はじめに
手のしびれは必ずしも心配する必要はありません。手根管なにかしらのサインかもしれませんし、薬の副作用かもしれません。
※手根管(しゅこんかん):手首の部分にある骨と手根靭帯に囲まれた空間のこと
病気で手がしびれていると、通常はそれに伴って他の症状も現れます。本稿ではどのような場合に医師の診察を受けるべきかについて説明します。
1.脳卒中でしょうか?
手のしびれは通常、病院への通院が必要なほどの緊急事態の徴候ではありません。
可能性は低いのですが、手のしびれが脳卒中の徴候である可能性もあります。次のような場合は、直ちに医師の診療を受けてください。
- 腕または脚の突然の筋力低下またはしびれ、特に体の片側だけにある場合
- 他人と話したり、理解したりするのに苦労する
- 混乱
- 顔の垂れ下がり
- 片目または両目の突然の視力障害
- 突然のめまいまたは平衡感覚の喪失
- 突然の激しい頭痛
このような症状がある場合は、911番に電話するか、地域の救急サービスに電話するか、または誰かとすぐに病院にいきましょう。迅速な治療を行うことで、長期的な身体の損傷リスクを減らすことができます。また命も救えるかもしれません。
2.ビタミンやミネラルの欠乏
神経を健康に保つにはビタミンB12が必要です。欠乏症により手足のしびれやチクチク感が生じることがあります。カリウムとマグネシウムの欠乏もしびれの原因となります。
ビタミンB 12欠乏症のその他の症状には以下のものがあります。
- 衰弱
- 疲労
- 皮膚と眼の黄変 (黄疸)
- 歩行・平衡障害
- 注意力散漫
- 幻覚
3.特定の薬
神経の損傷 (神経障害) は、がんからけいれん発作まであらゆる治療薬の副作用の可能性があります。副作用の場合、両手と両足に影響が出ます。
しびれの原因となる薬には以下のものがあります。
- 抗生物質:これらにはメトロニダゾール (フラジル) ・ニトロフラントイン (マクロビド) ・フルオロキノロン系薬剤 (シプロ) などがあります。
- 抗がん剤:これにはシスプラチンとビンクリスチンが含まれます。
- 抗けいれん薬:一例として、フェニトイン (ディランチン)があります 。
- 心臓や血圧の薬:これにはアミオダロン (ネクステロン) やヒドララジン (アプレゾリン) などがあります。
薬物誘発性神経障害の他の症状には以下のようなものがあります。
- チクチクする
- 手の異常な感覚
- 衰弱
4.脊椎椎間板の滑り
椎間板とは、脊椎の骨 (椎骨) を分離するソフトクッションのことです。ディスクに裂け目があると、中央の柔らかい素材が押し出され、この破裂は椎間板ヘルニアと呼ばれます。
椎間板が損傷すると、脊椎の神経が圧迫されて刺激を受けます。椎間板ヘルニアはしびれのほかに、腕や脚の筋力低下や痛みを引き起こすことがあります。
5.レイノー病
レイノー病、つまりレイノー現象は、血管が狭くなり手足に十分な血液が届かなくなったときに起こります。血流が不足すると、手足の指がしびれが起こったり、冷たくなったり、または青白くなったりしてとても痛みます。
これらの症状は、寒さにさらされたときやストレスを感じたときによく現れます。
6.手根管
手根管は手首の中心を通る細い通路です。このトンネルの中央に正中神経があります。この神経は、親指・人差し指・中指・薬指の一部などの指に感覚を与えています。
タイピングや組み立てラインでの作業などの反復的な活動によって、正中神経の周囲の組織が腫れてこの神経を圧迫することがあります。圧迫すると、患部の手にしびれやチクチク感、痛みや筋力低下が生じることがあります。
7.肘部管症
尺骨神経は、首から小指側の手につながる神経です。肘の内側で神経が圧迫されたり、伸びすぎたりすることがあります。医師はこの状態を肘部管症候群と呼びます。これは「ファニーボーン(上腕骨)」を打ったときと同じ神経領域です。
肘部管症候群では、手のしびれやチクチク感などの症状が特にくすり指や小指にみられます。前腕の痛みや手の筋力低下が起こることもあり、特に肘を曲げたときに起こります。
8.頸椎症
