グルタミンとは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説

Written by alloeh編集部

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はじめに

グルタミンは、人の体の中で様々な機能を持つ大切なアミノ酸の1種です。免疫システムや消化器官の健康を維持するために重要な役割を果たします。

この記事では、なぜグルタミンが重要なのかや、グルタミンサプリメントの効果・安全性などについて取り上げていきます。

グルタミンとは

グルタミンは、体内で複数の機能を果たすアミノ酸の1種です。

アミノ酸は、タンパク質を作る元になる物質を形成します。タンパク質は、人の臓器の機能にとって重要である他、物質の血中での運搬や、有害なウイルスや細菌を抑制するなどの、大切な機能を担っています。(参考)

グルタミンはL-グルタミンとD-グルタミンの2つの形態があります。この二つは殆ど同じですが、わずかに分子の配列が異なります。(参考)

食事やサプリメントに含まれているのはL-グルタミンの方です。L-グルタミンがタンパク質を形成したり、その他の機能を発揮したりする一方で、D-グルタミンは生物の機能へはあまり関わりがないと考えられています。(参考1, 参考2)

L-グルタミンは、人の体内でも普段から生産されているアミノ酸です。 トリプトファンやバリンのように体内で生成されないアミノ酸のことを必須アミノ酸と言いますが、グルタミンはそうではありません。実際、L-グルタミンは、人の血液や体液の中に最も多く含まれているアミノ酸の1つです。(参考1, 参考2)

しかし、しばしば人体において、グルタミンが人の体内で生産される以上に必要となる場合があります。(参考)

このため、グルタミンは条件付きの必須アミノ酸と言われます。これは、怪我や病気など通常以上にグルタミンが必要となる状況において、グルタミンが食事などから補充される必要があるからです。(参考)

また、グルタミンは免疫システムや消化管の健康維持のためにも重要と考えられています。(参考)

💡 POINT

グルタミンは重要なアミノ酸の1つです。L-グルタミンは体内で生成されるほか、食事やサプリメントでも摂取することが可能で、タンパク質の形成や、免疫機能や消化機能などに関わっています。

グルタミンの効果・効能

免疫システム

グルタミンの大切な機能のうちの1つが、風邪や感染症に対する免疫システムにおける働きでしょう。

グルタミンは、白血球を含めた免疫細胞や、特定の消化管の細胞などにとって不可欠なエネルギー源です。(参考)

しかし、血中のグルタミン量は怪我や火傷をしてしまったり、手術を受けることなどで減少してしまいます。(参考1, 参考2)

体内のグルタミン必要量が、体内で作られるグルタミン量を上回ると、人の体は筋肉などのタンパク質を分解してグルタミンなどのアミノ酸を確保します。(参考1, 参考2)

加えて、体内で利用できるグルタミンの量が不足すると、免疫システムの機能が低下すると考えられています。(参考1, 参考2)

このため、高タンパク食・高グルタミン食・グルタミンサプリメントなどが、しばしば重症の怪我や火傷の患者さんに処方されます。(参考1, 参考2)

ある研究では、手術後の患者さんにおいてグルタミンのサプリメントが、術後の感染症を減らし入院日数の短縮につながったと報告されています。(参考1, 参考2)

さらに、重症の患者さんにおいても、グルタミンの投与が生存率を改善したり、必要な医療費の低下につながったとされています。(参考1, 参考2)

他の研究では、グルタミンのサプリメントが細菌やウイルスに感染した動物において、免疫機能を改善したと報告されています。(参考1, 参考2)

しかし、健常な成人においてこれらの機能が認められるのかについては質の高い研究データがまだなく、健常な人においてはサプリメントなどを使用せずとも通常の食事から必要な量のグルタミンが摂取できているかもしれません。(参考)

💡 POINT

グルタミンは免疫機能においても重要な役割を果たします。しかし、病気や怪我などがある人においては、人の体で生産されるグルタミンだけでは量が不十分かもしれません。このような場合には、グルタミンのサプリメントが、免疫機能を改善し、体内に貯蓄されるタンパク質を維持するのに役立つ可能性があります。

