貧血とは?
貧血は、体内の健全な赤血球の数が非常に少なくなった時に起こります。赤血球は酸素を体内の組織に運びます。そのため赤血球数が低いということは、血中酸素量が必要量よりも少なくなったということなのです。
貧血の症状の多くは、体内の重要な組織や臓器への酸素の供給が減ることにより起こります。 貧血かどうかは、ヘモグロビン(肺から体内組織に酸素を運ぶ赤血球内のたんぱく質)の量を測定して調べます。 世界の16億人超が貧血に罹っています。(参考)女性やがんなどの慢性疾患にかかっている人は、貧血を起こすリスクが高くなります。
貧血の症状
貧血の人は顔色が悪く冷えを感じることが多いようです。 また次のような症状もあります。
- 立ちくらみやめまい(特に動くときや立ち上がるとき)
- 氷や粘土、泥などを食べたくなるという異食症状
- 疲れを感じたり集中できなくなる
- 便秘
貧血の種類の中では、舌に炎症を起こすものがあります。舌がツルツルしたり光沢が見られたり赤くなったり、時には痛みを感じたりします。 貧血が深刻になると失神してしまうこともあります。他の症状は下記のようなものがあります。
- 爪が割れやすい
- 息切れ
- 胸痛
貧血がひどい人の血中酸素量は、非常に低くなり心臓発作を起こす危険性があります。 貧血の場合は検診で以下のような結果が出ます。
- 高血圧または低血圧
- 血色が悪い
- 黄疸
- 心拍数の増加
- 心雑音
- リンパ節腫大
- 肝臓や脾臓(ひぞう)の肥大
- 萎縮性舌炎
特に立ちくらみや胸痛といった貧血の症状や兆候がある人は、医師の診察を受けてください。
貧血の原因
鉄分、ビタミンB-12、葉酸は赤血球が体内で成熟するために必要不可欠な栄養素です。通常、体内の赤血球の0.8~1%は毎日入れ替わります。赤血球の平均寿命は100~120日です。赤血球産生と破壊のバランスに悪影響を及ぼすプロセスが貧血を引き起こすのです。 貧血の原因は一般的に赤血球産生が減少したものと赤血球破壊が増加したものに分類されます。
赤血球産生の減少要因
赤血球産生減少により貧血を引き起こすものには次のようなものがあります。
- 腎臓で作られるエリスロポエチンというホルモンによる赤血球産生の刺激不足
- 鉄分、ビタミンB-12、葉酸の摂取不足
- 甲状腺機能の低下
赤血球破壊の増加要因
一方で、赤血球が産生されるよりも早く破壊されるという障害は貧血につながります。一般的にこれは出血によって引き起こされます。その原因には以下のようなことが挙げられます。
- 子宮内膜症
- 事故
- 胃腸障害
- 月経
- 出産
- 過剰な子宮出血
- 手術
- 肝臓の瘢痕化(はんこんか)を含む肝硬変
- 骨髄内の線維症(瘢痕組織)
- 溶血、つまり投薬治療やRh不適合に伴って起きうる赤血球の破壊
- 肝臓や脾臓の障害
- ブドウ糖-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症
- サラセミア
- 鎌状赤血球貧血
しかし結局のところ鉄分不足が貧血の最も一般的な原因です。貧血原因の約半分を占めています。この鉄分不足は世界各国で見られる主な栄養障害の一つです。
一日に必要な栄養量
ビタミンと鉄分の一日に必要な量は性別と年齢により異なります。 女性は月経中の鉄分損失や妊娠中や授乳中の胎児発達のために男性よりも鉄分と葉酸を多くとる必要があります。
鉄分
アメリカ国立衛生研究所が推奨する成人(19~50歳)の一日あたりの鉄分摂取量は次の通りです。
50歳超の男女は一日にわずか8mgの鉄分を摂ればよいとされています。食生活だけで鉄分を十分摂取できない場合は、サプリメントが必要かもしれません。 鉄分を多く含む食材は次のようなものがあります。
- 鶏と牛のレバー
- ダークターキーの肉
- 牛肉など赤身の肉
- シーフード
- 栄養強化されたシリアル
- オートミール
- レンズマメ
- 豆類
- ほうれん草
葉酸
