ナギイカダ (学名Ruscus aculeatus) は常緑低小木です。
西ヨーロッパ原産で特に硬い枝が特徴です。昔、肉屋がこの植物の葉を束ねて箒にして、細かく残った肉を掃除したであろうという話があり、この植物の名前の由来はこれから来ています。
また、ナギイカダは何千年も前から生薬として使用されてきました。
この植物の根と根茎にフラボノイド、その他多くの活性化合物が含まれており生薬の材料となります。 (参考)
これらの化合物により、ナギイカダには血流促進や痔の改善といった健康上の効能があると考えられています。
これからナギイカダの効能と副作用にについて説明しましょう。
効能
ナギイカダとその化合物、それと効能との関連を説明しましょう。
消炎作用について
炎症とは自身で治癒を促し、感染を止めるという人体の自然な反応です。
しかし、慢性の炎症は健康障害を起こし、ある種の疾患に罹るリスクを増強させます。(参考)
ナギイカダにはルスコゲニンといった化合物が含まれており、炎症の兆候や炎症によりできたと思われるダメージを抑える働きがあると言われています。 (参考)
例えば、試験管内での実験において、ルスコゲニンは関節炎の患者さんの炎症マーカー値を下げ、さらに軟骨の破綻を促す酵素の産生を止めることが分かりました。 (参考1、参考2)
動物を使った実験において、ルスコゲニンは糖尿病に関連した炎症マーカー値を下げ、炎症によって起こったダメージにも効果があることが分かりました。 (参考)
しかし、ナギイカダを人体に使用した試験はありません。確実な結論が出るには更なる研究が必要です。
血流促進効果について
ナギイカダには血流改善作用の可能性があるとされています。
例えば、慢性静脈機能不全(CVI)という病気は足に流れた静脈の血液が心臓にスムーズに戻らず停滞してしまうという深刻な状態をいいます。 (参考)
ナギイカダに含まれる成分には血管を収縮させ心臓まで血液が戻るのを助ける作用があります。 (参考)
事実、ナギイカダがCVI成人患者さんの下腿と足関節周囲の緊張感と腫脹を著しく改善したと研究で示されました。 (参考)
さらに、20件の研究解析の結果、ナギイカダに含まれる補助成分がCVI成人患者さんの足の痛み、痙攣、腫脹を著しく改善したことが分かりました。 (参考)
起立性低血圧症状改善について
起立性低血圧(OH)-立ち上がった時に突然起こる血圧の低下―は老年の人々によく起こる症状です。(参考)
一般的にOHで見られる症状には、立ち眩み、めまい、脱力感、吐き気といったものがあります。
通常では、下半身の血管が収縮してこの症状は起こらないようになっています。
しかし、加齢とともにこの反射が鈍くなりOHである可能性が出てきます。
ナギイカダが血管の収縮を助けることで、軽症のOHを防ぐことができます。(参考)
しかし、OHの患者さんにナギイカダを使用した研究例はまだありません。
患者さんにお薦めする前にはこういった研究結果が必要なのです。
痔になるリスクを下げる可能性について
特に老年の人たちにとって、痔はよくある症状です。
痔にならないために多くの人はナギイカダのような自然からの生薬を使うようになりました。
ナギイカダは痔や他の血管の病気の治療する代替薬品としても使用されています。 (参考)
ある研究によると、ナギイカダを含んだサプリメントを使用する人のうち69%が痔に効果があり痛みや腫脹、その他の症状が改善されたと言っています。 (参考)
しかし、痔の治療薬としてのナギイカダを調査した研究は一握りであり、今後更なる調査結果を要します。
Point: ナギイカダはCVI、OH、痔や慢性の炎症に症状改善に有効である可能性があります。現在、人に使用した研究結果が待たれているのです。
副作用
人に使用したナギイカダの研究はまだあまりありませんが、副作用が少ない―安全であるという結果があります。 (参考)
まれにではありますが、服薬後に胃の不快感、嘔気、下痢、嘔吐を起こすことがあります。 (参考1 参考2)
ナギイカダ服用後に糖尿病性ケトアシドーシスを起こし致命的な状態となった糖尿病の女性の例が報告されていますが、ナギイカダが原因であるかどうかはっきりしていません。 (参考)
ナギイカダは反栄養素であるサポニンを含んでいます。 この反栄養素によりナギイカダに含まれた亜鉛や鉄といったミネラル成分の吸収が減らされます。(参考)
小児や妊娠中や授乳中の女性にナギイカダの使用は薦められません。体力のない人への安全性を確認した調査はあまりありません。
腎臓や高血圧の薬を服用中の方はナギイカダ使用前には医師へ相談してください。これらの薬とナギイカダとの相互反応が起こることも考えられます。
ナギイカダの使用および最近使用している薬について気になることがあれば、まずは医師に相談することが最善です。
Point: ナギイカダはほとんどの人には問題ないと見られていますが、ある程度の量を使用する、または医学的に異常と思われる状態である場合の使用については医師の診察をお薦めします。
推奨使用量
ナギイカダについて正式に推奨されている使用量は現在決まっていません。
しかし、以下の使用量がもっとも効果的と考えられます。(参考)
- 乾燥根:1日に1.5~3g。
- 錠剤またはカプセル:1日に200mg(4分の1濃縮)を2~3回に分けて服用。
- 抽出液およびチンキ剤:ナギイカダ1に対して抽出液2の割合で1日に3~6ml服用。 またはナギイカダ1に対し抽出液5の割合で1日に7.5~1ml服用。
ナギイカダの多くの研究では、ナギイカダとヘスペリジンメチルカルコン、アスコルビン酸(=ビタミンC)の混合が使用されています。
これらのカプセルは乾燥抽出物150mgを含有し1日に2~3回服用します。
必ずナギイカダ商品に添付されている説明書に従ってご使用してください。
Point: ナギイカダの推奨使用量が明らかにされていないので、各研究を基にした使用量が以上になります。
まとめ
ナギイカダはハーブ剤でありCVI、OH、痔、慢性の炎症症状を改善することができます。
安全であり副作用はあまり認められていません。
それでも、特に腎臓や高血圧の薬剤の使用している場合には使用前に医師に相談のうえ使用しましょう。使用量は状態により変わります。
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