ロイヤルゼリーとは?
ロイヤルゼリーはミツバチによって作られる、女王バチや幼虫を育てるためのゼリー状の物質です。
またロイヤルゼリーは、心身の健康維持や慢性的な病気を治療するために、サプリメントとしてもよく売られています。
長い間伝統的な薬として使われていますが、その効果はまだ確証を持てないものもあり、西洋医学においての活用においてはまだ疑念があることも事実です。
この記事ではそんなロイヤルゼリーに期待されている効果・効能について、エビデンスをもとに紹介します。
ローヤルゼリーのメリット
栄養が豊富
ロイヤルゼリーには水・炭水化物・たんぱく質・脂肪などが含まれています。(参考)
ロイヤルゼリーの科学的な成分構成は完全には不明ですが、ローヤルゼリーのユニークは健康効果はタンパク質と脂肪酸によるものであると考えられています(参考1、参考2)。
この中には主要なロイヤルゼリータンパク質(MRJPs)と総称される9つの糖たんぱく質や、trans-10-ヒドロキシ-2-デセン酸と10-ヒドロキシデカン酸の2つの脂肪酸が含まれます(参考)。
ロイヤルゼリーはまたいくつかのビタミンB群(ex. B1, B2, B6, 葉酸, イノシトール, ビオチン, パントテン酸, ナイアシン, チアミン etc)や微量ミネラルも含んでいます。
しかしながら、栄養の構成はロイヤルゼリーの源によって大きく異なります(参考)。
💡 POINT
ロイヤルゼリーには水、炭水化物、たんぱく質、脂肪、ビタミンB群、微量のミネラルが含まれます。ロイヤルゼリー特有なあるタンパク質や脂肪酸がロイヤルゼリーの健康効果の理由かもしれません。
抗酸化および抗炎症効果を与える可能性
ロイヤルゼリーは広く炎症と酸化ストレスを減らすといわれています。
複数の試験管及び動物実験において、ロイヤルゼリーの中の特定のアミノ酸、脂肪酸、フェノール化合物に潜在的な抗酸化作用があることがわかりました(参考)。
それに加えて、いくつかの試験管での研究において、ロイヤルゼリーで処理された免疫細胞から放出された炎症誘発性化学物質のレベルが低下していることが示されています(参考1、参考2、参考3)。
しかしこれはあくまで試験管・動物での研究であり、人間での研究が欠けています。ロイヤルゼリーで炎症を治療することに関する決定的な結論を得るためには、より多くのデータが必要です。
💡 POINT
いくつかの動物及び試験管での研究でロイヤルゼリーには抗酸化および抗炎症効果がある可能性があると示されています。しかしながら、包括的な研究が存在しません。
コレステロールレベルに影響を与えることにより心臓の病気を減らす可能性
動物と人間での研究でロイヤルゼリーがコレステロールレベルに良い影響を与え、したがって心臓病のリスクを減らす可能性があることが示されています。
正確なメカニズムは不明ですが、ロイヤルゼリーの特定のタンパク質がコレステロールを下げるのを助ける可能性があります(参考)。
ある12週にわたる研究では、ロイヤルゼリーを摂取したうさぎの総コレステロールと「悪玉」LDLコレステロールのレベルが、28%および23%とそれぞれ大きく下がりました(参考)。
同様に、人間での1か月にわたる研究において、3グラムのロイヤルゼリーを毎日摂取した人々は、総コレステロールと「悪玉」LDLコレステロールの値が11%と4%とそれぞれ減りました(参考)。
反対に、もう1つの人間での小さな研究では、ロイヤルゼリーと偽薬を摂取した被験者間で、コレステロールレベルに大きな違いはありませんでした(参考)。
ただし、ロイヤルゼリーの心臓の健康に与える影響についてより理解するには、より多くの研究が必要です。
💡 POINT
いくつかの動物と人間の研究において、ロイヤルゼリーサプリメントはコレステロールレベルを下げることが示されています。しかしながら、これらの結果を確認するためのより多くの研究が必要です。
傷の治療と皮膚の修復を助ける可能性
ロイヤルゼリーを口から摂取しても局所的に使っても、傷の治療やほかの皮膚の炎症状態を助ける可能性があります。
ロイヤルゼリーには抗バクテリア作用があり、傷をきれいにし感染を予防してくれます(参考)。
ある動物研究では、ロイヤルゼリー抽出物を与えられたネズミでコラーゲンの製造が増加することが示されています。コラーゲンは肌の修復に必須の構造たんぱく質です(参考)。
ある試験管での研究ではロイヤルゼリーで処理された人間の細胞は組織の修復能力が大幅に向上することが示されています(参考)。
反対に、より最近の人間での研究では、対照群とロイヤルゼリーで局所的に糖尿病性足部潰瘍を治療している被験者の間で傷の治療に違いはありませんでした(参考)。
💡 POINT
