの質の高いタンパク質、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質を含んでおり、これらが人の健康に有益です。
しかし、生の牡蠣は有害となる細菌を含んでいる可能性があり、感染を避けるためには調理した牡蠣を摂取しましょう。もしもシーフードが好きであれば、美味しくて栄養価も高い牡蠣を食事に加えてみましょう。
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