大豆のメリットとは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説

はじめに

大豆は学名をグリシン・マックス(Glycine Max)などと呼ばれ、東アジアに元々自生している豆果類の1種です。

大豆は、アジアの料理の中では重要な食材で、数千年に渡って摂取されてきました。 今日、大豆はアジアの国々と、南米・北米で主に栽培されています。

アジアでは、大豆はしばしば丸ごと豆の形のまま摂取されますが、欧米諸国では大豆の加工製品が一般に流通しています。

大豆由来の粉末、大豆プロテイン、豆腐、ソイミルク、醤油、大豆油など、複数の大豆製品が流通しています。

大豆には、複数の健康への効能に関連している抗酸化物質、植物性化学物質などが含まれています。 しかし、その副作用の可能性についても懸念があるので注意が必要でしょう。

この記事では、大豆について知っておいた方が良いことを取り上げていこうと思います。

大豆の栄養素

大豆は主にタンパク質で構成されますが、炭水化物や脂質なども豊富に含んでいます。

100グラム(3.5オンス)の茹でた大豆に含まれる栄養素は以下のようになります。(参考

  • カロリー: 173 
  • 水: 63% 
  • タンパク質: 16.6グラム 
  • 炭水化物:9.9グラム 
  • 糖分:3グラム 
  • 食物繊維:3グラム 
  • 脂質:9グラム
    • 飽和脂肪酸:1.3グラム 
    • 一価不飽和脂肪酸: 1.98グラム 
    • 多価不飽和脂肪酸: 5.06グラム 
    • オメガ-3脂肪酸: 0.6グラム 
    • オメガ-6脂肪酸: 4.47グラム 

タンパク質

大豆は植物性のタンパクの優れた供給源の1つです。

大豆に含まれるタンパク質は、乾燥重量の36-56%程度を占めます。(参考1, 参考2, 参考3)

1カップ(172グラム)の茹でた大豆には、おおよそ29グラムのタンパク質が含まれます。(参考)

動物性のタンパク質ほどまでは無いとしても、大豆タンパクの質はとても優れています。(参考)

大豆に含まれる主なタンパク質は、グリシニンとコングリシニンで、大豆タンパク質のおおよそ80%を占めます。 一部の人では、これらのタンパク質に対してアレルギー反応を起こす場合があります。(参考1, 参考2)

大豆タンパク質の摂取は、軽度のコレステロール値の低下に関連しているとも報告されています。(参考1, 参考2, 参考3)

タンパク質については『タンパク質とは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説』で詳しく解説をしています。

脂質

大豆は油料種子に分類され、大豆油を精製するのにも使用されます。

脂質の含有量は、乾燥重量の18%程度で、主に多価不飽和脂肪酸と一価不飽和脂肪酸、そして少量の飽和脂肪酸からなります。(参考)

大豆の主要な脂質はリノレン酸で、おおよそ脂質全体の50%を占めます。

炭水化物

大豆は含まれる炭水化物も少なく、食後の血糖上昇の度合いを表すグリセミック指数(GI)も低い食品です。(参考)

この、低いグリセミック指数(GI)のため、大豆は糖尿病の人へも有益な食材と言えるでしょう。

食物繊維

大豆は、多くの可溶性繊維と不可溶性繊維を含んでいます。

不可溶性繊維は主にアルファガラクトシドで、敏感な人においては、鼓腸や下痢などの症状を来すことがあります。(参考1, 参考2)

アルファガラクトシドはFODMAPsと呼ばれる食物繊維に分類され、過敏性腸症候群などの症状を悪化させるかもしれません。(参考)

特定の人においては不快な副作用の原因となるかもしれませんが、可溶性繊維は基本的には安全で健康的であると考えられています。

大豆は、腸管内の細菌によって発酵することで、短鎖脂肪酸(SCFAs)が形成され、腸管の健康を改善し大腸癌のリスクを軽減する効果があるとされています。(参考1, 参考)

食物繊維については、『食物繊維とは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説』でさらに詳しく解説をしているのでぜひチェックしてみてください。


Point:大豆は植物性のタンパク質と脂質の有益な供給源です。さらに、食物繊維も多く含み、腸管の健康にも良いと考えられています。


大豆に含まれるビタミンとミネラル

大豆は、以下に挙げるような複数のビタミンやミネラルの優れた供給源です。(参考

  • モリブデン: 大豆は、種子類、穀物、豆果類に少量含まれる必須微量元素のモリブデンを多く含みます。(参考
  • ビタミンK1: フィロキノンとしても知られる、豆果類に含まれるビタミンKの1種です。血液凝固において重要な役割を果たします。(参考
  • 葉酸: ビタミンB9としても知られ、体内で複数の重要な役割を果たす他、妊娠中に特に重要な栄養素です。(参考
  • 銅: 欧米では、食事から摂取される銅はかなり少ないことが一般的です。欠乏症は、心疾患につながる可能性があるとされています。(参考
  • マンガン: ほとんどの食材や飲料水に含まれている微量元素です。大豆からは、フィチン酸が多く含まれることであまり吸収されません。(参考
  • リン: 西洋型の食事にも多く含まれ、大豆からも十分に摂取することが可能です。 
  • サイアミン: ビタミンB1としても知られ、体内で多くの重要な役割を果たします。 


