亜鉛の概要
亜鉛は免疫機能の向上や傷の回復など、体の中でいくつもの重要な役割を果たす栄養素です。人の体は亜鉛を生成できないので、食事の摂取などを通じて外部から摂取しなくてはなりません。
この記事では、亜鉛の効果、推奨される摂取量、可能性のある副作用など、知っておくべき知識を紹介します。
亜鉛とは何か?
亜鉛とは、人間の体で作ったり備蓄したりできない必須の栄養素と考えられています。そのため、我々は食事から恒常的に亜鉛を摂取する必要があります。亜鉛は体の中で、以下の複数のプロセスに関わっています。(参考)
- 遺伝子発現
- 酵素反応
- 免疫反応
- タンパク質生成
- DNA生成
- 創傷治癒
- 体の成長 など
亜鉛は自然界の中では、植物性、動物性を問わず多くの食物の中に広く含まれています。逆に亜鉛を含まない食事の代表的な例としては、朝食のシリアル・お菓子などがあり、こういった製品では健康のために意図的に亜鉛が配合されたりします。(参考1、参考2)
また亜鉛は亜鉛サプリメントを摂取したり、亜鉛を含むマルチビタミンなどの摂取でも摂取できます。
Point: 亜鉛は人間の体が作れない必須ミネラルの一つです。 亜鉛は成長や、DNAの生成、免疫機能を手助けするなど多くの機能があります。
亜鉛のメリット
亜鉛は、体内で数えきれないほどの多くの方法で使われる必須のミネラルです。 実際、亜鉛は体内で鉄に次いで2番目に最も多い微量元素で、全ての細胞の中に存在しています。(参考1、参考2)
亜鉛は、300以上の酵素の働きに必要で代謝、消化、神経機能、その他の多くの機能を助けます。(参考)
加えて、亜鉛は、発達と免疫細胞の機能に不可欠です。(参考)
この元素は皮膚の健康、DNAの産生、タンパク質の産生に必要です。(参考1, 参考2)
さらに、亜鉛の細胞の成長と分裂に関する働きによって、人の体の成長と発達が正常に行われます。(参考)
亜鉛は、正常な味覚や嗅覚のためにも不可欠です。 亜鉛が、この味覚や嗅覚に重要な役割を果たしているので、亜鉛欠乏がある場合これらの味覚や嗅覚が障害されることが知られています。(参考)
免疫機能を促進させる
亜鉛は免疫システムを強化する助けとなります。亜鉛は、免疫細胞の機能と細胞間の連絡に必要なので、亜鉛の欠乏は免疫反応の低下につながります。
亜鉛のサプリは特定の免疫細胞を刺激し、酸化ストレスを減らします。 例えば、7つの研究をまとめた報告では80-92mg/日の亜鉛摂取は感冒の期間を33%ほど短くしたとされています。(参考)
さらに、亜鉛サプリは高齢者において有意に感染のリスクを減らし、免疫反応を促進すると考えられています。(参考)
また免疫系サプリメントには亜鉛に加えて、ビタミンCやセレン、乳酸菌、エキナセアなどもよく登場します。例えば上場企業のAFC-HDアムスライフサイエンスが販売するパパ向け健康サプリ「はぐマカ」は亜鉛・ビタミンC・セレンの3つを配合しています。
創傷治癒を促進する
亜鉛は病院などでも頻繁に、火傷や、潰瘍、その他の皮膚の創傷に使用されます。(参考)
この元素が、コラーゲンの生成、免疫機能、炎症反応などに重要な役割を果たすためで、正常な皮膚の治癒には不可欠となっています。(参考)
実際、人の皮膚は比較的多くの(おおよそ5%)亜鉛を人体の中でも含んでいます。(参考)
亜鉛欠乏が創傷の治癒を遅らせる一方で、亜鉛の追加によって人々の創傷治癒が早まることが知られています。例えば、60人の糖尿病性足潰瘍の患者を12週間フォローした研究では、毎日200mgの亜鉛で治療が行われた群において、プラセボ群と比較して有意な潰瘍サイズの低下が認められました。(参考)
加齢に関連した疾患のリスクを減らす可能性
亜鉛は、肺炎・感染症・加齢性の筋萎縮などの加齢に関連した疾患を著明に減らすことができるかもしれません。
