はじめに
赤ワインがコレステロールを低下させると聞いたことがあるなら、大々的に喧伝されている、赤ワインの植物性化合物、レスベラトロールについても聞いたことがあるのではないでしょうか。
レスベラトロールは、赤ワインやその他の食材の健康への効能の1部を担う一方で、それ自体にも健康の改善効果が認められています。
実際、レスベラトロールサプリメントには、脳機能の保護、血圧低下など、多くの健康への効能との関連が報告されています。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)
この記事では、レスベラトロールについて知っておくべきことを、その7つの健康への効能も含めて取りあげたいと思います。
レスベラトロールとは何か?
レスベラトロールは、抗酸化物質として機能する植物性化合物の1つです。主な供給源は、赤ワイン、ブドウ、特定のベリー、ピーナッツなどです。(参考1, 参考2)
この化合物は、ブドウやベリーの種の、皮部分に集中して存在します。赤ワインを作る際の発酵の過程では、ブドウのこの皮部分が使用されるので、赤ワインはレスベラトロールの濃度が高くなります。(参考1, 参考2)
しかし、多くのレスベラトロールに関連した研究は、動物を対象にしていたり、試験管内で行われた実験で、使用されるレスベラトロールも高用量のものが多いです。(参考1, 参考2)
人を対象とした数少ない研究でも、使用されるレスベラトロールは、食事などから得られるレスベラトロールより、ずっと高濃度のレスベラトロールサプリメントについてのデータがほとんどです。(参考)
Point:レスベラトロールは、赤ワイン、ベリー、ピーナッツなどに含まれる、抗酸化物質様の化合物です。多くの人を対象とした研究では、高用量のレスベラトロールを含むサプリメントを使用しています。
1. レスベラトロールサプリメントの血圧低下作用
その抗酸化作用から、レスベラトロールには血圧低下作用が期待されています。(参考)
2015年の過去の研究をまとめたレビューでは、高用量のレスベラトロールが、心収縮時に血管壁にかかる圧の軽減に有用であったと報告しています。(参考)
この血圧は、収縮期血圧とも呼ばれ、血圧の値の高い方の数値になります。
収縮期血圧は加齢と共に動脈が硬くなることで、徐々に上昇していきます。そして、高値になると心疾患のリスク因子となるのです。
レスベラトロールは、血管壁を弛緩させる効果がある一酸化窒素の産生を介して、血圧低下作用を発揮しているかもしれません。(参考1, 参考2)
しかし、研究者によると、レスベラトロールの血圧低下効果を最大限引き出すためには、その用法や用量について、今後の追加での研究が必要であるとされています。
高血圧対策に関係するサプリメントについては、『口コミが多い「高血圧」サプリ5選 | alloeh(アロエ)』で紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
Point:レスベラトロールサプリメントは、一酸化窒素の産生を増やすことで血圧低下を促すかもしれません。
2. 血中のコレステロールへの効能
いくつかの動物を対象とした研究で、レスベラトロールサプリメントが血中のコレステロールを改善する効果があったと報告されています。(参考1, 参考2)
2016年にマウスを対象に行われた研究では、マウスにレスベラトロールサプリメントを、高タンパク・高多価不飽和脂肪酸食と一緒に投与しました。
この研究では、血中のコレステロール値の平均値とマウスの体重が有意に低下し、HDL(善玉)コレステロールの値は増加したと報告されています。(参考)
レスベラトロールは、コレステロール産生に関わる酵素の効果を抑制することで、血中のコレステロールレベルに影響を与えていると考えられています。(参考)
レスベラトロールには抗酸化物質として、LDL(悪玉)コレステロールを減らす作用があると考えられています。そして、このLDL(悪玉)コレステロールの酸化が、動脈壁へのプラークの沈着に関与していることが知られています。(参考1, 参考2)
また、他のある研究でも、被験者にレスベラトロールが添加されたブドウ抽出液を投与しました。
この研究では、6ヶ月間の治療介入で、レスベラトロール添加なしのブドウ抽出液や、プラセボを摂取していた人に比較して、LDL(悪玉)コレステロールが4.5%、酸化されたLDL(悪玉)コレステロールが20%低下したと報告しています。(参考)
コレステロールについては『善玉・悪玉って何?コレステロール値に働きかけるサプリの成分を解説!』でも解説しているので、興味がある方は是非チェックしてみてください。
