大豆イソフラボンは更年期障害に効果あり?論文をもとに効果を解説

イソフラボンとは

イソフラボンは、フィトエストロゲンと呼ばれる植物性の物質の一つです。フィトエストロゲンは体内で弱めのエストロゲンのような働きをします。

大豆に含まれるイソフラボンは主に、ゲニステインとダイゼインです。大豆を食べると、イソフラボンは腸内のバクテリアによって働きやすい形に分解されます。

大豆イソフラボンは体内に入ると、エストロゲンと同じ受容体と結合します。受容体とは、細胞の表面にあるドッキングステーションのようなものです。イソフラボンが、ある特定の受容体と結合すると、エストロゲンの効果を真似したような働きをします。ただし、他の受容体と結合した場合にはエストロゲンの効果を阻害してしまいます。

イソフラボンがエストロゲンに似た働きをすると、ほてりなどの更年期の症状を緩和する効果があります。

更年期について

更年期とは、エストロゲンの分泌と毎月の排卵がだんだんとなくなることを言います。エストロゲンが減ることによって、下記のような様々な症状が出てきます:

  • ほてり 
  • 夜中に汗ばむ 
  • 気分に波がある 
  • 集中力の低下 
  • 倦怠感 
  • 膣の乾燥 
  • 睡眠障害


こうした症状を緩和する方法の一つとして、ホルモン療法が有効です。(参考

エストロゲンを投与することで、更年期になると急にエストロゲンが自然に減ってしまうのを和らげます。この方法は確かにとても効果がありますが、同時にリスクもあります。

エストロゲンを投与すると、特に長期間続けた場合に、血餅、脳卒中、乳癌や子宮癌のリスクが高まる可能性があります。(参考

本人の健康状態や家族の病歴によっては、エストロゲンの投与が治療の選択肢にならない女性もたくさんいます。

そこで、低リスクで更年期障害を和らげるために、大豆などの自然のものに頼る人たちもいます。大豆は豆腐や豆乳に含まれており、また大豆の成分の入ったサプリメンもあります。大豆はイソフラボンという化合物を含んでいて、このイソフラボンにはエストロゲンににた効果があります。

研究からわかること

更年期障害に対する大豆の効果に注目している研究は、小規模な研究ですが数多くあります。特にほてりや夜中に汗ばむ症状についてはたくさんの研究がされています。しかしこれまでのところ、大豆の効果が確認された研究結果と、効果が認められなかった研究結果が混在しています。

大豆サプリメント

2012年に19件の研究を分析したところ、大豆イソフラボンのサプリメントを飲むと、偽薬の場合と比べて、ほてりが26%軽くなることが分かりました。(参考

2013年にコクランが行った確認では、食事で大豆を食べたりイソフラボンのサプリメントを飲んでもほてりを和らげることへの証拠は見つかりませんでした。(参考)しかし、大豆に含まれる主なイソフラボンの一つであるゲニステインがたくさん入ったサプリメントについては効果が認められました。

2015年に10件の研究を分析して分かったことは、大豆などの植物性イソフラボンによりほてりが11%改善するということでした。(参考

大豆や大豆イソフラボンによって、ほてりが少し起きにくくなったり程度が軽くなることは、数多くの研究で明らかになっていますが、ホルモン治療ほど急には効果が出ないようです。

大豆製品の効果が最大限に表れてくるには、何週間かの時間がかかります。例えば2015年の調査では、大豆イソフラボンが最大の効果の半分を発揮するのにも13週間以上かかったということです。(参考

一方、以前から行われているホルモン療法の場合、約3週間で同等の効果が表れます。

大豆イソフラボンの効果が表れるかどうかは、体内でイソフラボンがどのように分解されるかによっても変わります。大豆を食事でよく食べるアジアで育った人は、アメリカ人よりもほてりを感じる人がずいぶん少ないとされています。(参考

またアジア人女性の半数以上が、イソフラボンの中でも強い働きをするエクオールという物質を作り出すことができます。アメリカ人でエクオールを作ることができる女性は3分の1以下です。

大豆食品

大豆の豆、大豆粉、入り大豆といった、大豆をたくさん使った食材の効果に注目している研究もあります。しかし2010年に10件の研究を調査しても、大豆食品を食べてほてりや膣の乾燥といった更年期の症状が改善したという証拠はほとんど見つかりませんでした。(参考

大豆のその他の効果

更年期に伴う症状の治療に対して大豆がどこまで効果的かはまだはっきりとわかっていませんが、大豆には更年期だけでなくその他の点でも健康に良い効果があります。

栄養豊富

大豆は飽和脂肪が少なく、カロリーも低い食品です。また下記のような栄養を豊富に含んでいます:


心臓病のリスク低下

豆腐などの大豆製品を週に2-3回食べることで、飽和脂肪やコレステロールの高いステーキやハンバーガーなどの動物性たんぱく質の食べすぎを防ぐことができます。

こうして飽和脂肪を減らし、コレステロールを下げると、更年期に起きやすい心臓病のリスクを下げることに繋がります。

骨を強くする

エストロゲンは骨の強さを維持するのに重要な役割を果たしています。更年期になると骨粗鬆症になりやすいのはこのためです。更年期でも健康な骨の状態を保つには、大豆を摂ると良いと示している研究もあります。(参考

大豆は何から摂るのがいいの?

皆さんも大豆の効果を試してみたいと思ったら、以下のような食べ物を食事に取り入れると良いでしょう:

  • 枝豆
  • 大豆粉
  • 味噌汁
  • テンペ
  • 豆腐
  • 豆乳
  • 豆乳ヨーグルト


またサプリメントでも大豆イソフラボンを摂ることができます。北米更年期学会(North American Menopause Society)によると、まずは1日50 mgの大豆イソフラボンを摂ることから始めると良いとされています。(参考

効果を実感するには服用する量を増やす必要があるかもしれません。更年期障害に対する効果を感じ始めるまでに数週間から数か月の時間がかかることに注意してください。

最後に

信頼性のある研究結果も出てはいますが、大豆が更年期障害の改善にどのように働くのかは未だはっきりとしていません。効果を感じる女性もいれば、そうでない方もいると思います。また大豆の副作用の可能性に関する議論もあります。こちらを参照してください。(参考

とはいえ、ホルモン療法の代わりになるものを探しているようであれば、大豆を試してみる価値はあると思います。

しかし、家族かご自身に乳癌の病歴がある場合には、大豆サプリメントは避けた方が良いかもしれないので、かかりつけの医師に相談しましょう。また既にホルモン療法を受けている場合にも大豆サプリメントはオススメできません。乳癌の病歴があったりホルモン治療を受けている方への大豆サプリメントの安全性は不明瞭な点もあります。(参考

イソフラボンをサプリで試してみたい方は、「大塚製薬のエクエル」から使用してみると良いでしょう。ただし、重度の症状など適切な治療が必要とされる場合はサプリメントに頼らず、医療機関で診断を受けるようにしましょう。

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