はじめに
アミノ酸は体の中の組織や臓器を作るたんぱく質です。
この重要な機能に加え、いくつかのアミノ酸には他の特別な役割があります。
メチオニンはアミノ酸の一種で、体の中でいくつかの重要な分子を作り出します。これらの分子は体の細胞の正常な機能に必要不可欠です。
それが作り出す重要な分子のために、メチオニンの摂取を増やすことを推奨する人もいます。しかしながら、その負の副作用の可能性から摂取を制限することを推奨する人もいます。
この記事ではメチオニンの重要性とあなたが食事の中の量を気にする必要があるかどうかについて議論します。摂取源と潜在的な副作用についても議論します。
メチオニンとは?
メチオニンは多くのタンパク質に見られるアミノ酸の一種で、食べ物の中のタンパク質や、体の中の組織や臓器に含まれています。
たんぱく質の構成要素であるのに加え、メチオニンには他にもいくつかのユニークな機能があります。
その中の1つが硫黄を含む重要な分子に変換されることができることです(参考)。
硫黄を含む分子にはいくつもの機能があり、その中には組織の保護、DNAの改変、細胞の正しい機能の維持が含まれます(参考1、参考2)。
これらの重要な分子は硫黄を含むアミノ酸から作られなくてはなりません。体の中のタンパク質をつくるアミノ酸の中で、メチオニンとシステインだけが硫黄を含みます。
体はアミノ酸であるシステインを自分で作り出すことができますが、メチオニンは食事から摂取しなくてはいけません(参考)。
加えて、メチオニンは、古いたんぱく質が分解されるたびに繰り返し起こる、新しいたんぱく質を細胞内で作り出すプロセスを開始するという重要な役割を持っています(参考)。
たとえば、このアミノ酸は、運動で筋肉にダメージを受けた後、筋肉に新しいたんぱく質を作り出すプロセスを開始します(参考1、参考2)。
Point: メチオニンはユニークなアミノ酸です。硫黄を含み、硫黄を含んだ他の分子を体の中で作り出します。また、新しいたんぱく質を細胞で生成するのを開始する処理にかかわっています。
正常な細胞の機能に必要な分子を作り出すことができる
メチオニンの体内での主要な役割のひとつが、他の重要な分子を作り出すことができるという点です。
メチオニンは、他の硫黄を含むアミノ酸であり体のタンパク質をつくるのに使われる、システインを作り出すのにかかわっています(参考1、参考2)。
システインは、次に、たんぱく質やグルタチオン、タウリンといったいろいろな分子を作り出します(参考)。
グルタチオンは時に、その体を守るという重要な役割から、「抗酸化物質の最高位」とも呼ばれます(参考1、参考2)。
グルタチオンはまた、体内の栄養の代謝や、DNAやたんぱく質の生成の役割も担っています(参考)。
タウリンは細胞の健康や正常な機能を維持するのを助ける多くの機能を持っています(参考)。
メチオニンが変換される最も重要な分子の1つがS-アデノシルメチオニン(SAM)です(参考)。
SAMは、その一部を他の分子に移すことで、DNAやたんぱく質を含む、多くの異なる化学反応にかかわっています(参考1、参考2)。
SAMはまた、細胞のエネルギーに重要な分子である、クレアチンの製造にも使われます(参考1、参考2)。
総合して、メチオニンは、それが変換されることができる分子たちのために、直接あるいは間接的に体の中の重要なプロセスにかかわっています。
Point: メチオニンは、重要な機能を持つ、いくつかの硫黄を含む分子に変換することができます。その中にはグルタチオン、タウリン、SAM、クレアチンが含まれます。これらの分子は体内の細胞の正常な機能に必要不可欠です。
DNAをメチル化する役割を担う
あなたのDNAにはあなたをあなたとして作るための情報が含まれています。
この情報の中の多くは人生を通して同じに保たれますが、環境的な要素がDNAの一部を変える可能性があります。
SAMと呼ばれる分子に変換することができることがメチオニンの最も興味深い役割の1つです。SAMはDNAにメチル基(炭素原子とそれに結合した水素原子)を追加することでDNAを変えることができます(参考1、参考2)。
食事に含まれるメチオニンの量がこのプロセスが起こる頻度に影響を与える可能性がありますが、これには多くの答えのない疑問があります。
