便秘について知っておきたいこと
米国では、便秘は最も一般的な消化不良障害の一つで、およそ250万人の人がこの問題をかかえています。(参考) 便秘の定義は、便が硬くて水分が少ない、あるいは1週間に排便が3回未満であることです。
便秘はなぜ起きるのか
結腸の主な役割は、食べたものが消化器官を通るときに、その水分を吸収することです。その後に便ができます。 排便のために、結腸の筋肉は便を直腸に徐々に押し出します。もし便が結腸内に長く残ると、硬くなって押し出すことが難しくなります。 乱れた食生活をしているとこのように便秘を起こすことがあります。
食物繊維と適度な水分摂取は便を柔らかくするために必要です。食物繊維が豊富な食品は一般的に植物由来のものです。繊維には水溶性と不溶性があります。水溶性の繊維は水で分解され、消化器官を通るときに柔らかいジェル状の物質になります。 不溶性の繊維は、消化器官を通るとき、ほとんどそのままの状態を保ちます。
その二種類の繊維は、便と混ざり便を柔らかくしながら、だんだん大きく重くしていきます。これによって便が直腸を通りやすくなるのです。ストレス、日々の習慣の変化、また結腸の筋収縮が鈍くなったりトイレに行くタイミングを逃したりすると、便秘につながることがあります。 便秘によくある原因は下記のようなものがあります。
- 食物繊維が少なく、特に肉・牛乳・チーズが多い食生活
- 水分を摂らない
- 運動不足
- 排便のタイミングを逃す
- 旅行や習慣の変化
- 高カルシウムの制酸薬や痛み止めなどの服薬
- 妊娠
原因となる疾患
便秘を引き起こす可能性がある原因疾患は以下の通りです。
- 脳卒中、パーキンソン病、糖尿病など特定の疾病
- 腸閉塞、過敏性腸症候群(IBS)、憩室症など結腸や直腸の疾患
- 下剤の使い過ぎや間違った使い方
- 甲状腺機能低下などホルモン系の疾患
便秘のサイン
普通の排便は人によって異なります。一日に3回排便する人もいれば、1週間に3回の人もいます。 しかし次のような症状がある場合は便秘かもしれません。
- 排便が1週間に3回未満
- 便が硬くて排便しにくい
- 排便時に痛みがある
- 排便後も残便感がある
- 便が直腸で詰まる
どんな人が便秘になりやすいのか
乱れた食生活や運動不足は、便秘の主な原因です。さらに次のような場合はリスクが高くなります。
- 年齢が65才以上:高齢者は活動が少ないことや、基礎疾患があったり、食生活が乱れる傾向があるため
- 寝たきり:脊椎損傷など特定の病状の人は排便が困難な場合がある
- 女性や子ども:女性は男性よりも、そして子どもは大人よりも便秘になりやすい傾向がある
- 妊娠中:ホルモンの変化や発育する胎児が腸を圧迫し便秘につながる場合がある
便秘はどのように診断するのか
便秘になった人の多くは、食生活を変えたり、運動量を増やしたり、市販の下剤を使ったりして自分で治そうとします。 しかし医師に相談せずに下剤を2週間以上使用するべきではありません。結腸のはたらきを下剤に頼ってしまう身体になってしまいます。 次のような状態になった場合は、かかりつけ医に相談してください。
- 3週間以上便秘が続いている ・便に血が混ざっている
- 腹部に痛みがある
- 排便時に痛みがある
- 体重が減少している
- 急に排便に変化が見られる
医師が症状、既往歴、投薬状況、基礎疾患などについて尋ねます。診察では、直腸検査と血液検査をして血球数、電解質、甲状腺機能について調べます。
深刻な場合、症状の原因を特定するため追加検査が必要となるでしょう。追加検査には以下のようなものがあります。
具体的な4つの便秘の検査方法
1. マーカー検査
マーカー検査は、結腸直腸通過検査とも呼ばれ、食べ物が結腸をどのように通過するかを検査します。 この検査では、レントゲン上で写る微細なマーカーを含んだ錠剤を飲みます。 数日かけて腹部のレントゲンをたくさん撮り、食物が結腸をどのように通って腸の筋肉がどの程度うまく機能しているかを医師が見ることができます。 検査の期間中、食物繊維が豊富な食生活をするよう求められます。
2. 直腸肛門内圧検査
直腸肛門内圧検査は、肛門括約筋の機能を調べるための検査です。この検査では、先端にバルーンが付いた細いチューブを肛門から挿入します。 チューブが中に入ったら、バルーンを膨らませてゆっくりと取り出します。この検査により、肛門括約筋の強度を測定し括約筋が正しく収縮しているかどうかを調べることができます。
3. バリウム注腸レントゲン
バリウム注腸レントゲンは、結腸を調べるための検査です。この検査では、検査前日の夜、腸を空にするために特別な液体を飲みます。また潤滑チューブを使って直腸にバリウムを注入します。バリウムが直腸と結腸を見やすくしてくれるため、医師はレントゲンで診察しやすくなります。
4. 結腸内視鏡検査
結腸内視鏡検査は、結腸を調べる検査です。この検査では、カメラとライトが付いたチューブ(結腸鏡)を使って結腸を調べます。 鎮静剤や鎮痛剤を使うことが多いため、検査のことは覚えておらず、痛みを感じることはありません。この検査を受けるには、1~3日間水分のみの食生活をして、腸を空にするために検査前日の夜、下剤を飲むか浣腸をします。
便秘の治療法と予防
便秘を治し予防するための最も手っ取り早い方法は、食生活の改善と運動量を増やすことです。次の方法も試してみましょう。
- 水・砂糖やカフェインの入っていない飲み物を毎日約1.5~2L摂取する
- 脱水症状につながるアルコールやカフェイン飲料を控える
- 繊維質が豊富な食品を摂取する(生の果物や野菜、全粒粉、豆類、プルーン、ブランシリアルなど。繊維質の1日の推奨摂取量は20~35g)
- 繊維質の少ない食品を控える(肉、牛乳、チーズ、加工食品など)
- 一日に30分程度の運動を、週5回ほど行う(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)
- 便意を感じたらタイミングを逃さない
- 必要に応じて食事に食物繊維サプリメントを活用する
- 下剤は慎重に使う(二週間以上使う際は医師に相談 )
- プロバイオティクス食品を摂取する(ヨーグルトやケフィアなど)
研究では、こういった食生活の改善が慢性の便秘の人に効果があることを示しています。 (参考)それでもまだ便秘に悩む場合は、医師に相談すると薬を処方してくれます。ある研究によれば、リナクロチド(商品名リンゼス)はIBS関連の便秘の症状がある患者に推奨されるとしています。(参考)この薬は腸内の分泌物を増やし、便を通りやすくするはたらきをします。
医師が便秘を起こすような特定の薬の服用を止めるアドバイスをする場合もあります。 より深刻な結腸・直腸の症状の場合は、直腸に詰まった便を手作業で取ったり、動きの鈍い括約筋を維持する治療をしたり、結腸で問題のある部分を取り除く手術をしたりする必要があります。
便秘の予後は?
予後とは、病気にかかった後の経過・結末に関する医学的な見通しのことです。
おおくの場合便秘は軽度なため、食生活の改善と運動で治ります。慢性便秘の場合やその他の腸の変化を伴う便秘の場合は、医師に相談することが大切です。
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