ベータカロテン(βカロテン)の概要
ベータカロテン(βカロテン)は、体内でビタミンAに変化する抗酸化物質の一つで人の健康に大きな役割を果たします。
フルーツや野菜における赤、黄色、オレンジなどの色素を作る成分にもなっています。
その名前は、ラテン語の人参に由来します。
βカロテンは、1831年にワッケンローダ(H. Wackenroder)という科学者がβカロテンの結晶化に成功したことで発見されました。
ベータカロテン(βカロテン)の5つのメリット
ベータカロテン(βカロテン)のような抗酸化物質は、人の体において遊離ラジカルを抑えるために重要な役割を果たしています。
健康を守る上で、抗酸化物質を摂取することの重要性を示した研究が数多くあります。
βカロテンの摂取には以下の5つ効能につながります。
① 認知機能の改善
18歳年以上にわたって4,000人以上を調査した研究では、長期にわたるβカロテンの摂取は認知機能の低下を遅らせる結果が報告されています。
しかしながら、短期的にはこの効果は確認されませんでした。(参考)
長期にわたりβカロテンを摂取したグループにおいても、βカロテン以外にもほかの要因もあるかもしれません。
② 皮膚の健康を促進する
βカロテンを摂取することは、赤芽球性プロトポルフィリンなどの血液疾患を持つ患者さんなどにおいて、日光への皮膚の過敏性を和らげるかもしれません。(参考)
また、そのほかの光線過敏症を持つ患者さんにおいても有効性があると考えられています。
βカロテンは、光線過敏を助長する薬剤などの毒性を和らげる効果も期待されています。
ほかの研究においても、βカロテンは皮膚への障害を緩和し、皮膚を健康できれいに保つ効果が示されています。
これは、βカロテンの抗酸化作用によるものと考えられていますが、確定的な効能についてはさらなる研究の結果が待たれます。
③ 肺の健康への効果
高用量のβカロテン(15mgのサプリメント)摂取は、喫煙者において肺癌のリスクを上げるかもしれません。
しかし、2,500人を対象にした最近の調査ではフルーツや野菜などの、βカロテンを含むカロテノイドを多く含む食材の摂取は肺癌に対して抑制的な効果を持つと報告をされています。(参考)
④ 網膜変性を減らす
加齢黄斑変性症は視力に影響する病気です。
ある研究によると、高用量のβカロテンをビタミンC、ビタミンE、亜鉛、銅などと一緒に摂取すると、加齢黄斑変性症の進行を25%程度抑制すると報告されています。
しかしながら、高用量のβカロテンは喫煙者においては肺癌リスクの上昇と関連が報告されているので注意が必要です。
このため、後にこの製剤(βカロテン、ビタミンC/E、亜鉛/銅の混合物)からはβカロテンは取り除かれました。
非喫煙者においては、βカロテンの摂取による問題の報告はないものの、食事からのβカロテンの摂取がより安全な方法になるでしょう。
⑤ 癌を防ぐ
全米癌研究所(National Cancer Institute)によると、βカロテンなどのような抗酸化物質は遊離ラジカルによる障害を減らしたり防いだりする効果があるとされています。(参考)
この遊離ラジカルによる障害は発癌と関連しています。
しかしながら、多くの研究で結果は一致していません。
一般的には、植物性化学物質や抗酸化物質が多く含まれるフルーツや野菜を摂取することの方が、βカロテンをサプリメントで摂取するよりも推奨されています。
この結果は特に、すでに癌を持っている患者さんによく当てはまります。
ベータカロテン(βカロテン)の摂取方法
ベータカロテン(βカロテン)は、赤、オレンジ、黄色などの色がついたフルーツや野菜に多く含まれています。
しかしながら、そのほかの深い緑色の葉物の野菜や、緑色の野菜にも抗酸化物質は多く含まれるので避けずに摂取をしましょう。
いくつかの研究で、βカロテンは生のフルーツや野菜よりも、調理されたものの方がより多く含まれていたと報告されています。
また、βカロテンば脂溶性のビタミンAに体内で変換されるので、βカロテンを摂取する際には脂質も一緒に食事として摂取することが吸収を促すために大切です。
βカロテンの含有量が多い食物は以下の通りです。
- 人参
- サツマイモ
- ケールやホウレンソウなどの深緑色の葉物の野菜
- ローメインレタス
- 南瓜
- メロン
- 赤/黄唐辛子
- 杏
- 豆類
- ブロッコリー
βカロテンは以下のようなハーブなどにも含まれます。
- パプリカ
- カイエン
- 唐辛子
- パセリ
- パクチー
- マジョラム
- セージ
- コリアンダー
これらのβカロテンを多く含む食事とハーブを、オリーブオイル、アボカド、ナッツ、種子類などの健康的な脂質と一緒に摂取することは吸収を助けるために有効です。
どのくらいベータカロテン(βカロテン)を摂取すれば良いのか?
ベータカロテン(βカロテン)の推奨される一日摂取量については確立されたデータはまだありません。
しかしながら、メイヨークリニックのサプリメントのガイドラインでは、1日6-15mg程度の摂取が安全面から推奨されています。
これは、10,000-25,000単位のビタミンAに相当し、女性における一日必要量の約70%、男性の一日必要量の約55%に相当します。
子供においては、1日3-6mg程度のβカロテン摂取が妥当とされており、これは5,000-10,000単位のビタミンAに相当し小児の1日必要量の50-83%に相当します。
サプリメントの摂取を考える際には、医師とサプリメントの必要性と摂取のリスクについて話し合いましょう。
サプリメントの量や必要性に影響を与える、元々の内服薬や生活習慣などについて話あう必要があります。
また、注意さえしていればサプリメントを摂取しなくとも通常の食事から十分なβカロテンを摂取することは可能です。
例えば、米国農業省の栄養データによると3.5オンス(99.2g)の生の人参で8.285mgのβカロテンを摂取することができます。
調理されたニンジンでは、3.5オンス(99.2g)あたり8.332mgと、水分の除去によりややβカロテンの濃度が高くなります。
60gの調理されたホウレンソウにおいては、おおよそ7mgのβカロテンが含まれるとされています。
もしもサツマイモが好きならば、100gの茹でたサツマイモにはβカロテン4mgが含まれていることを覚えておきましょう。
ベータカロテン(βカロテン)を過剰に摂取することのリスク
喫煙者や石綿肺(アスベスト肺)などの患者さんにおいてはベータカロテン(βカロテン)のサプリメントは肺癌のリスクを上げるかもしれません。
2008年に行われた、109,394人の被験者を含む過去30年の研究をまとめた報告では、βカロテンのサプリメントが18ヶ月の摂取後に優位に肺癌のリスクを上昇させたとされています。
肺癌のリスクは、βカロテンを含んだマルチビタミンを摂取していた喫煙者で最も高くなっていました。
この研究は、1996年に行われた研究の結果とは対照的です。
1996年の研究では、50mgのβカロテンを1日おきに12年間摂取した、喫煙者/過去の喫煙者を含む22,000人の男性を調査し、明らかな肺癌リスクの上昇はなかったと報告していました。
サプリメントによる高用量のβカロテンは喫煙者では推奨されません。
ただし、食事からβカロテンを摂取することは癌のリスクや心疾患を減少させると考えられるため推奨されています。
まとめ
まとめると、食事から十分なビタミン、ミネラル、抗酸化物質を摂取することは常に大切なことです。
病気を防ぐために、βカロテンを多く含むフルーツや野菜などを多く摂取することが重要です。
もしも必要がある場合には、医師や栄養士と相談して、身体にあったβカロテンの摂取の仕方を検討することが推奨されます。
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