またグルタミン以外にも免疫に関わるとされている成分はあります。亜鉛ビタミンCなどがそうです。

そういった成分について網羅的に知りたい方は「免疫力UPに最適な成分やサプリメントは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説」という記事も用意しているため、興味があればぜひご覧ください。


消化器官の健康維持

グルタミンの免疫系への効能は、消化管の健康維持効果によるものかもしれません。

人の体の免疫システムのなかで、消化管は最も多くの機能を担っていると考えられています。これは、消化管内部に存在する数兆もの腸内細菌と一緒に、消化管の細胞も免疫機能を持っているためで、人の体の免疫に大きな影響を与えます。(参考)

グルタミンは、消化管の細胞と免疫細胞の重要なエネルギー源です。(参考1, 参考2)

グルタミンは消化管の内壁を正常に保つ機能もあり、消化管の内容物が体内に出てきてしまうのを防いでいます。(参考1, 参考2)

この機能は、消化管ないの有害な細菌や毒素が体内に吸収されるのを防ぐために重要です。(参考)

加えて、消化管の細胞の成長と維持においても重要な役割を果たしています。(参考1, 参考2)

グルタミンの消化管と免疫システムへの役割など、グルタミンは消化管細胞に働きかけることで全身の免疫改善に関与していると考えられています。(参考1, 参考2

💡 POINT

消化管は、人の免疫機能に関わる主要な臓器のうちの1つです。また、グルタミンは消化管と免疫細胞の主要なエネルギー源でもあります。グルタミンは消化管の内壁を正常に保ち消化管内部の有害な物質が人体に入らないように作用する他、消化管細胞の成長などにも関与しています。

また消化器官の健康維持という観点では、新ビオフェルミンS錠などに含まれている乳酸菌の働きについても知っておくべきでしょう。

乳酸菌については「乳酸菌の効果とは?論文をもとに乳酸菌の働き・健康メリットを解説」という記事で詳しく解説しています。


筋肉増強と運動パフォーマンスに対する効能

グルタミンがタンパク質の塊を形成するため、いくつかの研究において、グルタミンの筋肉増強や運動パフォーマンス改善への影響が調べられています。

ある研究では、31名の被験者が6週間にわたり、グルタミンもしくはプラセボを、ウェイトトレーニングをしながら摂取しました。(参考)

介入後、グルタミン摂取群とプラセボ摂取群の両群において筋肉量の増加が認められましたが、増加した筋肉量には差がありませんでした。追加の研究でも、グルタミンの摂取による筋肉量の増加や運動パフォーマンスの向上の効果は確認されませんでした。(参考1, 参考2)

ただし、いくつかの研究では、グルタミンの摂取が、運動後の筋肉痛の軽減や、高負荷の運動後の筋肉の回復を促す効果があるかもしれないと報告されています。(参考)

実際、ある研究では炭水化物とグルタミンを一緒に摂取すると、運動後2時間での血中の疲労マーカーが有意に低下したと報告されています。(参考)

また、その他にも陸上競技者の免疫機能を改善する目的で使用されることもありますが、研究の結果は一貫していません。(参考1, 参考2, 参考3)

他の研究では、グルタミンに加えて炭水化物や他のアミノ酸を一緒に摂取した場合においても、筋肉内の貯蓄されている炭水化物(グリコーゲン)の回復補助効果はなかったと報告されています。(参考)

まとめると、現時点ではグルタミンの摂取による筋肉増強や運動パフォーマンス向上のデータは明らかではありません。 この効果を裏付ける現在のデータは数も少なく、今後の追加での研究が待たれます。

また、多くの陸上競技者は普段から十分なタンパク質を食事で摂取しているので、グルタミンのサプリメントの追加がなくとも、すでに必要量以上のグルタミンを摂取している可能性もあります。(参考)

💡 POINT

グルタミンが筋肉増強や運動パフォーマンス向上につながるとする明らかなデータはほとんどありません。しかし、運動後の筋肉の疲労軽減には効果があるかもしれません。

筋力の向上を期待できる成分としてはクレアチンやβ-アラニンなどが有名です。「筋力UPに使われるサプリメントとは?クレアルカリンとβ-アラニンについて解説してみた。」という記事で解説しているため、筋力の向上を目的にグルタミンについて調べていた方はぜひご覧ください。