Point:レスベラトロールサプリメントは、動物を対象とした実験において血中のコレステロールを改善する効果が認められています。また、抗酸化物質として作用し、LDL(悪玉)コレステロールの酸化を抑制する効果も知られています。
3. 特定の動物での寿命延長効果
複数の生物において、レスベラトロールによる寿命延長作用が認められており、現在も盛んに研究が行われています。(参考)
複数の研究データで、加齢に伴う疾患に抑制的に働く遺伝子が、レスベラトロールによって活性化されたと示されています。(参考)
この作用機序は、カロリー制限によって遺伝子の表現型が変化して寿命延長が期待されているメカニズムに似ています。(参考1, 参考2)
しかし、この寿命延長の効能が、人においても同様の効果を示すのかは現時点では明らかではありません。
過去の研究データをまとめたレビューの報告では、レスベラトロールは、調査された生物で寿命を60%程度延長したと報告しています。しかし、この効能は人とは直接の関連の薄い、虫や魚などの生物で最も顕著に確認されました。(参考)
Point:動物を対象とした研究では、レスベラトロールサプリメントは寿命を延長としたと報告されています。しかし、人への投与で同様の効能が得られるのかは、はっきりしていません。
4. 脳への保護作用
いくつかの研究で、赤ワインの摂取が、加齢に関連した認知機能の低下を抑制すると報告されています。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)
これは、部分的にはレスベラトロールの抗酸化・抗炎症作用によると考えられています。
レスベラトロールは、アルツハイマー型認知症に特徴的な、βアミロイドと呼ばれる小さなタンパク質分子がプラークの形成を抑制すると言われています。(参考1, 参考2)
さらに、この化合物は、脳細胞を障害から守る連鎖反応を引き起こすとも見られています。(参考)
これらの研究結果には期待が持てますが、多くの研究者は人の体で、レスベラトロールがどの様に作用しているのかについて疑問を持っており、これらの作用機序が明らかになるまでは、人の脳保護のためのサプリメントとしてすぐに使用することは難しいでしょう。(参考1, 参考2)
脳機能に関係する成分やサプリメントに関しては、『脳機能はサプリで改善可能か?記憶力や集中力を高めるかもしれない10の食品』で解説しているのでぜひチェックしてみてください。
Point:効果の高い抗酸化物質かつ抗炎症物質であるレスベラトロールは、脳細胞を障害から守る可能性が示唆されています。
5. インスリンに対する感受性の改善効果
レスベラトロールは、少なくとも動物を対象とした研究では、糖尿病に対する複数の効能が認められています。
これらの効能には、インスリンへの感受性向上や、糖尿病による合併症の軽減などの効能が含まれます。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)
考えられているレスベラトロールの作用機序の1つは、レスベラトロールが特定の酵素の、グルコースを糖アルコールであるソルビトールへの変換する機能の阻害によると考えられています。
糖尿病患者さんで、過剰なソルビトールが体内に蓄積すると、細胞障害性のある酸化ストレスへつながると考えられています。(参考1, 参考2)
他にも、レスベラトロールの糖尿病に対する効能を以下に挙げてみましょう。(参考)
- 酸化ストレスからの保護効果: 抗酸化作用によって、糖尿病の副作用の発症に関与する酸化を防ぎます。
- 炎症の改善や減少: レスベラトロールは、糖尿病を含めた慢性疾患の原因となり得る炎症を軽減させる効果があると期待されています。
- AMPKの活性化: 糖を代謝するAMPKと呼ばれるタンパク質の作用を助ける効果が期待されています。活性化したAMPKは、血糖を低く保つ効果があると考えられています。
レスベラトロールは、糖尿病がある方に対して、糖尿病のない方に対してよりも、より多くの健康への効能を発揮すると考えられています。ある動物を対象とした研究でも、赤ワインとレスベラトロールは、糖尿病を持ったラットにおいて、糖尿病がないラットよりも、より有効な抗酸化物質として機能したとされています。(参考)
研究の結果、レスベラトロールは将来的に糖尿病の治療や、合併症の治療に使うことができる可能性が期待されています。しかし、結果は確定的ではなく、今後の追加での研究が必要でしょう。
Point:レスベラトロールは、マウスにおいてインスリンへの感受性を改善させ、糖尿病の合併症を軽減したと報告されています。将来的には、糖尿病患者さんに対して、レスベラトロールを使用できる日が来るかもしれません。
6. 関節痛の改善効果
関節炎は、関節の疼痛や運動制限につながる、頻度の高い疾患です。(参考)
