はじめに
ポリフェノールは、私たちにさまざまな健康上の利点がある植物性化合物の1種です。
ポリフェノールを定期的に摂取することで、消化と脳の健康が促され、心臓病や2型糖尿病、そして特定のがんなどを防いでくれると考えられています。
赤ワイン、ダークチョコレート、紅茶、およびベリーは、最もよく知られているポリフェノールが多く含まれている食品です。しかし、他の多くの食品でもポリフェノールは多く含まれています。
この記事では、ポリフェノールについて知っておくと便利な点やポリフェノールが含まれている食品などについて説明していきます。
ポリフェノールとは
ポリフェノールは、果物、野菜、ハーブ、スパイス、お茶、ダークチョコレート、ワインなどの植物性食品に含まれる化合物です。
これらは抗酸化剤として機能することができます。つまり細胞にダメージを与え、がん、糖尿病、心臓病などのリスクを高める有害なフリーラジカルを中和させます。(参考)
ポリフェノールは、多くの慢性疾患の根本的な原因であると考えられている炎症を軽減させることが分かっています。(参考1、参考2)
ポリフェノールの種類
現在8000種類以上のポリフェノールが確認されています。これらはさらに4つの主要のグループに分類できます。(参考1、参考2)
- フラボノイド:これは全体のポリフェノールの約60%を占めます。例として、ケルセチン、ケンフェロール、カテキン、アントシアニンがあり、これらはリンゴ、タマネギ、ダークチョコレート、赤キャベツなどの食品に含まれています。
- フェノール酸:このグループは、ポリフェノールの約30%を占めています。これにはスチルベンとリグナンが含まれており、これらは主に果物、野菜、全粒穀物、および種子に含まれています。
- ポリフェノールアミド:このグループには、唐辛子のカプサイシノイドとオート麦のアベナントラミドが含まれます。
- その他のポリフェノール:このグループには、赤ワインのレスベラトロール、ベリーのエラグ酸、ウコンのクルクミン、亜麻の種子、ゴマ、全粒穀物のリグナンが含まれます。
食品中のポリフェノールの量と種類は、熟度、およびそれがどのように栽培、輸送、保管されたかによって変わってきます。
またポリフェノールを含むサプリメントも使用することができます。ただし、サプリメントの場合、ポリフェノールを多く含む食品よりもその効果があまり感じられない場合があります。(参考)
Point:ポリフェノールは、抗酸化特性を持つ有益な植物性化合物であり、私たちの健康を維持し、さまざまな病気から私たちを保護してくれます。ポリフェノールは、フラボノイド、フェノール酸、ポリフェノールアミド、およびその他のポリフェノールに分けることができます。
ポリフェノールの健康上のメリット
ポリフェノールは、健康上の利点がたくさんあります。
血糖値を下げる
ポリフェノールは血糖値を下げるのに役立ち、2型糖尿病のリスクを低下させてくれます。
これは、ポリフェノールがでんぷんの単糖への分解を防ぎ、食後の血糖値スパイク(短時間に血糖値が急上昇する)のを抑えてくれるためです。(参考)
これらの化合物は、血流から糖を細胞に送り込み、血糖値を安定に保つために必要なホルモンであるインスリンの分泌を刺激するのにも役立ちます(参考)
さまざまな研究で、ポリフェノールを豊富に含む食事を行った場合、ポリフェノールが空腹時の血糖値の低下、耐糖能の向上、インスリン感受性の増加に関連していることが分かりました。これらはすべて2型糖尿病のリスクを低下させる重要なポイントです。(参考)
ある研究では、ポリフェノールが豊富な食品を最も多く摂取している人は、少ない量を摂取している人と比較して、2〜4年で2型糖尿病を発症するリスクが最大57%低くなりました。(参考)
ポリフェノールの中で、アントシアニンが最も強力な抗糖尿病効果をもたらす可能性があることが研究により分かっています。通常、ベリー、カラント、ブドウなどの赤、紫、青の食品に含まれています。(参考1、参考2)
血糖値のコントロールに関しては、『血糖値を下げるためにできる11の対策|効果的な成分や食材、ライフスタイルも紹介』でより詳しく解説をしています。
心臓病のリスクを下げる
普段の食事にポリフェノールを加えると、心臓の健康をサポートしてくれます。
専門家は、これは主に慢性炎症、心臓病の危険因子を減らすのに役立つポリフェノールの抗酸化特性によるもの考えています。(参考1、参考2、参考3)
最近実施された2件の研究では、ポリフェノールサプリメントを血圧とLDL(悪玉)コレステロール値の低下、およびHDL(善玉)コレステロールの上昇に関連していることが分かっています。(参考1、参考2)
別の研究では、リグナンの摂取が多い場合、エンテロラクトンが高い人の心臓病による死亡のリスクが45%低いことがわかりました。リグナンは通常、亜麻の種子や全粒穀物に含まれるポリフェノールの一種です。(参考)
