科学的根拠に基づいたセレンの7つの効果
セレン(セレニウム)について聞いたことがないという方が多いでしょうが、セレンは私たちの健康にとって非常に重要な栄養素です。
セレンは私たちの体に不可欠なミネラルなので、食事から摂取しなければなりません。
必要なのは少量ですが、代謝や甲状腺機能をはじめとして、体内の働きにおいて重要な役割を果たしています。
この記事では科学的根拠に基づき、セレンの健康への7つの効果の概要をご説明します。
1. 強い抗酸化作用
抗酸化物質とは食べ物に含まれる化合物で、フリーラジカルによる細胞へのダメージを防ぐ働きがあります。
フリーラジカルは、代謝などの働きによって副次的に自然とできてしまうもので、私たちの体内でも日々作られています。
フリーラジカルは悪いものとして扱われてしまうことも多いですが、私たちの健康にとって必要なものなのです。
病気から体を守るなどの重要な役目を果たしています。
しかし喫煙、飲酒、ストレスなどによって、フリーラジカルが過剰に作られてしまうことがあります。
すると酸化ストレスにより健康な細胞にダメージを与えてしまいます。(参考)
酸化ストレスは、心臓病、アルツハイマー病、癌、早期の老化、脳卒中のリスクといった慢性的な疾患と関連付けられてきました。(参考1、参考2、参考3、参考4、参考5)
セレン(セレニウム)などの抗酸化物質には、フリーラジカルが増えすぎるのを食い止めることで、酸化ストレスを軽減する効果があります。(参考)
フリーラジカルを抑えて、酸化ストレスによる細胞へのダメージを防ぐのが、抗酸化物質の働きです。
Point:セレンは強い抗酸化作用を持ち、酸化ストレスを防いで、心臓病や癌といった慢性疾患から私たちの体を守ってくれます。
2. 特定の癌のリスク低下
酸化ストレスを減らすことに加えて、セレン(セレニウム)にはいくつかの特定の癌のリスクを下げる可能性があります。
セレンがDNAのダメージと酸化ストレスを減らし、免疫力を高め、癌細胞を破壊することにより、癌のリスクが下がります。(参考)
69件の研究、合計350,000人以上の例を確認したところ、血中のセレンの値が高いことと、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌といった特定の癌のリスクが低いことの関連が見つかりました。(参考)
ただし、この効果は食事を通して摂取したセレンの量のみとの関連であり、サプリメントで補った場合の関連は考されていないことに注意が必要です。
しかし、サプリメント等でセレンを補った場合でも、放射線治療を行っている人々の副作用が軽減されたという研究結果もあります。
例えばある研究では、経口でセレンを補うことで、子宮頸癌と子宮癌を患った女性の生活の質が全体的に上がり、放射線誘発性の下痢が減ったことが分かりました。(参考)
Point:血中のセレンの値が高いと特定の癌を予防したり、セレンを補うことで放射線治療中の患者の生活の質が向上することがあります。
3. 心臓病の予防
セレン(セレニウム)を豊富に含んだ食事をすることで心臓の健康を保つことに繋がります。
というのも、セレンの値が低いことと心臓病のリスクが上がることの関連が分かっています。
25件の観察研究を分析すると、血中のセレンの値が50%上昇すると、心臓病のリスクが24%減少します。(参考)
セレンは、心臓病の大きなリスク要因の一つである炎症マーカーを下げる働きも期待できます。
例えば、433,000人以上の心臓病患者を観察した16件の比較試験によると、セレンのサプリメントを摂取することで炎症マーカーのC反応性蛋白(CRP)の値を下げたことが確認されています。
また、強い抗酸化作用を持つグルタチオンペルオキシダーゼの値も上がることが分かっています。(参考)