Point:大豆は、ビタミンK1、葉酸、銅、マンガン、リン、サイアミンなど、いくつものビタミンやミネラルの優れた供給源です。


大豆に含まれるその他の植物性化合物

大豆は、以下に挙げるような生物活性のある植物性化合物を多く含んでいます。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)

  • イソフラボン: 抗酸化物質であるポリフェノールの1つで、多くの健康への効能があると言われています。 
  • フェチン酸: 全ての植物の種子に含まれているフェチン酸は、亜鉛や鉄などの微量元素の吸収を阻害します。 このフェチン酸は、大豆を煮たり、発芽させたり、発酵させたりすることで減少します。 
  • サポニン: 大豆に含まれる植物性化合物の1つで、動物の実験においてサポニンは血中のコレステロールを減少させたとされています。 

イソフラボン

大豆は、他の食材よりも多くのイソフラボンを含んでいます。(参考)

イソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンによく似た植物性化合物です。 実際、イソフラボンは、植物性エストロゲンに分類されます。

大豆に含まれる主要なイソフラボンは、ゲニステイン(50%)、ダイゼイン(40%)、グリシテイン(10%)などです。(参考)

一部の人は、ダイゼインをエクオールと呼ばれる、大豆の健康への効能の原因となる物質へ変換する、特殊な腸内細菌を持っている場合があります。

大豆の摂取で、体内でエクオールを生産できる人の方が、エクオールを産生できない人よりも、大豆の健康への有効性が高くなると言われています。(参考)

この、エクオールを体内で産生できる人の割合は、欧米人よりも、アジア人またはベジタリアンの人に多い傾向があります。(参考1, 参考2)

イソフラボンの効果や副作用については、『イソフラボンとは?更年期障害への効果やその他のメリットを解説』で紹介しているのでぜひチェックしてみてください。


Point:大豆は、イソフラボン、サポニン、フィチン酸など、複数の生物活性がある植物性化合物に富んでいます。特に、イソフラボンはエストロゲンに似ており、大豆の健康への効能の要因となっています。


大豆の健康への効能

他の自然食品と同じように、大豆には多くの健康への効能が期待されています。

癌リスクの軽減効果

近代社会において、癌は最も頻度の高い死亡原因の1つです。

大豆を摂取することは、女性においては乳がん組織の増加に繋がり、乳がんの発症リスク上昇につながるとする仮説があります。(参考1, 参考2, 参考3)

しかし、多くの観察研究では、大豆の摂取はかえって、乳がんの発症リスクを軽減すると報告しています。(参考1, 参考2)

また、これらの研究では、男性における前立腺癌に対する予防的作用も報告しています。(参考1, 参考2, 参考3)

イソフラボン、ルナシンなど、多くの大豆に含まれる化合物が、癌の予防効果に影響しているかもしれません。(参考1, 参考2)

若年期のイソフラボンへの暴露は、特に高齢になった際の乳がん発症に対して、予防的に働く可能性があります。(参考1, 参考2)

イソフラボンが乳がんの予防に関連したとするデータは、あくまで観察研究に基づくもので、投与と非投与群を比較するような介入試験では無いことには、十分注意が必要でしょう。

更年期障害症状の改善

更年期とは、女性の月経が終わる時期のことを指します。

しばしば、発汗、ホットフラッシュ、気分の変調など、不快な症状と関連することがあり、これらの症状はエストロゲンレベルの低下によると考えられています。

面白いことに、特に日本人女性のようなアジア人の女性では、欧米の女性に比べて、更年期障害の症状を感じにくいとされています。

アジア諸国においては、大豆製品の消費が多いことがこの違いの原因であるかもしれません。

研究では、大豆に含まれている植物性エストロゲンの1つであるイソフラボンが、症状改善に関与している可能性が示唆されています。(参考1, 参考2)

大豆製品が、全ての女性に同様に働くわけではありません。 大豆は、摂取したイソフラボンをエクオールに変換する能力がある腸内細菌を有する人においてのみ有効であると見られています。