いくつかの研究ではロイヤルゼリーが組織の修復に関するたんぱく質の製造を強化する可能性があると示されています。しかしながら、これについてもより多くの研究が必要です。
特定のタンパク質が血圧を下げる可能性
ロイヤルゼリーは心臓や循環器系を血圧を下げることにより守る可能性があります。
いくつかの試験管での研究では、ロイヤルゼリーの特定のたんぱく質が静脈と動脈の平滑筋細胞を弛緩させ、それによって血圧を下げることが示されています(参考)。
最近の動物での研究では、ロイヤルゼリーと他のミツバチ由来の物質を組み合わせたサプリメントを試し、血圧が大きく下がることを見つけました。しかしながら、このサプリメントの中でロイヤルゼリーがどのような役割を担っているかについては不明です(参考)。
ロイヤルゼリーと血圧の関係について理解するにはより多くの研究が必要です。
💡 POINT
初期研究がロイヤルゼリーの特定のタンパク質が血圧を下げる可能性があるとしていますが、より多くの研究が必要です。
血糖値を酸化ストレスと炎症を減らすことで調整する
ロイヤルゼリーはまた、酸化ストレスと炎症を減らすことで、血糖値制御とインシュリン反応性を改善する可能性があります。
複数の動物研究で、ロイヤルゼリーで処理された肥満で糖尿病のねずみにおいて、インシュリン反応性が向上し、膵臓、肝臓、生殖組織への明らかな保護効果が示されました(参考1、参考2、参考3)。
6か月間の小規模な人間での研究では、ロイヤルゼリーを毎日摂取した健康な人の空腹時血糖値が20%減少したことが示されています(参考)。
しかしながら、このテーマに関する研究はまだ十分とは言えないでしょう。
💡 POINT
複数の動物研究においてロイヤルゼリーはインシュリンの反応性を増やし、血糖値のコントロールを改善することが示されています。しかしながら、人間での研究は限られています。
抗酸化機能が脳の健康な機能を助ける可能性
ロイヤルゼリーは脳機能を強化する可能性があります。
ある研究によるとストレスをかけられたネズミにロイヤルゼリーを与えるとストレスホルモンのレベルを下げ、対照群よりも中枢神経が強いことがわかりました(参考)。
異なる研究では、閉経後のねずみにロイヤルゼリーを与えると、記憶を改善しうつの症状を減らしました(参考)。
もう1つの動物での研究ではロイヤルゼリーを与えられたネズミは、アルツハイマー病に関する脳内の特定の化学物質の沈着をよりよく取り除けることが示されています(参考)。
これらの研究のほとんどは、脳と神経組織の保護効果はロイヤルゼリーの抗酸化能力によるものと考えています。
今までの研究だけを見れば明るい話題ですが、これらを確実なものにするためには人間での研究が必要です。
💡 POINT
複数の動物での研究がロイヤルゼリーは脳機能に効果がある可能性があることを示していますが、人間での研究が欠けています。
涙の分泌物を増やし慢性的なドライアイを治療する可能性
ロイヤルゼリーは口から摂取するとドライアイを治療する可能性があります。
ある動物研究と小規模の人間での研究によると、ロイヤルゼリーを摂取した場合は慢性的なドライアイが改善したことが示されています。この結果は、ハチ由来の物質が、、目の涙腺からの涙液分泌を増加させる可能性があることを示しています(参考1、参考2)。
人間の研究からは悪影響は報告されていません。このため、ロイヤルゼリーは慢性的なドライアイのリスクの低い解決策として役に立ちます。
この非常に少ないサンプルからは、ロイヤルゼリーがほとんどの人のドライアイを治療できるとは断言できないことを覚えておいてください。最終的に、より多くの研究が必要です。
💡 POINT
少量のデータがロイヤルゼリーが、慢性的なドライアイの人々の涙腺分泌物を増やす可能性があると示しています。しかしながら、さらなる研究が必要です。
さまざまな手段でアンチエイジング効果をもたらす可能性
ロイヤルゼリーはいくつかの方法で加齢のプロセスを遅くする可能性があります。
いくつかの研究では、ロイヤルゼリーを与えられたネズミにおいて、寿命を延ばし認知能力を改善しています(参考)。
ロイヤルゼリーは健康と若い見た目の肌を維持するための局所的な肌ケア製品に含まれることもあります。
動物での研究で、ロイヤルゼリーはコラーゲンの生産を増加し、紫外線へさらされたことに関する肌へのダメージを保護するのを助ける可能性があると示されています(参考1、参考2)。
ロイヤルゼリーを口から摂取あるいは局所的に使用した場合のアンチエイジング効果の人間での研究は十分ではないため、より多くの研究が必要です。
💡 POINT
ロイヤルゼリーは加齢に関する共通の症状を減らす可能性がありますが、研究が不足しています。
健康的な免疫システムをサポートする可能性
ロイヤルゼリーは外からのバクテリアやウイルスに対して体が反応する自然の免疫を強化する可能性があります(参考)。