つまりセレンは体内の炎症と酸化ストレスを減らすことで心臓病のリスクを下げる効果があると言えます。酸化ストレスと炎症は、アテローム性動脈硬化や動脈にプラークができることとの関連が指摘されています。
アテローム性動脈硬化になると、脳卒中や心臓発作、心臓病といった危険な病気になりやすくなります。(参考)
酸化ストレスや炎症を最小限に抑えておくためにも、セレンが豊富な食べ物を食事に取り入れるのが良いでしょう。
Point:セレンは酸化ストレスを抑えて心臓病のリスクを下げる効果があるので、心臓の健康に良いと言えます。
4. 気分の落ち込みを防ぐ
アルツハイマー病では、記憶を失ったり、ネガティブな考えや行動に陥ったりと、精神的にもひどく落ち込んだ状態になります。
アメリカでは6番目に多い死因がアルツハイマー病です。
アルツハイマー病を患う人の数は増えてきています。
したがって、このアルツハイマー病という変性疾患を予防する方法を見つけることが急務となっています。
パーキンソン病、多発性硬化症、アルツハイマー病といった神経系の疾患の発症にも進行にも、酸化ストレスが関わっていると考えられてきました。(参考)
アルツハイマー病の患者は血中のセレンの値が低いことが、いくつもの研究で明らかになっています。(参考1、参考2)
また、食べ物でもサプリメントでも構わないので抗酸化物質を摂ると、アルツハイマー病の患者の記憶が改善する可能性があることを示す研究もあります。(参考)
ある小規模の研究では、軽度の認知症の場合、毎日セレンを豊富に含むブラジルナッツを1粒食べてセレンを補うことで、言葉を流暢に話すことができるようになったり精神状態も良くなることがわかりました。(参考)
それだけでなく、魚介類やナッツといったセレンを多く含む食材をたくさん食べる地中海料理は、アルツハイマー病にかかるリスクを下げることとの関連が見つかっています。(参考1、参考2)
Point:セレンを豊富に含んだ食事をすることで、アルツハイマー病の人の気分が落ち込んだり記憶がなくなるのを防ぐことが期待できます。
5. 甲状腺機能に不可欠
セレン(セレニウム)は甲状腺が正常に機能するためにも大切です。
実際に、甲状腺組織は人間の体内の他の器官に比べて多くのセレンを含んでいます。(参考)
このセレンという強いミネラルは、甲状腺を酸化ダメージから守り、甲状腺ホルモンを作るうえで重要な役割を果たしています。
甲状腺は代謝を調整し、成長や発達をコントロールするため、甲状腺が健康であることが大切です。(参考)
自分の免疫系が甲状腺を攻撃してしまう甲状腺機能低下症の1種である橋本病のような甲状腺状態は、セレン欠乏症と関連があるとされてきました。
6,000人以上が参加した観察研究によると、血清中のセレンの値が低いと、自己免疫性甲状腺炎や甲状腺機能低下症のリスクが上がるという関連が見つかりました。(参考)
また、橋本病の患者はセレンを補うと効果があることがいくつかの研究からわかっています。
ある調査では、セレンのサプリメントを3か月間毎日摂取することで甲状腺抗体が下がるという結果が出ています。
加えて、橋本病の患者の気分が良くなったり、全体的に快適な生活を送ることができるようになることにも繋がるとされています。(参考)
しかし、橋本病を患う人々にセレンのサプリメントをお勧めするには、まだ調査を重ねる必要があります。
Point:セレンは甲状腺を酸化ダメージから守り、甲状腺ホルモンを作るために必要です。セレンは橋本病をはじめとする甲状腺の疾患を持つ人々に効果が期待されていますが、更なる研究が必要です。
6. 免疫力を高める
免疫系は、体にとって脅威となる可能性のあるものを判別して攻撃することによって、健康を保つ働きがあります。
脅威とは、バクテリア、ウイルス、寄生虫等のことです。
免疫系が正常であるために、セレンは重要な役割を果たしています。