血栓を防ぐ
ポリフェノールは、血栓を発症するリスクを軽減させてくれる可能性があります。
血流中を循環している血小板が凝集し始めると、血栓が形成されます。このプロセスは血小板凝集として知られており、過剰な出血を防ぐのに役立ちます。
しかし、過剰な血小板凝集は血栓を引き起こす可能性があり、深部静脈血栓症、脳卒中、肺塞栓症などの健康への悪影響をもたらす可能性があります。(参考)
動物を使用した研究によると、ポリフェノールは血小板凝集の減少に役立ち、それにより血栓の形成を防いでくれていました。(参考1、参考2、参考3)
がんを予防する
ある研究では植物性食品を豊富に含む食事は、がんのリスクの有無に関わっており、多くの専門家は、ポリフェノールがこれらの理由の一部であると考えています。(参考1、参考2、参考3)
ポリフェノールには強力な抗酸化作用と抗炎症作用があり、どちらもがん予防に有益です。(参考)
その他の研究の結果では、ポリフェノールがさまざまながん細胞の成長と発達を抑えてくれる可能性があることが分かっています。(参考1、参考2)
ヒトでの研究の場合、ポリフェノール摂取量の高いと、乳がんおよび前立腺がんのリスク低下と関連付ける研究もあれば、効果が認められなかった研究もあります。そのため、この結論を確立するためにはさらなる研究が必要です。(参考)
健康的な消化を促進する
ポリフェノールは有益な腸内細菌の増殖を促進すると同時に、有害な腸内細菌を避けていくため、この作用が消化に役立つ場合があります。(参考1、参考2)
1つの例では、ポリフェノールが豊富に含まれているお茶を飲むと、有益なビフィズス菌の増殖を促進することが分かっています。(参考)
同様に、緑茶ポリフェノールは、クロストリディオイデス・ディフィシル(腸管内に少数生息している細菌)、大腸菌、サルモネラなどの有害なバクテリアを撃退し、消化性潰瘍疾患(PUD)および炎症性腸疾患(IBD)の症状を改善する可能性があります。(参考1、参考2)
さらに新たな研究では、ポリフェノールがプロバイオティクスの成長と生存に役立つ可能性があることを示唆しています。これらは、特定の発酵食品で発生する有益な細菌であり、サプリメントとしても摂取できます。ただし、これに関しては現在さらなる研究が必要です。(参考)
腸の活動を促進する効果については、『乳酸菌ダイエットは効果がある?|体の中から変える腸活の方法』でも解説をしています。
脳機能を促進する
ポリフェノールが豊富な食品は、集中力と記憶力を高めてくれるかもしれません。
ある研究では、ポリフェノールが豊富なグレープジュースを飲むと、わずか12週間で軽度の精神障害のある高齢者の記憶力が大幅に向上したと報告されています。( 参考)
ほかの研究では、ココアフラバノールが脳への血流を改善し、作業記憶と注意意識の改善に関連していることが分かっています。(参考1、参考2、参考3、参考4)
同様に、ポリフェノールが豊富に含まれているイチョウの葉は、記憶力や学習能力、集中力を高めてくれるようです。また、認知症の方の脳活動と短期記憶の改善にも関連しています。(参考)
脳機能に関しては『脳機能はサプリで改善可能か?記憶力や集中力を高めるかもしれない10の食品』でもより詳しく解説しています。
Point:ポリフェノールは、血栓の予防、血糖値の低下、心臓病リスクの低下に役立ちます。 さらに、脳機能を促進、消化機能を改善し、がん予防にも効果があるようです。しかし、これらに関してはより多くの研究が必要です。
ポリフェノールが豊富な食品
紅茶、ダークチョコレート、赤ワイン、ベリーはポリフェノールが最もよく含まれている食品とされていますが、他にも多くの食品に有益な化合物がたくさん含まれています。
ポリフェノールが最も豊富な75種類の食品をカテゴリ別にご紹介します。(参考)
フルーツ
- りんご
- あんず
- ブラックチョークベリー
- 黒/赤スグリ
- ブラックエルダーベリー
- 黒ぶどう
- ブラックベリー
- ブルーベリー
- さくらんぼ
- ぶどう
- グレープフルーツ
- レモン
- ネクタリン
- 桃
- 洋ナシ
- ザクロ
- プラム
- ラズベリー
- イチゴ
野菜
- アーティチョーク
- アスパラガス
- ブロッコリ
- 人参
- エンダイブ
- ポテト
- 赤いチコリ
- レッドレタス
- 赤と黄色の玉ねぎ
- ほうれん草
- エシャロット
マメ科植物
- 黒豆
- テンペ
- 豆腐
- 豆もやし
- 大豆肉
- 豆乳
- 大豆ヨーグルト
- 白い豆
ナッツと種
- アーモンド
- 栗
- ヘーゼルナッツ
- 亜麻の種子
- ピーカン
- クルミ
穀類
- オーツ麦
- ライ麦
- 全粒小麦
スパイス
- キャラウェイ
- セロリシード
