L-カルニチンとは?
🙆♂️ 期待されている効果
- 減量作用
- 運動パフォーマンスの向上
🙅♀️ 想定される副作用
- 吐き気、胃部不快感
- 体臭
L-カルニチンは、人の体の中でも産生されるアミノ酸由来の成分で、しばしばサプリメントとして摂取されています。
体重減量の目的に使用されたり、筋トレなどの運動パフォーマンス向上が期待されて使用されたりします。
しかし、これらの効果が必ずしも科学データに裏付けされているわけではありません。
この記事では、L-カルニチンサプリメントに期待される効果やその根拠、副作用や飲むタイミングなどについて解説していきます。
期待される効果・効能
国内でL-カルニチンに特に期待されている効果はやはり減量効果や運動パフォーマンスの向上でしょうか?
これ以外の効果として、脳機能の向上、精子や卵子の健康に繋がる可能性なども探られていますが、このあたりはあまり日本では知られていないかもしれません。
それぞれの効果がどの程度信用できるものなのかについて詳しく見ていきましょう。
体重の減少
まずはL-カルニチンがなぜ減量効果を期待されているかを理解するために、L-カルニチンの体内での役割について書きたいと思います。
L-カルニチンの体内での役割
L-カルニチンは、脂肪酸を細胞内のミトコンドリアへ運搬するなど、エネルギーの産生において重要な役割を果たしています。(参考1, 参考2, 参考3)
細胞内でミトコンドリアは、脂肪酸を燃焼させてエネルギーへ変化させる、エンジンのような役割を果たしてます。
体内ではリシン・メチオニンなどのアミノ酸からL-カルニチンが産生されます。おおよそ98%のL-カルニチンは人の筋肉の中に貯蓄されており、残りのごくわずかな量が肝臓や血中に存在しています。(参考1, 参考2)
人の体の中で十分な量のL-カルニチンを作るためには、大量のビタミンCも必要です。(参考)
体内で作られるL-カルニチンに加えて、肉や魚などの動物性の食材を摂取することでも少量ながらL-カルニチンを摂取することができます。(参考)
ビーガンの方や、特定の遺伝性疾患などを持つ方の場合には、L-カルニチンの摂取や体内での産生が不十分になることがあります。こういった場合を考慮すると、L-カルニチンは条件付きの必須栄養素と言えるでしょう。
L-カルニチンは、疾患や健康な老化現象に重要なミトコンドリアの機能の改善にも影響していると考えられています。(参考1, 参考2, 参考3)
また、余談ですが、新しい調査では、心疾患や脳疾患などに使用できる、L-カルニチンとは他のタイプ(ex. L-カルニチンL-酒石酸塩 etc)のカルニチンの効能に注目が集まっています。(参考1, 参考2)
体重減量作用は本当?
上記の説明を見て理論的考えれば、L-カルニチンを体重減量のために使用することは一見理にかなっています。L-カルニチンが脂肪酸を細胞内に運搬して燃焼を促し、エネルギー産生を増やすので、体内の脂肪が減って体重が減ると考えるかもしれません。
しかし、人の体はとても複雑で、人と動物を対象にした研究の結果は今のところ一貫していません。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)
38名の女性が8週間に渡って週4回運動を行った研究 では、L-カルニチンを摂取した人と、そうでない人の間で体重減量に有意な差は認められませんでした。さらに、この被験者のうちでL-カルニチンを摂取していた5名では嘔気や下痢などの症状が認められました。
上記とは別の人を対象にした研究では、90分のエアロバイク運動とL-カルニチンの摂取の関連を調査しました。4週間のL-カルニチンを摂取しながらの運動でも、特に脂肪の燃焼効果の改善は認められなかったとされています。
しかし、9つの肥満/高齢の成人を対象にした先行研究をまとめた報告では、L-カルニチンの摂取で平均1.3kg程度多く、体重減量の効果が認められたとされています。(参考)
L-カルニチンの効果については、前述したように確証がまだ持ちにくい段階で、より多くの研究が必要でしょう。特にもっと若い年齢層の、活動度の高い人に対してもより調査が必要だと思います。
唯一この効果に希望の持てた研究報告については肥満/高齢の成人を対象にしたものであったことから、肥満もしくは高齢の方にとっては、運動食事療法に加えてL-カルニチンを摂取することで、体重減量に対して多少の効果があるかもしれません。
💡 Point
細胞レベルではL-カルニチンが脂肪燃焼を促す可能性が示唆されていますが、人の体においては、その効果はあるとしてもその効果はかなり小さいと考えられています。
また実際に、L-カルニチンのダイエット効果については、国内の公的な制度で認められたことはまだありません。