頸椎症は首の椎間板が侵されるタイプの関節炎です。何年にもわたって背骨が傷んでいることが原因です。損傷した椎骨が近くの神経を圧迫し、手・腕、・指にしびれを起こします。
頸椎症の人のほとんどは症状がありません。首に痛みやこわばりを感じる人もいます。
この状態は次の原因となる可能性もあります。
- バランスの喪失
- 腕・手・脚・または足の衰弱
- 腸または膀胱の不調
- 頭痛
- 首や肩の筋肉のけいれん
- 首を動かすときにパキッと音がなること
9.上顆炎
外側上顆炎はテニスラケットを振るなどの反復運動によって引き起こされるため、「テニス肘」と呼ばれています。この動作を繰り返すと、前腕の筋肉や腱が損傷し、肘の外側に痛みや灼熱感が生じます。手のしびれはほとんどありません。
内側上顆炎は「ゴルフ肘」と呼ばれる同様の病気で、肘の内側が痛み、手、特に小指や薬指の筋力低下・しびれ・チクチク感が起こります。尺骨神経の機能障害の原因となる激しい腫れがこの部位にある場合、しびれを引き起こすことがありますが、これは非常にまれです。
10.ガングリオン嚢胞(のうほう)
ガングリオン嚢胞(のうほう)は液体の増殖物から起こります。症状は手首や手の腱や関節に現れます。直径が1インチ以上になることもあります。
この嚢胞が近くの神経を圧迫すると、手にしびれや痛み筋力低下が生じることがあります。
11.糖尿病
糖尿病の人は、血糖値を血流から細胞に移動させることが困難です。高血糖が長期間続くと、糖尿病性神経障害と呼ばれる神経の損傷につながることがあります。
末梢神経障害は、腕・手・脚にしびれを引き起こす神経損傷の一種です。
神経障害のその他の症状には以下のものがあります。
- チクチクする感じ
- バランス感覚の喪失
- 熱傷感
- 痛み
- 衰弱
12.甲状腺異常
首の甲状腺は、体の代謝を調節するホルモンを分泌します。甲状腺機能低下症は、甲状腺のホルモン産生量が少なすぎる場合に起こります。
未治療の甲状腺機能低下症は、腕や脚に感覚を送る神経を損傷することがあります。これは末梢神経障害と呼ばれます。手足のしびれや脱力、チクチク感を起こすことがあります。
13.アルコールによる神経障害
アルコールは少量は安全ですが、量が多すぎると神経など体の周辺組織に損傷を与えます。酒量を誤ると手足にしびれやチクチク感が生じることがあります。
アルコール関連神経障害のその他の症状には以下のものがあります。
- チクチク感
- 勃起障害
- 排尿制御障害
- 筋力低下
- 筋肉のけいれん
14.筋膜痛症候群
筋筋膜痛症候群では、トリガーポイント (筋肉の非常に敏感で痛みを伴う部位) が発生します。痛みが体の他の部位に広がることもあります。
筋筋筋膜痛症候群では、筋肉の痛みに加えて、チクチク感・筋力低下・こわばりがみられます。
15.線維筋痛症
線維筋痛症は、疲労や筋肉痛を引き起こす病気です。症状が非常に似ているため、慢性疲労症候群と混同されることがあります。線維筋痛は激しい痛みを伴い、また痛みは体の様々な圧痛点に集中します。
線維筋痛症では、手・腕・脚・顔にしびれやチクチク感が生じるこがあります。
その他の症状には以下のものがあります。
- 下痢
- 便秘
- 睡眠障害
- 腹痛
- 集中力の低下
- 頭痛
- 鬱病
16.ライム病
細菌に感染したシカダニは、人に咬まれることでライム病をうつします。ライム病の原因菌に感染すると、まず牛の目のような形をした発疹が現れ、発熱や悪寒などのインフルエンザに似た症状が現れます。
この疾患の後期症状には以下のものがあります。
- 腕や脚のしびれ
- 関節の痛みと腫れ
- 顔の片側の一時的なまひ
- 発熱・項部硬直・激しい頭痛
- 衰弱
- 筋力低下
17.ループス
ループス(全身性エリテマトーデス)は自己免疫疾患で、体が自分の臓器や組織を攻撃することです。以下のような多くの臓器や組織に炎症を引き起こします。
- 心臓
- 肺
- 腎臓
- 関節
全身性エリテマトーデスの症状は現れたり消えたりします。どのような症状があるかは、体のどの部分が侵されているかによります。
炎症による圧迫は神経を損傷し、手のしびれやチクチク感を引き起こします。その他の一般的な症状には以下のものがあります。