- シナモン
- クローブ
- クミン
- カレー粉
- ドライバジル
- 乾燥マージョラム
- 乾燥パセリ
- 乾燥ペパーミント
- 乾燥スペアミント
- レモンバーベナ
- メキシコオレガノ
- ローズマリー
- セージ
- スターアニス
- タイム
その他
- 紅茶
- ケーパー
- ココアパウダー
- コーヒー
- ダークチョコレート
- ショウガ
- 緑茶
- オリーブとオリーブオイル
- 菜種油
- 赤ワイン
- 酢
普段の食事にこれらの食品を取り入れると、多種多様なポリフェノールを摂取することができます。
Point:多くの植物性食品は、ポリフェノールが豊富に含まれています。食事にこういったさまざまな食品を取り入れることで、素晴らしい栄養素を取り入れることができます。
ポリフェノールサプリメントについて
サプリメントには、一定量のポリフェノールを手軽に摂取することができるという便利さがあります。しかし、これには欠点があることも知っておく必要があります。
第一にサプリメントは、ポリフェノールが豊富な食品と同じ効果を発揮するかどうかわかっていません。通常、ポリフェノールサプリメントには、ポリフェノール以外の有益な植物性化合物が一切含まれていません。
さらにポリフェノールは、食品に自然に含まれているその他の栄養素と相互作用するときに最もよく機能するようです。そのため、サプリメントに含まれるポリフェノールなどの単離ポリフェノールが、食品に含まれるポリフェノールと同じくらい効果的かどうかは現在不明です。(参考1、参考2)
そして、現在ポリフェノールのサプリメントは規制されておらず、多くの場合、食品の100倍以上の用量が含まれています。また安全で効果的な摂取量を決めるには、さらなる研究が必要であり、この大量の摂取が私たちに有益であるかどうかは不明です。(参考1、参考2)
Point:ポリフェノールサプリメントは、ポリフェノールが豊富な食品と同じ効果があるかどうかは現在明確ではありません。また、有効で安全な摂取量についての規制は現在ありません。
ポリフェノールの潜在的なリスクと副作用
ポリフェノールが豊富な食品は、ほとんどの方にとって安全です。
しかし、サプリメントについては同じことが言えません。サプリメントは、普段の食事で摂取できるポリフェノールよりもたくさんの量を摂取することができるからです。(参考)
動物を使用したとある実験では、高用量のポリフェノールのサプリメントが腎臓の損傷や、腫瘍、甲状腺ホルモンに悪影響を与えることがわかっています。そのためヒトの場合、脳卒中や早死のリスクが増加する可能性があります。(参考1、参考2)
ポリフェノールを豊富に含むサプリメントの中には、栄養吸収や薬と相互作用するものがあります。たとえば、鉄、チアミン、または葉酸などの吸収を妨げ、これらの機能を低下させる可能性があります。(参考1、参考2、参考3)
栄養不足と診断された場合、または薬を服用している場合は、ポリフェノールのサプリメントを服用する前に医療関係者に相談するのが最善です。
さらに、豆類やエンドウ豆などのポリフェノールを多く含む食品には、レクチンが豊富に含まれている場合があります。レクチンを大量に摂取すると、腸内ガス、腹部膨満、消化不良などの不快な消化症状を引き起こす可能性があります。(参考)
こういった症状がでる場合は、マメ科植物を食べる前に水にしっかり浸したり、発芽をさせてください。これにより、レクチンの含有量を最大50%削減することができます。(参考1、参考2)
Point:ポリフェノールを多く含む食品は、ほとんどの人にとって安全であると考えられていますが、サプリメントの場合、腸内ガス、膨満感、消化不良といった副作用を引き起こす可能性があります。ポリフェノールの豊富なマメ科植物を食べる場合、腸内ガス、膨満感、消化不良などの懸念があるため、水にしっかり浸したり、発芽させてレクチンの影響を緩和させてください。
まとめ
ポリフェノールは、フラボノイド、フェノール酸、ポリフェノールアミド、およびその他のポリフェノールに分類することができる、植物性食品の有益な化合物です。
消化、脳機能、血糖値を改善するだけでなく、血栓、心臓病、特定のがんから私たちを保護してくれます。
効果的で安全なポリフェノールサプリメントの摂取量を確立するには、現在更なる研究が必要です。
そのため、当面は健康的な化合物の摂取を増やすためには、サプリメントではなく食物からの摂取が最善でしょう。
手軽にポリフェノールを摂取したい場合には、「伊右衛門 特茶」などのお茶を利用するのがオススメです。
ただし、重度の症状など適切な治療が必要とされる場合はサプリメントに頼らず、医療機関で診断を受けるようにしましょう。
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