逆にダイエットに関する効果が機能性表示食品として受理された製品では、「大人のカロリミット」などが有名でしょう。alloehではこの製品についても「大人のカロリミットの効果・副作用は?普通のカロリミットとの違いを解説!」という記事で解説しているため、L-カルニチンの代わりになるものを探している方はぜひご覧ください。
運動パフォーマンス向上
L-カルニチンの運動に対する効果についても、研究データは今のところ一貫していません。しかし、いくつかの研究では高用量の長期投与で、軽度の効能が認められたとされています。(参考1, 参考2, 参考3)
運動パフォーマンスへのL-カルニチンの効能は間接的で、効果が発言するまでに数週間から数ヶ月かかると思われています。これは、カフェインやクレアチンなどの、直接運動パフォーマンスに影響する他のサプリメントとは異なります。
L-カルニチンの可能性のある効能:
- 回復:運動後の回復を早める(参考1, 参考2)
- 筋肉への酸素供給:筋肉への酸素供給を高める(参考)
- 持久力:血管増加作用のある一酸化窒素の産生を増やし、運動による不快感や疲労を軽減につながるかもしれません(参考)
- 筋肉痛:運動後の筋肉痛の軽減(参考)
- 赤血球の産生:人の体内で酸素を運搬する赤血球を増加させる(参考1, 参考2)
運動パフォーマンスの向上を短期的に求めるのであれば、カフェインやクレアチン、βアラニンなどの方が期待できるでしょう。これらの成分について詳しく知りたい方は「運動パフォーマンスを上げるサプリとは?効果のある成分を解説」という記事も公開しているので、興味があればご覧ください。
精子や卵子の健康
妊活をされている女性・男性にも、L-カルニチンは良い選択肢になるかもしれません。
不妊治療を専門にしているクリニックのコラムによると、L-カルニチンのミトコンドリアに対する働きかけによって、精子の運動性向上・卵子の質の向上が近年報告されている、と述べられています。
この効果がどれほど確かなものかは未知数ですが、不妊治療をされている方々についてはL-カルニチンに限らず、主治医に栄養面での指導もお願いしてみてもいいかもしれません。
その他の効果
脳機能に対する効果
L-カルニチンは脳の機能に対しても有効かもしれません。
いくつかの動物を対象とした研究では、アセチル体であるアセチルL-カルニチン(ALCAR)が加齢に関連した認知機能の低下を防ぎ、学習能力を示す指標を改善したとしています。(参考1, 参考2)
人を対象とした研究でも、毎日アセチルL-カルニチン(ALCAR)を摂取することで、脳機能の低下を改善し、アルツハイマー型認知症やその他の脳疾患の症状改善につながったとされています。(参考1, 参考2, 参考3)
アセチルL-カルニチン(ALCAR)の投与は、同様の有効性がアルツハイマー型認知症以外の脳疾患がある高齢の患者さんでも認められたと言われています。(参考1, 参考2, 参考3)
特定のケースでは、アセチルL-カルニチン(ALCAR)の投与が脳細胞へのダメージを軽減するかもしれません。
ある研究では、90日間にわたりアルコール依存症のある被験者に1日2gのアセチルL-カルニチン(ALCAR)を投与したところ、脳の様々な機能の改善を認めたと言います。(参考)
ただし、健康な人における長期使用の効果についてはまだ分かっていないことが多く、今後の研究による調査が待たれます。
心臓の健康維持
いくつかの研究では、心臓疾患に影響する、血圧の低下や炎症作用の軽減などの作用が報告されています。(参考1, 参考2)
ある研究でも、1日2gのアセチルL-カルニチンを摂取した人において、心臓の健康や疾患リスクに影響する収縮期血圧が10(mmHg)程度低下したとされています。(参考1, 参考2)
L-カルニチンは、冠動脈疾患や慢性心不全などの重度の心疾患のある患者さんにおいても、症状などの改善効果が報告されています。(参考1, 参考2)
12ヶ月にわたり、心疾患のある患者さんにL-カルニチンサプリメントを投与した研究では、心不全の発症と死亡率の低下を認めたとされています。(参考)
2型糖尿病
L-カルニチンは2型糖尿病の症状と、関連する危険因子を減少させるかもしれません。(参考1, 参考2, 参考3)
ある研究では、糖尿病薬を内服している2型糖尿病の患者さんにおいて、カルニチンサプリメントの摂取が、プラセボに比較して顕著に血糖を低下させたと言います。(参考)
また、カルニチンはAMPKと呼ばれる体内の炭水化物の代謝を司る酵素を増加させ、糖尿病を改善させるかもしれません。(参考)
ただしまだ研究結果は乏しく、更なる研究が期待されます。
安全性と副作用
ほとんどの人にとってL-カルニチンは1日2g以下であれば、比較的安全で特に副作用なども起きないと言われています。ある研究では、1日3gのL-カルニチンを21日間摂取しても、特に副作用などは認めなかったと言います。(参考)
