ニコチンアミドリボシド(NR)とは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説

はじめに

米国では毎年、数十億ドル以上もの金額がアンチエイジング製品に費やされています。

アンチエイジング製品のほとんどは肌の老化現象を改善しようとするものですが、ニコチンアミドリボシド(ナイアジェン)は身体の内側から改善を行うことを主眼においています。

ニコチンアミドリボシドは体内でNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変換されます。NAD+とは、細胞内に存在して、健康を多角的にサポートする助けとなると考えられている分子です。

この記事では、ニコチンアミドリボシドの効果や副作用、摂取量などを解説していきます。

ニコチンアミドリボシドとは?

ニコチンアミドリボシドは、ナイアシン(ビタミンB3)の別の形態であるとされています。他の形態のビタミンB3と同様、ニコチンアミドリボシドは体内でNAD+という補酵素、あるいはヘルパー分子に変換されます。


NAD+は、以下のようなプロセスにおいて燃料のような働きを果たします。(参考1参考2

  • 食べ物をエネルギーに変換する
  • 損傷したDNAの修復
  • 細胞の免疫システムの強化
  • 体内時計の調整


ただし、NAD+の量は加齢にともなって減少すると考えられています。NAD+が減少することは、老化や糖尿病、心臓病、アルツハイマー病、視力以下などの慢性疾患に関わっていると考えられています。(参考1参考2

動物実験では、NAD+のレベルを上げることで老化の兆候が回復し、多くの慢性疾患のリスクが低減することが指摘されています。(参考1参考2参考3

ニコチンアミドリボシドはNAD+のレベルを上げるのに特に効果的であると考えられ、サプリメントなどの形体で瞬く間に人気を博しました。ニコチンアミドリボシドは牛乳や酵母、ビールなどにも微量に含まれています。(参考1参考2

ニコチンアミドリボシドに期待されるメリット

前提として、ニコチンアミドリボシドやNAD+に関する研究は大半が動物実験によるものであるため、人間に対する有効性には明確な結論が用意されていません。

そのうえで、現在可能性が期待されている健康への効果を解説します。

NAD+への変換が容易

先ほど解説した通り、NAD+は多くの面で健康に関わっているものの、加齢によって減少することが指摘されています。そんなNAD+のレベルを上昇させる方法として、ニコチンアミドリボシドのようなNAD+前駆体の摂取が挙げられます。(参考1参考2

動物実験によると、ニコチンアミドリボシドは血中のNAD+濃度を最大で2.7倍に上昇させることが分かっています。さらに、他のNAD+前駆体よりも効率的に利用されることが示唆されています。(参考

健康に関わる酵素の活性化

ニコチンアミドリボシドは、体内のNAD+を増加させる可能性があります。そしてNAD+は、健康的な加齢を支える特定の酵素の働きを活性化することが示唆されています。

その一つがサーチュインで、動物の寿命や健康状態の改善に対して働きかけると考えられています。研究によると、サーチュインは損傷したDNAを修復したり、ストレス耐性を改善したり、炎症を抑制したりするなど、健康に関して多くの効果が期待されています。(参考1参考2参考3

また、サーチュインはカロリー制限による寿命の改善にも関与しているとされています。(参考

また、別の研究では、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)によって損傷したDNAを修復することが示唆されています。PARPの活性が高いとDNAの損傷が軽減され、寿命が改善するということが考えられています。(参考1参考2

脳細胞の保護に関する可能性

NAD+は、脳細胞の老化防止にも重要な役割を果たしていると考えられています。NAD+は脳細胞内でPGC-1αの産生をコントロールしているとされています。PGC-1αは、酸化ストレスやミトコンドリア機能の低下から細胞を守るのに役立つと考えられているタンパク質です。(参考

ある研究では、酸化ストレスとミトコンドリア機能の低下の両方が、アルツハイマー病やパーキンソン病などの加齢に伴う脳疾患に関連していると考えられています。(参考1参考2参考3

アルツハイマー病を患ったマウスに対して、ニコチンアミドリボシドは脳内のNAD+レベルを最大70%、PGC-1αの産生量を50%上昇させました。その結果、実験中ではマウスの記憶力が大幅に改善したことが示されています。(参考

試験管実験では、パーキンソン病の患者から採取した幹細胞において、ニコチンアミドリボシドがNAD+レベルを上昇させ、ミトコンドリアの機能を大幅に改善したとされています。(参考

しかしながら、人体に対する効果についてはまだ明らかになっていない部分が多いというのが実情です。


心臓病のリスクを低減する可能性

加齢にともなって、心臓病のリスクは上昇するとされています。これは、大動脈などの硬化などと関連していると考えられています。そうした変化は血圧を引き上げ、心臓の働きを阻害する可能性があります。(参考

動物実験では、NAD+のレベルを高めることで、加齢に伴う動脈の変化にポジティブな変化を与えることが確認されています。(参考

人間に対する実験では、ニコチンアミドリボシドがNAD+のレベルを向上させ、大動脈の硬化を抑制したことが示唆されています。

こちらも、さらなる研究結果が求められています。


その他に期待される効果

ニコチンアミドリボシドには、他にもいくつかの効果が期待されています。(参考

体重減少を助ける可能性

マウスを用いた実験では、代謝を促進する効果が示唆されています。(参考1参考2


癌のリスク低減の可能性

NAD+のレベルが高いと特定の癌の発生に関連するDNA損傷や酸化ストレスから保護することができると考えられています。(参考

時差ぼけに関する効果

NAD+は体内時計を調整する可能性が示唆されているため、時差ぼけやその他のリズム障害の治療に役立つ可能性があります。(参考

筋肉に関する効果

NAD+のレベルを上げることで、高齢のマウスの筋機能や筋力、持久力が改善されたことが示唆されています。(参考1参考2


ニコチンアミドリボシドの安全性と副作用

ニコチンアミドリボシドは、基本的には安全であると考えられています。

人間に対する研究では、日に1,000~2,000mgを摂取しても有害な影響はありませんでした。しかしながら、多くの研究は期間が短く、参加者の人数も十分ではありません。よって、より正確にリスクを理解するためにはさらなる研究が必要です。(参考1参考2

また、一部の人々は吐き気や疲労、頭痛、下痢、胃の不快感、消化不良などの副作用を報告しています。(参考

動物実験では、体重1kgあたり300mgを90日間摂取しても、有害な影響は認められなかったとされています。(参考

さらに、ビタミンB3(ナイアシン)のサプリメントとは異なり、ニコチンアミドリボシドは顔面紅潮を引き起こすことはないとされています。(参考

ニコチンアミドリボシドの摂取量目安

ニコチンアミドリボシドは、錠剤やカプセルのような形で、ドラッグストアやオンラインストアでの購入が可能です。多くの場合ニコチンアミドリボシドだけが含まれていますが、メーカーによっては、レスベラトロールと化学的に類似した抗酸化物質であるポリフェノールの一種であるプテロスチルベンのような、他の成分と組み合わせている場合もあります。(参考

商品によって異なりますが、多くの場合1日1〜2カプセルに相当する250〜300mgの摂取が推奨されています。ご利用の際は、商品パッケージに記載の摂取量目安に従うようにしてください。

最後に

ニコチンアミドリボシドは、一般的にアンチエイジングに関する効果を期待されることの多い製品として販売されています。

いくつかの効果に関しては研究結果が示唆しているものの、動物実験が多く、治療法として推奨するには、より質の高い研究が必要である点に留意する必要があります。

今回の記事の内容を、ぜひ役立てていただければ幸いです。

Powered by Froala Editor

関連記事

関連商品