はじめに
ビタミンB6(ピリドキシン)はビタミンBの一つで、中枢神経系に対して働きます。 神経伝達物質のセロトニンやノルエピネフリンの生成、またミエリン(髄鞘)の形成に携わっています。
別名ピリドキシンとしても知られており、ビタミンB6は水の中で溶ける水溶性ビタミンに分類されます。 体内に蓄積されず、尿に排出されるため、私たちは日々摂取する必要があります。 ビタミンB複合体の一部でもあります。
タンパク質と糖代謝以外のピリドキシンの機能に、ヘモグロビンの生成もあります。
ヘモグロビンは赤血球の構成成分で、酸素を運びます。 ビタミンB6はリンパ節や胸腺、すい臓の健康維持に関係しています。
ビタミンB6の期待できる効果
ビタミンB6は体内で多くの役割を果たしており、100以上の酵素反応に関係しています。
脳機能
ビタミンB6は脳の機能を高めると言われています。 アメリカ臨床栄養学会誌に掲載されたある研究では、高濃度のビタミンB6を摂取したグループの方が 記憶機能を調べる2つのテストで、結果がよいことが報告されています。
ビタミンB6は脳内の神経伝達のために必須です。
イギリスのオックスフォード大学の研究者は、 ビタミンBを毎日高容量摂取することは、認知機能が軽度低下した高齢者に効果があると言及しています。 脳萎縮の進行を50%まで低下させ、認知症になるリスクを減らすことができるかもしれないのです。
妊娠中のつわり
アメリカの産婦人科会誌でピリドキシンが妊娠初期のつわりの程度を軽くすると報告しています。
しかし、これを確証するためにはより質の高い研究が求められます。 サプリメントを摂るときは、決められた容量を守りましょう。
空気汚染からの防御
PNAS(米国アカデミー紀要)が2017年に報告した研究では、ビタミンB6がエピゲノムへの汚染物質の影響を減らすことで、空気汚染から守る可能性を示唆しました。
研究者たちのこの発見が、空気汚染暴露の原因となるエピゲノムの変異を防ぐ、新たな方法を導きだしてくれるかもしれません。
世界では、92%もの人口がWHOで定められている汚染の限界値10μg/m3を超えた場所に住んでいます。 これは、環境が原因となって起こる病気を予防するために、重要な発見となり得ます。
ビタミンB6が重要な理由は沢山あります。 1つは、食物を消化する酵素の機能が正常かを確かめ、皮膚の健康を保ち、赤血球のような血球を生成します。
この重要なビタミンは他にも多くの役割があり、不足すると半永久的な神経損傷を引き起こします。
1日どのくらいのビタミンB6をとればよいのか。
ビタミンB6の1日摂取量は、いくつかの代謝にも影響力があるため、人によって様々な要因に左右されます。 ビタミンB6のたんぱく質吸収における影響については、幅広く研究がされてきました。
普段高たんぱく質の食事をしている人は、ビタミンB6をより多く摂取する必要があるようです。 医師に相談しましょう。
アメリカ栄養補助食品局による、ビタミンB6の推奨摂取量を以下に示します。
年齢 |
男性 |
女性 |
---|---|---|
0-6カ月 |
0.1 mg |
0.1 mg |
7-12ヵ月 |
0.3 mg |
0.3 mg |
1-3歳 |
0.5mg |
0.5mg |
4-8歳 |
0.6mg |
0.6mg |
9-13歳 |
1.0mg |
1.0mg |
14-18歳 |
1.3mg |
1.3mg |
19-50歳 |
1.3mg |
1.3mg |
51歳以上 |
1.7mg |
1.5mg |
妊娠中 |
- |
1.9mg |
授乳中 |
- |
2.0mg |
食べ物からのビタミンB6の摂取源
多くの食べ物が多かれ少なかれビタミンB6は含んでいます。 普段バランスの良い食事をとっていればビタミンB6が欠乏することはありませんが、 健康上の問題や常用薬によって、不足する人もいます。
下記に示す食べ物にはビタミンB6が豊富に含まれています。
- ひよこ豆:1.1mg/ 1カップ、1日推奨量の55%
- レバー(牛肉):0.9mg/ 3オンス(=約85g)、1日推奨量の45%
- キハダ:0.9mg/ 3オンス(=約85g)、1日推奨量の45%
- ローストチキン(胸肉):0.5mg/ 3オンス(=約85g)、1日摂取量の25%
- バナナ(一般的な大きさ):0.4mg、1日摂取量の20%
- 豆腐:0.1mg/ 半カップ、1日摂取量の5%
他にも、
- アボカド
- 玄米
- 人参
- 魚
- 栄養強化されたシリアル
- ヘーゼルナッツ
- 牛乳
- 豚肉
- じゃがいも
- たね類
- 大豆
- ほうれん草
- 七面鳥
- 野菜ジュース
- 全粒粉
ビタミンB6欠乏症
ビタミンB6が不足することは滅多にないですが、 腸での吸収が十分でなかったり、エストロゲン、コルチコステロイド、抗けいれん薬などの薬の影響で 欠乏となることがあります。
長期間の過度のアルコール摂取が、甲状腺機能低下症や糖尿病、またビタミンB6の欠乏の原因となり得ます。
ビタミンB6欠乏症の兆候や症状には、
- 手足がひりひりしたり、無感覚になったり、痛みを感じる末梢神経障害
- 貧血
- けいれん発作
- 気分の落ち込み
- 混乱
- 免疫機能の低下
ペラグラのような症状を引き起こし、脂漏性湿疹や舌の炎症、口唇炎として知られるくちびるの皮膚のひび割れや炎症が起こります。
乳幼児では、抗てんかん薬による治療後であっても、けいれん発作の症状が続くことがあります。 末梢神経障害は時に、永久的に残ってしまいます。
ビタミンB6サプリメント
国立衛生研究所によると、アメリカの28-35%の人がビタミンB6を含むサプリメントを摂取しています。
サプリメントの形状には錠剤と、カプセル型があります。
国立衛生研究所は、アメリカの全世代において十分なビタミンB6が摂取されていると把握しています。 ビタミンB6の足りなくなる人の多くは、過度のアルコール摂取や、肥満、また妊婦や授乳中の人です。
ビタミンB6の摂り過ぎによる弊害については、確証は得られていません。
しかし、1日1-6gのピリドキシンを12-40カ月のあいだ経口摂取すると、深刻な進行性の神経障害や 体の動きのコントロールを失う事が報告されています。
アメリカ国民に対する2015年から2020年の食事のガイドラインでは、 多くの栄養素は、食べ物から摂ることを推奨しています。 また、栄養素が豊富なバランスの取れた食事と食物繊維の摂取を勧めています。
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