しかし、吐き気、胃部不快感などの軽度の副作用が認められたケースもありました。(参考1, 参考2)
また、L-カルニチンサプリメントはトリメチラミンN-オキサイド(TMAO)の血中濃度を上昇させると考えられています。このトリメチラミンN-オキサイド(TMAO)は、体内で高値になると、動脈の閉塞につながる動脈硬化を起こしやすくなると言われています。(参考1, 参考2)
また厚生労働省のウェブサイトでは、カルニチンの補給を約3 g/日の用量で摂取した場合、稀ではあるものの「生臭い」体臭などの副作用を引き起こす場合があるとも記述されています。
L-カルニチンサプリメントの安全性については、今後もさらなる研究が必要です。
L-カルニチンを含む食べ物
肉や魚の摂取によって、少量ずつですがL-カルニチンを摂取することが可能です。(参考1, 参考2)
L-カルニチンが特に多く含まれているのは以下のようなものです。(参考)
- 牛肉:81mg(85gあたり)
- 豚肉:24mg(85gあたり)
- 魚:5mg(85gあたり)
- 鶏肉:3mg(85gあたり)
- ミルク:8mg(227mlあたり)
またL-カルニチンのサプリメントが一定の人気を集めているものの、食事から摂取されるL-カルニチンの方がサプリメントから摂取するよりも吸収効率が良いことがわかっています。ある研究によると、食事と一緒に摂取されたL-カルニチンは57-84%が実際に体内に吸収されるのに対して、サプリメントとして摂取された場合は14-18%程度の吸収率に止まったとされています。(参考)
サプリからL-カルニチンを摂取した方がいいのか?
先ほど述べたように、L-カルニチンはサプリよりも食事からの方が吸収率がよく、その上、L-カルニチンは体内でもメチオニンやリシンなどのアミノ酸から合成されます。これらの理由から、特定の疾患に対する治療などを除いては、L-カルニチンのサプリメントが必要となる場面はあまりないかもしれません。
しかし、体内のカルニチンの量は、食事から摂取されるカルニチンの量と体内で産生されるカルニチンの量のバランスで決まります。このため、ベジタリアンやビーガンのような動物性の食材を摂取しない人においては、L-カルニチンの血中濃度が低くなる傾向があります。(参考1, 参考2)
ベジタリアンやビーガンの方では、L-カルニチンのサプリメントを検討しても良いかもしれません。しかし、現在までのところ、ベジタリアンやビーガンの方を対象として、L-カルニチンの効能を調べた研究は見たことがありません。
また、高齢の方にとってもL-カルニチンは有益かもしれません。研究では、加齢とともに体内のL-カルニチンの量が低下すると報告されています。(参考1, 参考2)
ある研究では、2gのL-カルニチンを摂取した高齢者において、疲労感の軽減と筋肉機能の改善効果が認められたとしています。また、別な研究ではアセチルL-カルニチンが、加齢によって変化が起きやすい、脳の健康と正常機能の維持に有益であったとしています。(参考1, 参考2)
加えて、肝硬変、腎疾患などの病気のある方では、L-カルニチンの欠乏症が起きやすくなります。
もし、これらの疾患がある場合には L-カルニチンのサプリメントを内服することは理にかなっているかもしれません。(参考1, 参考2, 参考3)
ただし、他のサプリメントと同じように、摂取を開始する前に医療機関で相談をしましょう。
💡 Point
特定の方にとっては、L-カルニチンの摂取が有益かもしれません。高齢の方や、肉や魚などをほとんど摂取されない方などの場合には特に有効でしょう。
推奨される用量
一般的に推奨される、L-カルニチンの摂取量は1日500-2,000mg程度です。
研究によって使用される用量は異なりますが、ここでは研究で見られる大まかな用量をまとめます。
- アセチルL-カルニチン:これは、脳の健康や機能に重要なカルニチンです。1日量は600-2,500mg程度で使用されます。
- L-カルニチンL-酒石酸塩:運動パフォーマンスの改善に有効と言われています。1日量は1,000-4,000mg程度で使用されます。
- プロピオニルL-カルニチン:血流の改善や血圧改善に関連すると言われています。1日量は400-1,000mg程度で使用されます。長期の使用では1日2,000mgまでの使用であれば安全であるとされています。
また、L-カルニチンの飲むタイミングについてもよく質問を受けますが、L-カルニチンを世界でもっとも供給しているロンザ株式会社によると特に指定はないようです。
ただし一般にサプリメントの吸収率は胃の働きが良くなる食後が高くなると言われているため、習慣付けも兼ねて食後に飲むと決めるのも良いでしょう。L-カルニチンの吸収率が食べ物から摂る場合と、サプリから摂る場合で違うことは、胃の働きの差によるものかもしれません。
よくある質問
L-カルニチンやD-カルニチンなどの違いは?