葉酸塩(Folate)は体内で自然に存在する形態です。 14歳超の男女は、一日に400mcgの食事性葉酸当量(mcg/DFE)が必要です。 妊娠中や授乳中の女性は、それぞれ600mcg/DFEと500 mcg/DFEもの葉酸を摂取することが推奨されています。 葉酸を多く含む食材は次のようなものがあります。
- 牛肉、レバー
- レンズマメ
- ほうれん草
- 白いんげん豆
- アスパラガス
- 卵
栄養強化されたシリアルやパンなどで葉酸を摂ることもできます。
ビタミンB-12
成人が一日に摂取するべきビタミンB-12は2.4mcgです。それに対し妊娠中の女性や10代は2.6mcgで、授乳中であれば一日に2.8mcg必要です。 牛レバーとあさりはビタミンB-12を多く含む二大食材です。他には次のようなものがあります。
- 魚
- 肉
- 卵
- 乳製品
食事だけで十分な量が摂れない場合は、サプリメントでもビタミンB-12を摂取することができます。
サプリメントで補う
もし貧血の場合、あるいはここで紹介した栄養素を食事からも十分摂取できない場合は、鉄分・葉酸・ビタミンB-12を含むサプリメントを活用して摂取量を増やしましょう。これらはオンラインやドラッグストアで購入できます。
貧血はどのように診断するのか
貧血の診断では、まず健康診断と本人と家族の既往歴を調べます。家族に鎌状赤血球貧血といった特定の貧血の既往歴があれば、判断がしやすいようです。家庭や職場で毒物への曝露があった場合、環境的要因を指摘されるでしょう。 医師の診断を助ける臨床検査は、貧血の原因を見つけてくれます。 貧血の診断をする試験は以下のようなものがあります。
- 完全血球算定(CBC):赤血球の数とサイズの測定や、白血球や血小板のような他の血液細胞が正常であるかを判断する
- 血清鉄値:鉄分不足が貧血の原因か判断する
- フェリチン試験:鉄の体内貯蔵量を調べる
- ビタミンB-12テスト:ビタミンB-12の量を調べる
- 葉酸テスト:血清葉酸の量を調べる
- 便潜血検査:便に潜血があるかどうかを調べる(結果が+の場合は、口腔から直腸までの消化器官のどこかで出血している可能性あり。胃潰瘍、潰瘍性結腸炎、結腸がんなどの場合、便に潜血が見つかることもあり)
以上のような検査を経て、医師は以下のような検査を追加で行うこともあります。
- 上部消化管出血の検査
- バリウム注腸造影
- 胸部レントゲン
- 腹部のCTスキャン
貧血の治療方法
貧血の治療はその原因により異なります。 鉄分、葉酸、ビタミンB-12の不足により起きた貧血は、栄養サプリメントで治療します。消化管吸収がうまくできないケースでは、B-12の注射が必要になることもあります。
主治医や栄養士がビタミン、ミネラルその他の栄養素を適切に含む食事について指導します。正しい食生活をすれば、この種の貧血の再発は防ぐことができます。 貧血がひどい場合では、骨髄の赤血球を増やすためにエリスロポエチン注射をする場合もあります。出血があったりヘモグロビン量が非常に少なかったりする場合は、輸血が必要になることがあります。
貧血の予後は?
予後とは、病気にかかった後の経過・結末に関する医学的な見通しのことです。
貧血の予後はその原因と治療対応によるところがあります。貧血は十分治療ができるものですが、放っておくと危険です。一日に必要な鉄分量を摂るため、食品表示ラベルに気を配り、マルチビタミン剤を購入しましょう。 特に家族に既往歴があり、貧血の症状がある場合は主治医に相談しましょう。
鉄分摂取量を増やすため、まずは食事療法やサプリメントを使った治療となるでしょう。 鉄分不足はより深刻な病状のサインとなる場合もあるため、自分の身体に気を配ることは大切です。おおくの場合、ほんの少し食事を工夫したり鉄分サプリを摂ったりするだけで貧血を治すことができるのです。
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