糖尿病に対して、雑穀類(ミレット)の摂取は有効か?
糖尿病とは、体でインスリンが十分に作られない、もしくは有効に活用されない病気です。
結果として、摂取した食事を体内で正常にエネルギーとして代謝できなくなります。これが原因で血糖レベルが上がったり、血糖値の上昇、ひいては危険な合併症につながる可能性があります。糖尿病は血糖値に影響が出るので、糖尿病患者さんにおいては、糖分や雑穀類を含めた炭水化物を摂取してはいけないと思われがちです。(参考)
糖尿病のある方において、血糖のコントロールのために炭水化物の摂取量に気を配ることは大切ですが、複合炭水化物のような良い炭水化物については、糖尿病症状のコントロールの助けになる可能性が考えられています。(参考)
雑穀類やその他の穀物類の炭水化物は、食物繊維、ミネラル、ビタミンなどを豊富に含んでいます。(参考)糖尿病のある方では、これらの炭水化物が日々の食事に組み込まれると良いでしょう。
この記事では、なぜ雑穀類の摂取が糖尿病のある方で有効なのかや、その他の健康的な食事を摂取するコツなどについてまとめます。
雑穀類を食べても良いのか?
端的に答えると、食べて良いでしょう。
雑穀類は、小さな種子型の穀物の総称で、小さなヒエのような見た目です。米国では、雑穀類について聞いたことがない人もいるかと思いますが、世界的には主食として雑穀類を摂取している国もあります。一般的には、インドやアフリカ料理に使われることが多いです。
雑穀類には以下のような種類があります。
- トウジンビエ
- アワ
- シコクビエ
- キビ
- モロコシ
- スズメノヒエ
雑穀類は全粒穀物で、消化しやすく良い炭水化物として認識されています。(参考)また、グルテンを含まないこともあり、セリアック病やグルテン過敏症のある方においても、炭水化物の良い供給源となるでしょう。(参考1, 参考2)加えて、雑穀類は含まれる栄養価もとても高いです。
含まれる栄養分
雑穀類1カップあたりに以下の栄養分が含まれます。(参考)
雑穀類の摂取は、栄養価の点から皆にとって有用であると考えられますが、特に糖尿病のある方にとっては、血糖の管理の面で、数ある全粒穀物の中でも特に雑穀類が優れていると言えるでしょう。(参考)
雑穀類は、含まれる繊維分の多さからも糖尿病患者さんにおいて特に望ましい選択肢と言えるでしょう。食物繊維は消化を遅延させます。結果として、糖分が体内に取り込まれる速度が低下するので、血糖の急な上昇が起こりにくくなります。
糖尿病患者さんにおける雑穀類摂取の利点
研究では、雑穀類が糖尿病のマネジメントに有効である可能性が示唆されています。300名の2型糖尿病を対象にした研究では、90日間にわたって参加者がアワの摂取をしました。(参考)
以下が、この介入によって影響があった項目です。
- 血糖コントロール
- 空腹時の血糖
- コレステロール
- 中性脂肪(トリグリセライド)レベル
90日が経過した後、雑穀類の摂取をしていた人においてヘモグロビンA1c(HbA1c)が元の値の19.14%低下した(注:値が直接19.14%下がったわけではない)と報告されています。(参考)なお、このヘモグロビンA1c(HbA1c)とは、過去3ヶ月の血糖の平均値を表す値です。
また、血糖値は13.5%、コレステロール値は13.25%、中性脂肪(トリグリセライド)は13.51%低下したとされています。
これらの結果を元に、雑穀類の摂取が血糖コントロールに有益で、心血管系疾患のリスクを低下させることにつながると考えられています。
グリセミック指数(グリセミックインデックス)とは何か?