グルタミンの副作用や摂取量

グルタミンは普段から人の体内で産生され、多くの食材の中にも含まれている栄養素なので、通常の食事などから摂取する分には、摂取量が問題になることはありません。一般的な食事では、グルタミンは1日あたり3-6g程度含まれると考えられていますが、この量は食事のタイプや量で大きく変化します。(参考)

しかしサプリメントなどで摂取する場合には、摂取量が多くなってしまうことも考えられるでしょう。

グルタミンに関する研究では、様々な量のグルタミンが使用され、1日5g程度の投与もあれば、多いものだと1日45gのグルタミンを、6週間に渡って投与した研究もあります。このような高用量の摂取でも特に副作用の報告はありませんでしたが、血液検査などでの安全性などが詳細に調べられていたわけではありません。(参考)

他の報告では、短期間であれば1日14g程度までの摂取では健康への影響はほとんど無いであろうとされています。(参考)

まとめると、短期間であればサプリメントなどによって摂取量が少し多くなっても安全であると考えられていますが、しかし、長期間にわたる使用については健康への影響を懸念する研究者もいることは注意が必要です。(参考)

また、ベジタリアンやヴィーガンなどの、グルタミンの含有量が少ない植物由来の食材を主に摂取する方々については、普段の食事に加えてグルタミンのサプリメントを摂取しても良いかもしれません。

グルタミンの摂取をする場合には、1日5g程度の比較的少ない量から摂取を開始するのが良いでしょう。

💡 POINT

グルタミンの食事からの摂取や、短期間のサプリメントからの摂取は安全でしょう。しかし、高用量かつ長期間の使用については、今後の研究が待たれます。

グルタミンが含まれている食材

グルタミンは多くの食材に含まれているアミノ酸です。一般的な食事では、1日あたり3-6g程度のグルタミンが含まれていると考えられていますが、この量は摂取している食事の種類などによって変わります。(参考)

グルタミンはタンパク質に含まれるので、卵や牛乳などの動物性の製品に最も多く含まれる傾向があります。しかし、とうもろこしなどの特定の植物性の食材などにも多く含まれている場合があります。(参考)

白米やとうもろこしなどの植物性の食材に含まれるタンパク質にもグルタミンは含まれていますが、これらに含まれているタンパク質自体がそもそも少ないことには注意が必要です。(参考1, 参考2, 参考3)

このため、肉やその他の動物性の食材がグルタミンを最も効率よく摂取する方法と言えるでしょう。

残念なことに、他の食材などにおける正確なグルタミンの含有量はわかっていません。しかし、グルタミンが必須のタンパク質を形成する成分であることもあり、ほぼ全てのタンパク質を含む食材にはグルタミンが含まれていると言って良いでしょう。

普段の食事の中で、十分なタンパク質を摂取するように心がけることが、結果的にグルタミンの摂取量を増やすことにつながるでしょう。

まとめ

グルタミンに期待されている効果や、安全のための適切な摂取量などについて解説しました。

グルタミンが免疫系や消化器官の健康を維持するために活用されていることは説明した通りですが、免疫系の維持に関しては亜鉛やビタミンC消化器官の健康維持に関しては乳酸菌などもよく検討されています。alloehではそれぞれについても解説記事を用意しているので、興味があればぜひご覧ください。



免疫系・消化器官以外への効果として、スポーツサプリメントの成分としてもよく配合されていますが、ほとんどの研究では有効性がまだ確認できていません。

逆に有効性が確認されている成分としては、持久力向上であればBCAA筋力アップであればクレアチンやβ-アラニンなどが有名でしょう。これらについても解説記事を用意しています。



またグルタミンは、人の体内で生産されますが、普段の食事からも摂取されています。一般的な食事では、1日あたり3-6g程度摂取できると考えられています。

怪我や重篤な病気などで、体内で十分な量のグルタミンが作れない場合には、グルタミンのサプリメントによる補充が免疫システムの機能や体の回復のために有益かもしれません。

短期間であれば、グルタミンのサプリメントの使用は安全であると考えられます。 しかし、長期の使用に伴う効果については今後の研究結果が待たれます。

グルタミンの摂取を始める前に、あなたの目的がグルタミンの摂取によって達成できそうか、研究のデータなどを確認しましょう。

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