抗酸化物質であるセレンは体の酸化ストレスを減らし、炎症を抑えて免疫力を高める働きがあります。
血中のセレンの値が高いと免疫反応が高まるという関連が、いくつかの研究で明らかにされています。
反対にセレンが不足すると、免疫細胞の機能が阻害され、免疫反応が遅くなってしまいます。(参考)
HIVを患っている人の病気の進行や死亡のリスクとの関連も研究を通して示されています。
逆に、セレンをサプリメント等で補うことでHIV患者の入院が減ったり症状が改善するとも言われています。(参考)
さらに、インフルエンザ、結核、C型肝炎の患者がセレンを摂取することで、免疫系を強化できる可能性もあります。(参考)
Point:セレンは私たちの健康と正常な免疫機能のために不可欠です。セレンの値が高いと、HIV,インフルエンザ、結核、C型肝炎の患者の免疫力を高めることが期待できます。
7. 喘息の症状の改善
喘息は、肺に出入りする空気の気道に影響のある慢性疾患です。
この気道が腫れて狭くなることで、ゼーゼーと息が切れたり、呼吸が荒くなったり、胸が苦しくなったり、咳が出るといった症状が出ます。(参考)
喘息は、体内の酸化ストレスや炎症の値が高いことと関連があると言われています。(参考)
セレン(セレニウム)の炎症を抑える効果により、喘息の症状が緩和されるのではないかという研究結果が示されています。
喘息持ちの人は血中のセレンの値が低いことが、調査を通じてわかっています。
実際にある研究では、喘息の患者の中でも血中のセレンの値が高い人は、セレンの値が低い人に比べ、肺の機能が高いことが明らかになりました。(参考)
セレンをサプリメントで摂取することで、喘息の症状を改善することも期待できます。
例えばある研究では、喘息の患者に1日あたり200 mcgのセレンを摂取してもらったところ、喘息の症状を抑えるために使用していたコルチコステロイド薬の服用量が減ったという結果が出ています。(参考)
しかし、この分野の研究では意見が分かれており、喘息の発症や治療におけるセレンの役割を完全に理解するには、大規模な研究が必要です。(参考)
Point:セレンは体内の炎症を抑える働きがあるので、喘息の患者への効果が期待できます。しかし、まださらに研究が必要です。
食事によるセレンの摂取
幸いなことに、体に良い食べ物の多くは、セレンを豊富に含んでいます。
セレン(セレニウム)を摂取するには、下記のような食べ物を食べると良いでしょう(参考1、参考2):
- 牡蠣:3オンス(85g)で1日あたりの摂取量(DV)の238%
- ブラジルナッツ:1粒(5g)で1日あたりの摂取量の174%
- オヒョウ:6オンス(159g)で1日あたりの摂取量の171%
- キハダマグロ:3オンス(85g)で1日あたりの摂取量の167%
- 卵:Lサイズ2個(100g)で1日あたりの摂取量の56%
- イワシ:4尾(48g)で1日あたりの摂取量の46%
- ヒマワリの種:1オンス(28g)で1日あたりの摂取量の27%
- 鶏むね肉:4切れ(84g)で1日あたりの摂取量の12%
- 椎茸:1カップ(97g)で1日あたりの摂取量の10%
野菜などの植物に含まれるセレンの量は、その植物が育てられた土壌に含まれるセレンの量によります。
従って、農作物が含むセレンの量は、どこで育ったかに大きく依存します。
例えばある研究によると、ブラジルナッツに含まれるセレンの量は地域によって大きく異なるということです。
ある地域のブラジルナッツは1粒で1日あたりの推奨摂取量の288%を含んでいたのに対し、別の地域のブラジルナッツには11%しか含まれていなかったという結果もあります。(参考)
このため、セレンという重要なミネラルを含んでいる複数の食材を食事に取り入れることが大切です。