糖尿病のある方においては、グリセミック指数が何であるかや、普段摂取する食事のグリセミック指数がどの程度であるのかを知っておく必要があります。(参考)
グリセミック指数は、摂取後にどのくらいの早さで血糖が上昇するのかを元に、炭水化物を格付けした指数です。グリセミック指数が低い食材は、消化がゆっくりで、食後の血糖上昇も緩やかです。一方で、グリセミック指数が高い食事は、摂取後の消化が早く、食後の血糖の上昇が急峻になります。グリセミック指数は、0から100の値で表記されます。雑穀類の利点の1つは、雑穀類の多くが低〜中程度のグリセミック指数を持つことで、頻繁に摂取しても血糖に大きな影響を与えにくいと考えられています。
雑穀類のグリセミック指数は、雑穀類の種類によって異なることには注意が必要です。(参考)このため、糖尿病のある方においては、特定の雑穀類が他の雑穀類と比べて、より有益である場合があります。
アワ、キビ、シコクビエ、トウジンビエなどのグリセミック指数は54-68程度です。一方で、モロコシのグリセミック指数は70以上となるので、他の雑穀類に比較すると、摂取は控えた方が良いでしょう。また、普段の食事に利用することも多いので、他の全粒穀物のグリセミック指数を知っておくことも重要です。
グリセミック指数が低い(55以下)の全粒穀物には以下のようなものがあります。
- キノア
- 大麦
- エンバクフスマ
- オールブランシリアル
- サワードウブレッド
- 全粒トルティーヤ
中程度のグリセミック指数(50-69)の全粒穀物には以下のようなものがあります。
- 亜麻仁パン
- 全粒小麦ピタパン または白ピタパン
- ライ麦パン
- バスマティライス
- 玄米
- クスクス
グリセミック指数の高い(70以上)全粒穀物には、以下のようなものがあります。
- ジャスミンライス
- インスタントライス
- プレッツェル
- 餅
- ナン
- 白パンまたは全粒小麦パン
糖尿病の方における健康的な食事のコツ
血糖コントロールのコツは、健康的な食事をすることです。これは、糖尿病のある方だけに限らず、全ての人に当てはまるアドバイスです。
糖尿病の方においては、血糖を健康的なレベルに維持することが重要で、その他にも血圧、コレステロール値、体重なども適切に管理することが大切です。これらを適切に管理することで、以下に挙げるような糖尿病の合併症を防ぐことにつながります。(参考)
- 心血管疾患
- 神経障害
- 腎臓病
- 眼の疾患
- 皮膚疾患
糖尿病の管理のためには、以下の食材を含むバランスのとれた食事をすることが大切です。
毎週の献立に組み込むすることが推奨される食材には以下のようなものがあります。
- ブロッコリー
- 緑色の葉物野菜
- トマト
- じゃがいも
- 緑色の豆類
- 人参
- コーン
- リンゴ
- バナナ
- オレンジ
- 全粒穀物(パスタ、米、パン)
- 脂質の少ない肉(鶏肉やターキー)
- 卵
- 魚肉(鮭やマグロ)
- 乾燥豆
- ナッツやピーナッツ
- 低脂肪乳製品(チーズやヨーグルト)
その他の生活における注意点
油を調理をするときに利用する場合には、以下に挙げるような心臓に良い油を使いましょう。
- カノーラ油
- オリーブ油
- アボカド油
また、摂取するタンパク質の量にも注意しましょう。食事は小さな皿を使って食べるように心がけ、大量の食事を1日3回摂取するよりも、少量の食事を1日5-6回に分けて摂取しましょう。また、糖分と塩分の摂取に気を配りましょう。ハーブを取り入れて、調理に使用する塩分を減らせるか試すことも有用です。糖分が添加された飲料を減らすように心がけて、極力水を飲み、必要時には砂糖の代替になる甘味料を試してみましょう。
心臓の健康を守り、体重を維持するためには、健康的な食事に加えて、1日の日課に最低でも30分程度の運動を取り入れることも重要です。(参考)散歩に出かけたり、自転車に乗ったり、ジムの会員になったりすることも有用でしょう。
健康的な雑穀類のレシピ
雑穀類を使った料理に馴染みがない場合のために、以下に簡単で健康的な雑穀類のレシピをいくつか紹介します。
いつ専門家に相談するべきか?
糖尿病の患者さんでも、食事療法、運動療法、薬物療法などを使って効果的に血糖をコントロールできる方がいます。
その一方で、血糖の急上昇が続けてみられる場合には、医療機関で医師に薬剤の調整などを相談しましょう。場合によっては、糖尿病専門の栄養士や、糖尿病指導員への紹介をしてもらいましょう。
これらの紹介は、どのような食事を摂取すべきで、どんな食材を避けるべきなのかが、よくわからない場合には特に重要です。これらの専門家は、血糖の管理の助けになる、糖尿病に有効な献立を考える手助けをしてくれますし、ひいては糖尿病による心臓関連の合併症のリスク軽減につながるでしょう。
まとめ
糖尿病と最近診断されたばかりの方も、何年も糖尿病を持っている方もでも、健康的な食事を摂取することが難しいと感じることが、しばしばあると思います。バランスの取れた食事を考える上で覚えておくと良いことの1つは、良い炭水化物を努めて摂取することが健康維持に有益であるということです。
もしまだ試したことがなければ、これから雑穀類を使った献立を試してみたり、全粒穀物を毎週の献立に組み込むことを、検討してみてはいかがでしょうか?
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