食事の中のメチオニンを増やすことで、どれだけの頻度でSAMによりDNAが変わるかについては、上がる可能性も下がる可能性もあります(参考)。
それに加えて、この変化が起こると、それが有益であることも有害であることもあります(参考)。
たとえば、いくつかの研究でDNAにメチル基を加える栄養が豊富な食事は結腸と直腸のがんのリスクを下げる可能性があることが示されています(参考)。
しかしながら、他の研究では、おそらくより多くのメチル基をDNAに加えることで、メチオニンを多く摂取すると統合失調症のような症状を悪化させることが示されています(参考1、参考2)。
Point: メチオニンによって作り出される分子のひとつであるSAMはDNAを変更します。食事に含まれるメチオニンがどれだけこのプロセスに影響を与えるか完全にはわかっていませんが、あるケースでは有益で、あるケースでは有害である可能性があります。
メチオニンの少ない食事は動物の寿命を延ばす
メチオニンには体内で重要な役割がありますが、いくつかの研究でこのアミノ酸の少ない食事の利益について示されています。
一部のがん細胞は成長するために食べ物であるメチオニンに依存しています。これらのケースの場合、食事を制限することでがん細胞を飢えさせるのに有益である可能性があります(参考)。
植物からのタンパク質はしばしば動物性のたんぱく質よりもメチオニンが低いため、研究者によっては植物を基本とする食事はいくつかのがんと闘う道具である可能性があると信じています(参考1、参考2)。
それに加えて、いくつかの動物研究でメチオニンを減らすと寿命を延ばし健康を改善する可能性があるとしています(参考1、参考2、参考3)。
ある研究ではメチオニンが少ない食事をしたネズミで寿命が40%以上長くなりました(参考)。
この長寿はストレス耐性と代謝の改善に加えて体の細胞を再生成する能力の維持によるものである可能性があります(参考1、参考2)。
研究者によってはメチオニンが少ない食事は実際にネズミの加齢の速度を落とすと結論付けています(参考)。
この利益が人間にも適用されるかは不明ですが、試験管での研究では人間の細胞においてメチオニンの量が少ないことの利益が示されています(参考1、参考2)。
しかしながら、結論を出す前に人間での研究が必要です。
Point: 動物において、食事のメチオニンの量を減らすことで加齢の速度を落とし寿命を延ばしました。いくつかの研究で人間の細胞においてメチオニンの量を減らすことの利益が示されていますが、生きている人間での研究が必要です。
食べ物におけるメチオニンの摂取源
すべてのタンパク質を含む食事にはいくらかのメチオニンが事実上含まれていますが、その量は大きく異なります。卵、魚、いくつかの肉にはこのアミノ酸が多く含まれています(参考)。
卵の白身のアミノ酸の約8%は硫黄を含むアミノ酸(メチオニンとシステイン)であると見積もられています(参考)。
この値は鶏肉と牛肉で5%、乳製品で4%です。植物性のタンパク質は通常さらにこれらのアミノ酸の量が少ないです。
いくつかの研究で硫黄を含むアミノ酸(メチオニンとシステイン)の異なる食事での合計した量について調べています(参考)。
この発見から研究者たちはメチオニンの食事に含まれる量と血中濃度には直接的な関係はないと結論付けています。
しかしながら、これらの研究でビーガンはメチオニンの摂取量も血中濃度も低いことがわかっています(参考1、参考2)。
Point: 動物性のたんぱく質は植物性のたんぱく質よりメチオニンを多く含んでいます。植物を基本とする食事をすると硫黄を含むアミノ酸の摂取が少なくなるということになりますが、血中のメチオニン濃度は高かったり低かったりします。
メチオニンの摂取量、毒性、副作用
研究者たちは硫黄を含むアミノ酸(メチオニンとシステイン)の日々の推奨摂取量を決めていますが、摂取量が多すぎるときの副作用についても分析されています。
推奨摂取量
メチオニンとシステインを合計した一日の推奨摂取量は大人で体重1kgあたり19mgであり、68kgの体重の人では1.3グラムに相当します。
しかしながら、一部の研究者たちは推奨摂取量の設定に使用された研究の制限のため、この量の2倍の摂取を推奨しています(参考)。
老人はしばしばメチオニンの摂取が少なく、研究によると一日に2~3グラムの摂取が必要とのことです(参考1、参考2)。