エクオールは、大豆の健康への効能に重要な役割を果たしていると考えられています。

イソフラボンを1日135mg1週間にわたり摂取(1日68グラムの大豆相当)したところ、エクオールを腸内で産生できる人でのみ、更年期障害症状の改善が認められました。(参考)

更年期障害の症状には、今まではホルモン療法が使用されてきましたが、現在ではイソフラボンもよく使用されるようになっています。(参考)

骨の健康への効能

骨粗鬆症は、特に高齢女性で起きやすい、骨密度の減少や骨折リスクの上昇に特徴付けられる疾患です。

大豆製品の摂取は、閉経後の女性において、骨粗鬆症のリスクを軽減させるかもしれません。(参考1, 参考2)

この作用は、大豆に含まれるイソフラボンによるものであると考えられています。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)

Point: 大豆は、乳がんや前立腺癌に予防的に働く可能性のある植物性化合物を含んでいます。 さらに、豆果類は更年期障害の症状を軽減して、閉経後女性における骨粗鬆症リスクを軽減するかもしれません。

大豆のデメリットと副作用

大豆には多くの健康への効能が期待されていますが、特定の人においては大豆製品の摂取を控えたり、避けたりする必要があるでしょう。

甲状腺機能の抑制効果

高用量の大豆製品の摂取は、甲状腺機能を抑制して、甲状腺ホルモンの産生低下に特徴付けられる甲状腺機能低下症を起こすかもしれません。(参考)

甲状腺は大きな腺組織で、人の成長の調整や、体のエネルギー代謝効率などを司っています。

動物と人を対象とした研究それぞれで、大豆に含まれるイソフラボンが甲状腺ホルモンの産生を抑制したと報告されています。(参考1, 参考2)

37名の日本人を対象にしたある研究では、30グラム(1オンス)の大豆を毎日3ヶ月に渡って摂取したところ、甲状腺機能抑制に伴う症状が出現したとされています。

この症状には、不快感、眠気、便秘症、甲状腺の肥大などが挙げられ、大豆の摂取中止後に、これらの症状は消失したとされています。(参考)

他の研究では、軽度の甲状腺機能低下がある成人において、16mgのイソフラボンを毎日2ヶ月に渡って摂取したところ、甲状腺機能が10%低下したとされています。(参考)

この研究で摂取されたイソフラボンの量は、大豆でいうと8グラム(0.3オンス)に相当する量で、かなり少ない量でした。(参考)

しかし、健常な成人を対象にしたほとんどの研究では、大豆の摂取と甲状腺機能に有意な関連性は認められませんでした。(参考1, 参考2, 参考3)

14の研究をまとめた調査でも、健常な成人においては、大豆の摂取で甲状腺機能に有意な悪影響は見られず、甲状腺ホルモン欠乏症を持つ乳児でのみ、悪影響が出るリスクが報告されました。(参考)

つまり、甲状腺の機能が低下している人など場合には、定期的な大豆製品の摂取が、甲状腺機能低下症の悪化につながる可能性があるかもしれません。

鼓腸と下痢

他の多くの豆類と同じように、大豆にも不可溶性の食物繊維が含まれており、そのことで鼓腸や下痢などの症状が起きる場合があります。(参考1, 参考2)

健康に有害というわけではありませんが、これらの症状には不快感を伴う場合があるでしょう。

大豆の食物繊維はFODMAPsと呼ばれる、ラフィノーぜ、スタチノーゼなどを含む食物繊維を含み、頻度の高い消化管疾患である過敏性腸症候群などを悪化させる可能性がります。(参考)

過敏性腸症候群を持つ場合には、大豆の摂取は控えるか避けるかした方が良いでしょう。

大豆アレルギー

食物アレルギーは、食物の特定の成分に対して有害な免疫反応が起きることで発症する頻度の高い病態です。

大豆アレルギーは、ほとんどの大豆製品に含まれている、グリシニン・コングリシニンなどのタンパク質によって惹起されます。(参考)

大豆は、食物アレルギーの原因となる食物の中で代表的な食物の1つですが、大豆アレルギー自体は、子供でも大人でも頻度はあまり高くありません。(参考1, 参考2)


Point:特定の人は、大豆製品の摂取で、甲状腺機能の抑制、鼓腸、下痢、アレルギー反応などの症状を起こす可能性があります。


まとめ

大豆はタンパク質を多く含み、炭水化物や脂質なども十分に含んでいる食材です。

多くのビタミン、ミネラルを含み、その他にも有益な植物性化合物やイソフラボンなどを含みます。

このため、定期的な大豆の摂取は更年期障害の症状を軽減させ、前立腺癌のリスクを減らすとされています。

しかし、特定の人においては、消化器症状などの副作用が出たり、甲状腺機能を抑制する可能性もある点には注意が必要でしょう。

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