亜鉛は酸化ストレスを和らげ、T細胞とNatural Killer細胞の活性化により免疫機能を高め体を感染症から守ってくれると考えられます。(参考)
亜鉛を摂取している高齢者では、インフルエンザ ワクチンへの反応が向上したり、肺炎のリスク減少、認知機能の活性化などが認められています。(参考1, 参考2, 参考3)
実際に、ある研究では45mg/日の亜鉛摂取が、高齢者における感染症を66%近く減少させたとする報告もなされています。(参考)
加えて、4,200人以上を対象にした大規模な研究でも、ビタミンE・ビタミンC・ベータカロテンと80mgの亜鉛が含まれた抗酸化サプリメントを摂取した人々において、視力低下や加齢性筋萎縮を減らす効果があったとされています。(参考1, 参考2)
ニキビの治療にも役立つかもしれない
ニキビは世界の人口の9.4%もの人に影響を与えているとされる、とても頻度の高い皮膚疾患です。(参考)
ニキビは、皮膚の脂腺の閉塞、細菌、炎症反応などによって引き起こされます。(参考)
研究では、亜鉛の局所への塗布、経口摂取の両方が、効果的に皮膚の炎症を減らし、緑膿菌の発育と脂腺の活動を抑えることにつながったと報告されています。 ニキビを持つ人においては亜鉛は低値となっている傾向があります。(参考1, 参考2)
このため、亜鉛のサプリは症状を改善するために役立つかもしれません。(参考)
ニキビ対策のサプリについては『ニキビ対策サプリはなぜ効くの?有効成分を徹底解説!』でも解説をしているので、ぜひチェックしてみてください。
炎症反応を低下させる
亜鉛は酸化ストレスを減らし、体内の特定の炎症タンパクを減少させます。(参考)
酸化ストレスは慢性の炎症につながり、心疾患・癌・認知機能低下など多くの慢性疾患に寄与すると考えられています。(参考1, 参考2)
40人の高齢者を対象にした研究では、45mg/日の亜鉛を摂取した人においてプラセボ群と比較し、有意に炎症を示すマーカーが減少したと報告されています。(参考)
亜鉛欠乏症の症状
重症な亜鉛欠乏症は稀ではありますが、稀な遺伝子疾患患者さんや、十分な亜鉛摂取ができていない母親からの母乳栄養を受けている乳児、アルコール依存症の患者さん、また特定の免疫抑制薬などを内服している患者さんにおいては起きる可能性があります。
重症の亜鉛欠乏の症状は、成長・発達の障害、性発達の遅れ、皮疹、慢性下痢、創傷治癒の遅れ、異常行動などが挙げられます。(参考)
軽度の亜鉛欠乏は、十分な栄養摂取ができない発展途上国の子供に特に多いとされています。 世界では、不十分な食事摂取によっておおよそ20億人ほどの人が亜鉛欠乏を来たしていると考えられています。(参考)
亜鉛欠乏は免疫機能を低下させ、感染症を増加させることで、毎年世界中で450,000人を超える5歳以下の子供の命を奪っていると考えられています。(参考)
亜鉛欠乏の危険性が高い人は、以下のような方たちです。(参考)
- ベジタリアン、ビーガンの方(参考)
- 妊娠中もしくは授乳中の女性
- 月齢が進んでも母乳栄養を過度に継続している乳児
- 鎌状赤血球症の患者さん
- 栄養失調の患者さん(参考)
- 神経性食指不振症
- 神経性大食症の患者さん
- 慢性腎臓病の患者さん
- アルコール中毒の方
軽度の亜鉛欠乏の症状としては、下痢・免疫機能低下・薄毛・食欲低下・気分障害・皮膚乾燥・不妊・創傷治癒障害などの症状が考えられます。(参考)
亜鉛欠乏は検査などでは発見しにくい病態です。 このため、テストの結果では亜鉛の値が正常でも、亜鉛欠乏は否定できません。 医師は、そのほかの危険因子、例えば経口摂取不良や遺伝性などを血液検査と一緒に考慮して亜鉛の補充の必要性の有無を判断しています。(参考)
Point: 亜鉛欠乏の危険因子は、不十分な経口摂取、吸収不良、アルコール依存症、遺伝性疾患、加齢などがあげられる。
食事からの摂取