特定のグループはメチオニンの摂取量を増やすと利益を受けるという事実がありますが、多くの食事ではメチオニンとシステインを合計すると一日に2グラムを超えます。
ビーガン、ベジタリアン、伝統的、および高タンパク質の食事含む様々な食事ではこれらのアミノ酸が一日当たり2.3~6.8グラム含まれていると見積もられています(参考)。
ホモシステインの影響
おそらく、メチオニンを大量に摂取することに関連する最大の懸念は、このアミノ酸が生産する分子の1つのためです。
メチオニンは、様々な観点で心臓病と関連のあるアミノ酸である、ホモシステインに変換されることができます(参考1、参考2)。
メチオニンを大量に摂取するとホモシステインの増加につながる可能性がありますが、人によってはこのプロセスに影響をより受けやすい人もいます(参考)。
興味深いことに、メチオニンを大量に摂取することの潜在的な危険性はメチオニンそのものよりもホモシステインによるものである可能性があると研究者は示しています(参考)。
しかしながら、ホモシステインのレベルを変える可能性がある要素には他にもいろいろあります。
たとえば、メチオニンの摂取量が低いにもかかわらず、ビーガンとベジタリアンはそうでない人よりも、ビタミンB12の摂取量が低いために、より高いホモシステインレベルを持っています(参考)。
他の研究では高タンパク質、高メチオニンの食事が、6か月たっても、低タンパク質 低メチオニンの食事に比べて、ホモシステインを増加させなかったとしています(参考)。
それに加え、健康でビタミン不足でない大人においては、メチオニンの摂取量を2倍までに変えてもホモシステインレベルに影響がみられませんでした(参考)。
副作用
メチオニンに対する体の反応を評価するため、研究者たちはこのアミノ酸を1回に大量に投与してその影響を観察しました。
この摂取量は推奨摂取量よりもはるかに多く、体重1kg当たり100㎎であり、体重68kgの人は6.8グラムです(参考)。
この種の試験を6000回以上行い、主に軽微な副作用がありました。この軽微な副作用にはめまい、眠気、血圧の変化があります(参考)。
このテストの中で最も主要な負の出来事が起き、それは高血圧であるが他は健康な人の死でした(参考)。
しかしながら、推奨摂取量の70倍の偶発的な過剰摂取が合併症を引き起こしたものとみられます(参考)。
総合して、メチオニンは、食事を通しては事実上摂取できないような極端な大量摂取をのぞいて、健康な人間には特に毒性はないようです。
メチオニンはホモシステインの製造にかかわってはいますが、一般的な摂取量であれば心臓の健康に危険があるというエビデンスはありません(参考)。
Point: 多くの種類の食事を行っている人々はしばしばメチオニンの最小推奨摂取量を超えます。多く摂取した際の副作用は軽微ですが、極端に大量に摂取した場合は危険となる可能性があります。
まとめ
メチオニンはユニークな硫黄を含むアミノ酸であり、たんぱく質を作ったり多くの分子を体内で作ったりします。
この中には抗酸化物質であるグルタチオンや、DNAや他の分子を改変するのに使われるSAMの分子が含まれます。
メチオニンは多くのタンパク質を含む食事に見られ、動物性たんぱく質の方がよく植物性たんぱく質よりも多く含んでいます。メチオニンの少ない食事は動物で寿命を延ばすという結果がありますが、人間にとっての重要性はまだ明らかではありません。
多くの種類の食事を摂取している人々は一般的にメチオニンの推奨摂取量を満たしていますが、老人は摂取量を増やすことで利益を受けるかもしれません。
大量に摂取した場合の副作用は一般的には軽微ですが、通常の食事で摂取できる量を超える極端な量を摂取した場合は危険となる可能性があります。
健康な人間における現在までの研究に基づくと、メチオニンの食事における摂取量を特に制限したり増やしたりする必要はありません。
メチオニンをサプリで試してみたい方は、「NOW Foods L-メチオニン」から使用してみると良いでしょう。ただし、重度の症状など適切な治療が必要とされる場合はサプリメントに頼らず、医療機関で診断を受けるようにしましょう。
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