顔の蝶形の発疹疲労関節の痛み・こわばり・腫れ日光感受性手足が冷たく青くなる(レイノー現象)息切れ頭痛混乱集中力低下視力障害
手のしびれの珍しい原因
下記症状は手のしびれとはあまり関係がないかもしれませんが、もししびれを感じる場合は医師の診察を受けましょう。
18.ステージ4HIV
HIVは免疫系を攻撃するウイルスです。適切な治療を行わないと非常に多くの免疫細胞が破壊され、体が感染から身を守ることができなくなります。このウイルスの第4段階はエイズと呼ばれます。
HIVとエイズは脳と脊髄の神経細胞に損傷を与えます。この神経の損傷により腕や脚の感覚が失われることがあります。
ステージ4 HIVの他の症状には以下のものがあります。
- 嚥下障害
- 歩行困難
- 混乱
- 物忘れ
- 衰弱
- 視力障害
- 運動障害
- 頭痛
HIVは生涯続く病気で、今のところ治療法はありません。しかし抗レトロウイルス療法と医療により、 HIVはうまくコントロールされ、余命はHIVに感染していない人とほぼ同じになります。
19.アミロイドーシス
アミロイドーシスは、アミロイドと呼ばれる異常なタンパク質が臓器に蓄積することで発症するまれな病気です。どのような症状がみられるかは、侵された臓器によって異なります。この病気が神経系に影響を及ぼすと、手足にしびれやチクチク感が生じることがあります。
その他の症状には以下のものがあります。
- 下痢
- 便秘
- 原因不明の体重減少
- 息切れ
- 疲労
- 胸痛
- 腹部の痛みと腫れ
- 舌の腫れ
- 頚部の甲状腺腫脹
- 疲労
- 原因不明の体重減少
20.多発性硬化症 (MS)
MSは自己免疫疾患です。MSの疾患は免疫系が神経線維の周りの保護膜を攻撃し、神経が損傷を受けます。
症状は侵された神経によって異なります。しびれおよびチクチク感は、最も一般的なMS症状の1つです。腕・顔・脚の感覚が失われることがあります。しびれは通常、体の片側だけに生じます。
その他の症状には以下のものがあります。
- 視力障害
- 複視
- チクチクする感覚
- 衰弱
- 電気ショックのような感覚
- 協調運動や歩行に問題がある
- ろれつが回らない
- 疲労
- 疲労膀胱や腸の制御の喪失
21.胸郭出口症候群
この病気の症状は、首や胸の上部の血管や神経が圧迫されることによって起こります。けがや繰り返しの運動によって、この神経が圧迫されることがあります。
この部分の神経が圧迫されると、指のしびれやチクチク感、肩や首の痛みが生じます。
その他の症状には以下のものがあります。
- 冷たい指・手・腕
- 手と指の青白さやまた薄い色
- 握力低下
- 腕の腫れ
22.血管炎
血管炎は、血管が腫れて炎症を起こすまれな病気です。この炎症によって臓器や組織への血流が遅くなります。しびれや脱力などの神経障害につながることがあります。
その他の症状には以下のものがあります。
- 体の痛み
- 体重減少
- 息切れ
- 熱
- 疲労
- 赤い斑点のある発疹
- 頭痛
23.ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群は、免疫系が神経を攻撃して損傷を与えるまれな病気です。ウイルス性または細菌性の病気の後に発症することがよくあります。
神経の損傷により、脚にしびれ・筋力低下・チクチク感が生じます。その痛みは腕・手・顔に広がります。
その他の症状には以下のものがあります。
- 話す・噛む・または飲み込むことが困難
- 膀胱または腸のコントロールに問題がある
- 呼吸困難
- 心拍数の増加
- 不安定な動きや歩行
いつ病院に行くべきか
数日間しびれが治まらない場合や、体の他の部位に広がる場合は医師に相談してください。また、けがや病気の後にしびれが始まった場合も医師に相談してください。
手のしびれと同時に次のような症状が現れた場合は、直ちに医師の診察を受けてください。
- 弱さ
- 体の一部、または複数の部分を動かすことが困難
- 錯乱
- 話にくい
- 視力低下
- めまい
- 突然の激しい頭痛
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