多くの動物性・植物性の食事は元々多くの亜鉛を含んでおり、通常の食事を摂取すれば人々は十分な亜鉛を摂取することが可能です。 亜鉛が特に多く含まれている食事は以下のようなものです。(参考)
- 貝類:オイスター、カニ、ムール貝、ロブスター、あさり
- 肉:牛肉、豚肉、ラム肉、バイソン肉
- 家禽類:七面鳥、鶏肉
- 魚:カレイ、イワシ、鮭、ヒラメ
- 豆果類:ひよこ豆、レンズ豆、黒豆、インゲン豆など
- ナッツやタネ類:カボチャの種、カシューナッツ、麻の種子
- 乳製品:ミルク、ヨーグルト、チーズ
- 卵
- 全粒の穀物:オーツ、キノア、玄米
- 特定の野菜:キノコ、ケール、マメ、アスパラガス、ビート(参考)
特に肉や魚貝などの動物性の食物は、人体が吸収しやすい形で多くの亜鉛を含んでいます。 豆果類や全粒の穀物に含まれる植物由来の亜鉛成分は、植物の成分が吸収を抑えるので動物由来の亜鉛に比べると吸収効率が下がります。(参考)
多くの食物に元々亜鉛が含まれている一方で、亜鉛が元々含まれない朝食用のシリアルやお菓子のバーや小麦粉などの特定の食事には、亜鉛が意図的に添加されています。(参考)
Point: 亜鉛は、魚介類・肉類・家禽類・乳製品などの自然界の多くの食べものに元々含まれているほか、亜鉛を元々含まないようなシリアル、小麦粉などには意図的に添加されています。
亜鉛中毒と摂取量の目安
亜鉛の欠乏症が健康への悪影響を起こすのと同じように、亜鉛の過剰摂取もまた副作用を起こしえます。 亜鉛中毒の最も頻度が高い原因は、過剰な亜鉛サプリメントの摂取で、急性または慢性の症状を引き起こします。 中毒の症状としては、以下のものが挙げられます。(参考1, 参考2)
- 嘔気/嘔吐
- 食欲不振
- 下痢
- 腹痛
- 頭痛(参考)
- 免疫機能の低下
- 善玉コレステロール低下
過剰に亜鉛を摂取すると、他の栄養素の欠乏症の原因にもなります。 例えば、慢性的に過剰な亜鉛の摂取が続くと、銅や鉄の吸収が障害されると考えられています。 体内の銅の低下は、中程度(60mg/日)の亜鉛を毎日10週間ほど摂取した人でも報告されています。(参考)
推奨される摂取量
過剰な摂取を避けるために、高用量の亜鉛のサプリは医師からの指示がない限りは避けましょう。 推奨される日常の摂取量は成人男性で11mg/日、成人女性で8mg/日です。 妊娠中の女性や授乳中の女性では、それぞれ11mg/日と12mg/日ほどの摂取が推奨されています。(参考1, 参考2)
亜鉛の吸収障害を起こすような基礎疾患がなければ、1日の必要量の亜鉛は通常の食事の摂取だけで摂取することができます。
亜鉛の摂取量の上限は40mg/日までです。 しかしながら、亜鉛欠乏症の方にはこの用量は当てはまらず、より高用量の亜鉛サプリが必要になるかもしれません。
亜鉛のサプリを選ぶ場合にはクエン酸亜鉛やグルコン酸亜鉛のような吸収しやすい物を選びましょう。 酸化亜鉛のような吸収が良くないサプリは避けるべきです。(参考)
Point: 亜鉛中毒は下痢、頭痛、腹痛、免疫低下などを引き起こす可能性があります。 多くの人は、日常の普通の食事で十分な量の亜鉛を摂取することができます。
まとめ
亜鉛はDNAの産生、免疫機能、代謝、成長に必要な元素です。(参考)
亜鉛が炎症を減らしたり、加齢に関連した病気のリスクを減らしてくれるかもしれません。 ほとんどの人は、推奨される摂取量である、男性11mg/日、女性8mg/日を通常の食事から摂取しています。しかし、高齢者や亜鉛の吸収障害をきたすような病気を持つ方では、亜鉛の追加での摂取が必要です。(参考)
過度の亜鉛摂取は危険な副作用を起こす可能性があるので、必要時に摂取する亜鉛サプリは推奨された量を守ることが大切です。
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