Point:魚介類、ナッツ、きのこ等はセレンを豊富に含んでいます。セレンの含有量はその農作物が育った環境によって異なるので、セレンを含んでいる複数の種類の食材を食べることが大切です。
セレンの過剰摂取による危険
セレン(セレニウム)は健康のために必要ですが、摂りすぎると危険な場合があります。
実際に、セレンを大量に服用すると中毒になったり命にかかわることもあります。
セレン中毒となることは稀ですが、1日当たりの推奨摂取量である55 mcgに近い量を摂取するようにし、1日の許容量である400 mcgが超えないようにすることが大切です。(参考)
ブラジルナッツはセレンが非常に多く含まれているので、食べすぎるとセレン中毒になる可能性もあります。
しかし中毒になるのは、セレンを含む食材を食べた場合というよりも、サプリメントを摂取した場合になりやすいでしょう。
セレン中毒の症状には下記のようなものがあります:
- 抜け毛
- めまい
- 吐き気
- 嘔吐
- 顔のほてり
- 体の震え
- 筋肉痛
ひどいセレン中毒になると、場合によっては、心臓発作、腎不全、そして死に至るといったように、腸や神経系の深刻な病気になってしまうこともあります。(参考)
Point:セレン中毒になることは稀ですが、食事やサプリメントによって過剰に摂取すると、危険な副作用があることがあります。
編集部が厳選!特におすすめのセレンサプリ3選
ここからは、alloeh編集部が選んだ3種類のセレンサプリメントをそれぞれの特徴とともにご紹介していきます。
サプリメントとの相性は個人差が大きいため一概に言うことはできませんが、効果や評判などの点において高い水準にあり、迷った際にもこの中から選べば後悔することは少ないと思います。
もしセレンをサプリメントで摂取する場合には、ぜひ参考にしてみてくださいね。
アルギニン1000+亜鉛(オリヒロ)
アルギニン1000+亜鉛は、アルギニン1000mgを中心に、シトルリン50mg、亜鉛14mg、セレン、クロム、ビタミンB1、B2、B6が配合されています。アルギニンやシトルリンは、成長ホルモンの増加、免疫能の増強のほか、他のアミノ酸とともにTCA回路(エネルギー代謝システム)でエネルギーを効率よく生み出し疲労回復を早め、亜鉛は皮膚や粘膜の正常化を促します。
マカ(DHC)
マカは、アンデスの高山地帯で自生する非常に生命力の強い植物です。古来より滋養強壮に効く薬草として用いられており、男性の精力だけでなく女性のゆらぎ期などにも活力をサポートしてくれるサプリとして活用されています。DHCのマカは冬虫夏草、ガラナ、亜鉛など精力をサポートする成分を加えており、男女ともにおすすめです。
ディアナチュラ 黒セサミン(アサヒグループ食品)
ディアナチュラ 黒セサミンはお肌のトラブルを抑えたい方や脂っこいものが好きな方におすすめです。主成分である黒セサミンは、コレステロールの吸収を抑える効果が期待されています。また黒セサミンに含まれているビタミンEは抗酸化作用があり、お肌のトラブルの緩和や冷え性・肩こりの改善、ホルモンの分泌を調整する効果も示唆されています。
最後に
セレンは、私たちの体が正常に働くため必要不可欠なミネラルです。
代謝や甲状腺機能において重要な役割を果たしており、酸化ストレスによるダメージから体を守ってくれる働きがあります。
さらにセレンは免疫力を高めたり、老化に伴う気分の落ち込みを緩和したり、心臓病のリスクも下げる効果が期待されています。
このセレンという微量栄養素は、牡蠣やキノコやブラジルナッツをはじめとする様々な食材に含まれています。
皆さんもセレンを豊富に含んだ食べ物を食事に取り入れて健康を維持しましょう。
ただし、重度の症状など適切な治療が必要とされる場合はサプリメントに頼らず、医療機関で診断を受けるようにしましょう。
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