はじめに
マルメロ（セイヨウカリン）は、アジアや地中海のさまざまな地域に自生する古代の果物です。その栽培方法はは、古代ギリシャとローマにまでさかのぼります。そこでは、愛と豊穣の象徴とされていました。今日ではあまり一般的ではありませんが、マルメロはリンゴやナシのような人気のある果物の近縁種です。（参考)
民間療法で何十年も使用されてきましたが、その利点に関する科学的研究はまだ初期段階です。（参考)
ここでは、マルメロの8つの健康上の利点と、普段への食事に取り入れ方についてご紹介していきます。
1.栄養素が豊富
マルメロには食物繊維といくつかの必須ビタミンとミネラルが含まれているため、どの食事に取り入れても栄養価が高くなります。
マルメロ1つ当たり(92g)は、次の通りです。（参考)
- カロリー：52cal
- 脂肪：0g
- タンパク質：0.3ｇ
- 炭水化物：14ｇ
- 食物繊維：1.75ｇ
- ビタミンC：1日当たりの摂取量（DV）15％
- チアミン（ビタミンB1）：DV 1.5％
- ビタミンB6：DV 2％
- 銅：DV 13％
- 鉄：DV 3.6％
- カリウム：DV 4％
- マグネシウム：DV 2％
このように、この果物は中程度の量のビタミンCと銅に加えて、少量のビタミンB群、鉄、カリウム、マグネシウムが含まれています。
特定の化合物が豊富に含まれているわけではありませんが、マルメロは非常に少ないカロリーで幅広い栄養素を含んでいます。
Point：マルメロはカロリーが低く、さまざまな必須ビタミンやミネラルが豊富で、栄養価の高い果物です。
2.強力な抗酸化物質を含む
マルメロに関連する利点の多くは、抗酸化物質の豊富さに由来するかもしれません。
抗酸化物質は代謝ストレスを軽減し、炎症を抑え、不安定な分子であるフリーラジカルによる損傷から細胞を保護してくれます。（参考)
ケルセチンやケンフェロールなどのフラボノールを含むマルメロの一部の抗酸化物質は、炎症を軽減し、心臓病などの慢性疾患から保護してくれることも分かっています。（参考1、参考2)
Point：マルメロは豊富な抗酸化物質を提供し、代謝ストレスや炎症を軽減し、フリーラジカルによる損傷から細胞を保護してくれます。
3.妊娠によるつわりの軽減
妊娠初期の最も一般的な症状はつわり、つまり吐き気と嘔吐です。
いくつかの研究では、マルメロがこれらの症状の緩和に役立つ可能性があることが分かっています。
妊娠中の女性76人を対象とした研究によると、マルメロシロップ1杯（15 ml）は、妊娠による吐き気の軽減に20 mgのビタミンB6よりもはるかに効果的であることが分かりました。（参考)
これらの結果は有望ですが、さらに調査が必要です。
Point：最近の研究でカリンシロップは、妊娠による吐き気と嘔吐の軽減において、ビタミンB6よりもはるかに効果的であることがわかっています。しかしこの内容に関してはまだ研究が必要です。
4.消化器系の健康維持
マルメロは長い間、伝統的および民間療法でさまざまな消化器疾患の治療に使用されてきました。（参考)
最近の研究では、マルメロ抽出物が潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患（IBD）に関連する損傷から腸組織を保護することがわかっています。
潰瘍性大腸炎のラットを対象とした研究では、マルメロ抽出物とジュースを与えられたラットは、対照群と比較して、結腸組織の損傷を大幅に減少させました。（参考)
しかし、この内容に関してはヒトを対象としたさらなる研究が必要です。
Point：ヒトを対象とした研究は必要ですが、動物を対象とした研究では、マルメロがIBDに伴う腸の損傷を防ぐ可能性があることが示唆されています。
5.胃潰瘍を治療
初期の研究では、マルメロの植物化合物が胃潰瘍の予防と治療に役立つ可能性があることが示唆されています。
とある研究では、マルメロ果汁は、胃潰瘍を引き起こす細菌であるピロリ菌の増殖を抑制しました。（参考)
一方、ラットでの研究では、マルメロ抽出物がアルコール誘発胃潰瘍から保護してくれることが分かっています。（参考)
これらの結果は有望ですが、更なる研究が必要です。
Point：動物を対象とした研究では、マルメロが胃潰瘍から胃を保護してくれることが分かっています。しかしこの内容に関しては、ヒトを対象とした更なる研究が必要です。
6.酸逆流症状の軽減
いくつかの研究は、マルメロシロップが酸逆流として知られている胃食道逆流症（GERD）の症状の軽減に役立つ可能性があることを示唆しています。