ロイヤルゼリーのMRJPsと脂肪酸が抗バクテリア活動を促進し、感染の発生を抑え、免疫機能をサポートすることが知られています(参考)。
しかしながら、ほとんどの利用可能なデータは動物と試験管での研究に限られています。したがって、より多くの人間での研究がこれらの結果を確認するのに必要です。
💡 POINT
いくつかの動物及び試験管での研究でロイヤルゼリーが抗菌効果をサポートし、この物質が免疫システムを高める可能性があることが示されています。しかしながら、人間での研究が欠けています。
がん治療の副作用を減らす
化学療法や他のがん治療には大きな負の副作用が伴います。その中には心不全、炎症、胃腸(GI)の問題を含みます。
ロイヤルゼリーは特定のがん治療に関連する負の副作用のいくつかを低減する可能性があります。
ある研究では、ロイヤルゼリーを摂取したねずみにおいて、化学療法による心臓のダメージを著しく減らしたことが示されています(参考)。
非常に小規模な人間での研究では、ロイヤルゼリーを局所的に塗布すると、消化管に痛みを伴う潰瘍を引き起こすがん治療の副作用である粘膜炎を予防できる可能性があります(参考)。
明るいデータではありますが、がん治療におけるロイヤルゼリーの役割に関する決定的な結論ではありません。より多くの研究が必要です。
💡 POINT
ロイヤルゼリーはがん治療の特定の副作用を治療する可能性があります。しかしながら、より多くの研究が必要です。
特定の更年期の症状を治療する可能性
ロイヤルゼリーはまた、更年期に関する症状を治療する可能性があります。
更年期障害は、痛み、記憶障害、うつ病、不安などの身体的及び精神的な副作用に関連する循環ホルモンの現象を引き起こします。
ある研究では、閉経後のネズミにおいて、ロイヤルゼリーがうつを減らすのと記憶を改善するのに効果的であるとしています(参考)。
もう1つの研究では閉経後の42人の女性において、毎日800ミリグラムのロイヤルゼリーを12週間摂取すると、背中の痛みと不安を減らすのに効果的でした(参考)。
より多くの研究が必要であることを忘れないでください。
💡 POINT
ロイヤルゼリーは更年期の症状を効果的に治療する可能性がありますが、より多くの研究が必要です。
摂取方法について
研究が比較的限られているため、ロイヤルゼリーの決定的な推奨量は確立されていませんが、上記で紹介したような効果を観測するための研究では1日あたり300~6,000ミリグラムが用いられています。(参考)
食品として食べることはもちろん、サプリメントとして摂取する場合は粉末やカプセルの形態でも利用できます。
ロイヤルゼリーは局所的に肌に塗布することもでき、商業的に入手可能なスキンケア製品にも時々含まれています。
今までロイヤルゼリーを使ったことがない場合は、深刻なアレルギー反応や副作用を避けるため、非常に少ない量から始めるのが良いです。
💡 POINT
ロイヤルゼリーには公式な推奨用量がありません。現在の研究では一日に300~6,000ミリグラムで効果があると示されています。
ロイヤルゼリーの副作用と安全性
おそらくほとんどの人にとって安全ですが、ロイヤルゼリーに危険性がないわけではありません。
ミツバチ由来の製品であるため、過去にハチに刺されたことがあったり、花粉・他の環境アレルゲンにアレルギーがある人は注意が必要です。また、農場で作られたロイヤルゼリーには農薬などに含まれる環境汚染物質が見つかった例もあり、それが原因でアレルギー反応が発生したこともあります。(参考)
稀にですが喘息やアナフィラキシー、接触性皮膚炎などの深刻な副作用が報告されることもあります。(参考)
一般的には安全ですが、ロイヤルゼリーは深刻なアレルギー反応につながる可能性があります。
まとめ
ロイヤルゼリーは何世紀にもわたって古代からの医学的な習慣として使われてきましたが、西洋の医学にかかわる人からはまだ信頼されているとは言い難い状況です。それにもかかわらず心身の健康のために広く用いられています。
現在のところ、ロイヤルゼリーに関連する健康効果の多くは証明されていません。利用可能な研究の大部分が動物や試験管、あるいは非常に小規模な人間での研究に限られています。
また、ロイヤルゼリーを摂取することは100%リスクがないわけではありません。アナフィラキシーなどの深刻な副作用が時々報告されています。
これらの解説がロイヤルゼリーを活用するにあたっての参考になれば幸いです。
また、同じくスーパーフードとして知られているメープルシロップについても解説記事を用意しています。興味がある方はこちらもぜひご覧ください。
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