植物性のサプリメントが、関節痛の治療と予防のために長期にわたり研究されてきました。サプリメントとして摂取された場合、レスベラトロールは関節の軟骨が摩耗するのを防ぐ可能性があります。(参考1, 参考2)
軟骨の障害は、関節炎の主要な症状の1つである関節の疼痛の原因となり得ます。参考)
ある研究では、レスベラトロールを関節炎のあるウサギの膝関節に注射したところ、ウサギの膝関節軟骨への障害が減少したとされています。(参考)
試験管内の実験と動物を対象にした実験では、レスベラトロールの成分が関節の炎症と障害を減らす可能性が示されたとされています。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)
関節痛に関係するサプリメントに関しては『口コミが多い「関節痛」サプリ14選 | alloeh(アロエ)』で紹介しているのでぜひチェックしてみてください。
Point:レスベラトロールは、関節の軟骨の障害を防いで関節痛の軽減につながると考えられています。
7. 癌細胞への抑制効果
レスベラトロールは、特に試験管内で行われる基礎研究で、その癌に対する予防・治療効果などが調べられています。しかし、研究の結果は一貫していません。(参考1, 参考2, 参考3)
動物を使った実験と、試験管内の実験による基礎研究では、胃がん、大腸癌、皮膚癌、乳がん、前立腺癌などの種々の癌細胞に対して効果がある可能性が示唆されています。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4, 参考5)
レスベラトロールは、以下の様な機序で癌細胞を阻害すると考えられています。
- 癌細胞の成長阻害:癌細胞の増殖や播種を防ぐ(参考)
- レスベラトロールによる遺伝子発現への影響:癌細胞の遺伝子発現に作用して、癌細胞の成長を阻害する(参考)
- ホルモン様の作用:レスベラトロールは特定のホルモンの作用に影響を与えて、特定のホルモン依存性の癌の進展に抑制的に働く可能性が示唆されています。(参考)
しかし、これらの研究データは、動物を対象にした実験や試験管内で行われた実験に基づいているので、人の癌治療への効能を調べるためには、今後も人を対象とした追加での研究が必要でしょう。
Point:レスベラトロールは、試験管内の研究や、動物を対象とした研究で、癌を阻害する効能が示唆されてきました。
レスベラトロールサプリメントに関するリスクや懸念
レスベラトロールサプリメントを使用した研究では、現在までのところ、特に大きな使用に関連したリスクの報告はありません。健康な人においては、レスベラトロールサプリメントは問題なく摂取できるでしょう。(参考)
しかし、レスベラトロールの健康への効能を享受するために、どの程度の量を用いたら良いのかについては、データが不足していてはっきりしていないことには注意が必要でしょう。
そして、使用の際には、レスベラトロールと他の薬剤との相互作用には注意が必要でしょう。
試験管内の実験データでは、レスベラトロールの血液凝固の阻害作用が報告されているので、ヘパリン、ワーファリン、その他の鎮痛薬などの様な、血液凝固を阻害する薬剤と併用された場合、出血が増加したり、アザなどができやすくなる可能性があります。(参考1, 参考2)
レスベラトロールは、特定の化合物を体から除去する酵素を阻害する効果も持っています。このため、特定の薬剤はレスベラトロールの使用で危険な濃度まで体内で増加してしまうかもしれません。これらの薬剤には、降圧薬、抗不安薬、免疫抑制薬などが含まれます。(参考)
何か薬剤を使用されている場合には、レスベラトロールの内服を開始する前に医療機関で相談をしましょう。
さらに、サプリメントやその他の供給源から得たレスベラトロールを、どの程度体が使用しているのかについては議論が続いています。(参考)
一方で、レスベラトロールを体で使用されやすい様に加工する研究も進められています。(参考1、参考2)
Point:レスベラトロールサプリメントは、ほとんどの人にとって安全であると考えられていますが、他の薬剤との相互作用がある可能性がある事と、効果的な用法用量などがはっきりしていない点には注意が必要です。
まとめ
レスベラトロールは、大きな可能性のある強力な抗酸化物質です。
心疾患、関節炎などを含む、多くの疾患に関する効能に期待がもたれています。しかし、明確な用法・用量などに関するデータは不足しているので、今後の研究結果が待たれます。
レスベラトロールをサプリで試してみたい方は、「ワカサプリ レスベラロール」から使用してみると良いでしょう。ただし、重度の症状など適切な治療が必要とされる場合はサプリメントに頼らず、医療機関で診断を受けるようにしましょう。
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