酸逆流の80人の子供を対象とした7週間の研究では、毎日マルメロシロップを服用した場合、この症状が従来の薬と同じくらい効果的であることがわかりました。（参考)
妊娠中の女性137人を対象とした研究では、食事後に摂取した10錠のマルメロシロップが、酸逆流症状の緩和に従来の薬と同じくらい効果的であることが分かっています。（参考)
さらに、酸逆流の症状がある96人の子供を対象とした4週間の研究では、マルメロ濃縮物を従来の薬物療法と併用することで薬物療法のみを行う場合よりも、嘔吐、食物嫌悪、げっぷ、腹痛などの症状が大幅に改善されたことが分かっています。（参考)
しかしながら、この内容に関しては現在更なる研究が必要です。
Point：一部の研究では、マルメロシロップが酸逆流症状を改善するために使用される伝統的な薬と同じくらいの効果があることが分かっています。
7.特定のアレルギー反応を防ぐ
マルメロは、アレルギー反応の原因となる特定の免疫細胞の活動を抑制することにより、さまざまなアレルギー症状を緩和してくれる可能性があります。（参考)
市販のアレルギー治療薬であるGencydoは、レモンジュースとマルメロエキスを組み合わせたものです。いくつかの小規模な研究では、鼻水や喘息などの軽度のアレルギー反応を予防および治療する効果があることが分かっています。（参考)
さらに、マウスの研究では、マルメロの果実と種子の抽出物が人工的に誘発されたアレルギー性皮膚炎を予防および治療する可能性があることが分かっています。 しかし、この内容がヒトへ同様の効果を及ぼすかどうかは依然として不明です。（参考1、参考2)
一部の専門家は、マルメロ製品は従来のアレルギー治療の安全な代替品であると考えていますが、この内容についてはさらなる研究が必要です。
Point：マルメロの化合物は、炎症を起こした皮膚、鼻水、喘息などの一般的な軽度のアレルギー反応を軽減させてくれる効果があります。しかし、この内容に関してはさらなる研究が必要です。
8.免疫機能のサポート
マルメロは私たちの免疫システムをサポートしてくれる効果があることが分かっています。
いくつかの研究では、大腸菌や黄色ブドウ球菌などの特定の有害な細菌の異常増殖を防ぐのに役立つ抗菌特性があることが明らかになっています。（参考)
さらに、単一のマルメロは1日当たりのビタミンC摂取量の15％を補ってくれます。これは、健康で機能する免疫システムに不可欠です。（参考1、参考2)
同様に食物繊維に対する1日の推奨量の6〜8％を摂取することができます。適切な食物繊維の摂取は、消化管に生息する健康な細菌をサポートします。これは、集合的に腸内マイクロバイオームとして知られています。（参考1、参考2)
健康な腸内マイクロバイオームを維持することで、体内の炎症を軽減し、消化管内の有害な細菌による感染への耐性を向上させることができます。（参考)
Point：マルメロには健康な免疫システムをサポートする2つの栄養素であるビタミンCと食物繊維が含まれています。これらは抗菌特性を持っている可能性があります。
マルメロの食べ方
人気のある他の果物とは異なり、マルメロは生で食べられることはほとんどありません。熟しても生のカリンは非常に硬く、酸味と渋味があります。
そのため、多くの人々はマルメロを調理して食べる傾向があります。
マルメロをスライスした後、水と少量の砂糖を入れた鍋に入れ、果肉が柔らかくなるまで煮ます。バニラ、シナモン、ジンジャー、スターアニスなどのスパイスを追加して試すこともできます。
調理済みのカリンをそのまま食べたり、オートミール、ヨーグルト、ローストポークに使うこともできます。また、フルーツのタルトやパイに加えることもできます。
さらに、マルメロジャムもおすすめです。ただし、ジャムは糖分が多く、食べすぎやすい傾向があるため、糖分に注意する必要があります。
Point：マルメロは果肉が硬く、酸味があるため、調理して食べることをお勧めします。調理済みのカリンは、オートミール、ヨーグルト、またはロースト肉と一緒に使用することができます。
まとめ
マルメロは、独特の風味とさまざまな健康的利点を持った伝統的な果物です。
マルメロは消化器疾患、アレルギー、高血糖の治療に役立つ可能性がありますが、この内容に関してはさらなる研究が必要です。
その他の果物とは異なり、マルメロは生では食べられません。代わりに、調理してジャムにしたりするのにとてもお勧めです。
興味のある方は、ぜひマルメロを試してみてください。
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