L-カルニチンは、人の体、食材、サプリメントなどに含まれる、生物学的に活性のあるタイプのカルニチンです。
以下に、いくつか別なタイプのカルニチンを挙げてみましょう。
- D-カルニチン: これは不活性型のカルニチンで、しばしば他の活性型のカルニチンの吸収を阻害し、体内でカルニチン欠乏を起こす原因となります。(参考1, 参考2)
- アセチルL-カルニチン:アルカー(ALCAR)などとも呼ばれ、脳に最も活性があるタイプのカルニチンと考えられています。研究では、神経変性疾患のある患者さんにおいての有効性が指摘されています。(参考)
- プロピオニルL-カルニチン:このカルニチンは抹消性血管疾患や高血圧などの循環系に有効であると考えられており、血流を改善する一酸化窒素などの産生を促すと期待されています。(参考2, 参考2)
- L-カルニチンL-酒石酸塩:吸収速度が早いため、しばしばスポーツサプリメントなどによく追加されています。筋肉痛や運動からの回復に効果があると報告されています。(参考21/a>, 参考2, 参考3, 参考4)
多くの人にとっては、アセチルL-カルニチンとL-カルニチンが最もよく使用されるタイプのカルニチンでしょう。自分の目的にあったカルニチンを選ぶことが大切です。
L-カルニチン以外のダイエット効果が期待できる成分を教えてください
L-カルニチンは前述したように減量に対する効果は定かではなく、また国内でも機能性表示食品などの制度でそのダイエット効果が消費者庁などに受理されたことはありません。
逆にダイエットに関する効果が認められた製品としては、桑の葉イミノシュガー・キトサン・茶花サポニン・ブラックジンジャーが含まれた「大人のカロリミット」や、サラシアなどが含まれた「メタバリアEX」などが有名です。
alloehではこれらの製品についても、機能性表示食品制度で受理された効果や、その効果に関与している成分などを解説した記事を公開しています。もし興味があればご覧ください。
おすすめのカルニチンサプリ
alloeh編集部メンバーの個人的な趣味によるものですが、小林製薬の「コエンザイムQ10・α-リポ酸・L-カルニチン」という製品を愛用しています。
これらの成分は全て食事から摂った栄養をエネルギーに変える際に使われますが、それぞれを1つのサプリで摂れる点が気に入っています。
また、alloehではコエンザイムQ10とα-リポ酸の記事についても解説しているので、こちらもよければご覧ください。
まとめ
期待されている効果 | 減量・運動パフォーマンスの向上 etc |
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想定される副作用 | 胃部不快感・体臭 etc |
推奨量 | 500mg-2,000mg/日 |
L-カルニチンは脂肪燃焼剤とも呼ばれますが、実際には効能を裏付ける科学データには一貫性がありません。少なくとも、顕著な体重減量につながるという可能性は低いようです。
しかし、高齢者、ビーガン/ベジタリアンなどの体内のL-カルニチン量が少ない方においては、サプリメントも有効かもしれません。
L-カルニチンは人気のあるサプリメントですが、ダイエットに関して言えば国内でより信頼性の高い成分が他にもあります。詳しくは「おすすめのダイエットサプリ15選!論文をもとに成分を徹底比較【2021年最新版】」でも解説しているため、よければご覧ください。
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