はじめに
あなたはこれまで、モリブデンという言葉を聞いたことがないかもしれません。しかしこれは健康に不可欠なものです。
体に必要なのはごく少量ですが、生体機能にとって鍵となる重要な成分です。それなしでは、有害な亜硫酸塩や毒が体内に増大していくでしょう。
モリブデンは食事から摂取できますが、栄養補助食品もまた有名です。しかし栄養補助食品であっても多量の摂取は問題になり得ます。
この記事ではこのごく微量の元素について知っておく必要があることすべてをお伝えします。
モリブデンとは
モリブデンは鉄やマグネシウムのように体に不可欠なミネラルです。
それは土の中に存在し、それらの植物を食べる動物と同様に、植物を食べる時に食事から取り入れられます。
土の質によるのですが、いくらかの食物には特定のモリブデンが含まれるというデータもわずかにあります。
その量は変わりますが、最もモリブデンが豊富に含まれているのは豆類やレンズ豆、穀物、臓物、特に腎臓や肝臓です。あまり含まれていないのは動物性食品や果物、多くの野菜です。(参考)
研究によると、私たちの体はある特定の食べ物、特に大豆製品からはうまく吸収できないとされています。しかしながら他の食べ物には豊富に含まれているので、そんなに憂慮すべき問題ではあません。(参考)
あなたの体はごく少量を必要とするだけですし、多くの食べ物に豊富に含まれているので、モリブデンが不足することは滅多にありません。そのため、特定の疾患を抱えていない限り、栄養補助食品を必要とすることはありません。
Point: モリブデンは豆類や御供物、臓物のように多くの食べ物に見られます。私たちの体はごく少量必要とするだけなので、それが不足することは極めて稀です。
モリブデンは酵素の共同因子として働く
モリブデンは体内の多くの働きに対してとても重要です。
あなたがそれを摂取すると、胃や腸から血液に吸収され、そして肝臓にや腎臓、その他の器官へ運ばれます。
このミネラルのいくつかは肝臓や腎臓に蓄えられますが、多くはモリブデン共同因子に変換されます。余剰なモリブデンはそれから尿として排出されます。(参考)
モリブデン共同因子は 四つの不可欠な酵素を活性化します。それは体内の化学反応を司る生体分子です。以下がその四つです。
- 亜硫酸オキシダーゼ:体内に危険な亜硫酸塩が溜まるのを防ぐため亜硫酸塩を硫酸塩へ変換する。(参考)
- アルデヒド・オキシダーゼ:体に毒となりうるアルデヒドを分解する。また、アルコールやがんの治療において使われるようないくつかの薬品が肝臓を破壊することから守る。(参考1、参考2、参考3)
- キサンチン酸化酵素 :キサンチンを尿酸に変換する。この反応は私たちがもはやそれ以上必要ないとき、DNAの塊を作るヌクレオチドが壊れるのを防ぐ。それらは尿として排出される。(参考)
- ミトコンドリアのアミドキシム還元成分:この酵素の働きは完全にはわかっていないが、代謝の解毒作用の副産物と考えられている。(参考)
モリブデンの亜硫酸を分解する働きはとりわけ重要なものです。
亜硫酸は食物の中にも自然に存在し、防腐剤として添加されることもあります。もしそれが体内に蓄積すれば、アレルギー反応や下痢、肌荒れ、呼吸困難などを引き起こすこともあるでしょう。(参考)
Point: モリブデンは四つの酵素の共同因子として働きます。。それらの酵素の働きは亜硫酸の処理や老廃物や毒素を体内で分解することなどを含みます。
モリブデンが不足する人はごくわずか
栄養補助食品は広範囲に有効ですが、 モリブデン不足は健康な人々には滅多に起こりません。
アメリカでの、食事からの平均摂取量は女性の場合一日あたり76mcgで、男性は109mcgです。
それは一日あたり45mcgというRDAが推奨する数値を上回っています。(参考)
他の国でのモリブデンの摂取量は異なりますが、それでも推奨量を上回るものです。(参考)
モリブデン不足によるいくつかの例外的なケースがあります。それは不調などの健康状態と関係しています。
例えば、チューブを通じて人工栄養を受け取っているような入院患者、どんなモリブデンも摂取していません。これは頻拍や呼吸、嘔吐、失見当、昏睡など重要な症状の結果によるものです。(参考)
中国の小さな県では、食道がんがアメリカより100倍も多く発生しています。それはこのエリアの土のモリブデン量が低く、食事によっても長期間に渡って少量しか摂取できなかった結果であるとわかりました。(参考)
さらに言えば、食道がんの危険性が高い北イランや南アフリカのような 他のエリアでも、髪の毛や爪のモリブデン量が他より低いことがわかっています。(参考1、参考2)
しかし、それはあくまで特殊な例であり、不足することは多くの人々にとって問題ではないと覚えていてください。
Point: ごくわずかなケースですが、土の中のモリブデン量が少ないことと食道がんは関係しています。しかしながら、平均摂取量はRDAの推奨する量より多く、不足することは非常に稀です。
モリブデン共同因子の不足は深刻な症状を引き起こす
ごく稀ですが、モリブデン共同因子を作る能力が全くない赤ちゃんが生まれてくるというようなモリブデン共同因子の不足が起こります。
したがって、彼らは前述したような四つの重要な酵素を活性化することができません。
それは遺伝子突然変異の劣性遺伝によって引き起こされます。だからその子供は成長のために両親から疾患遺伝子を継承しなければならなかったのでしょう。
この疾患を持った赤ちゃんは生まれた時は普通に見えますが、一週間以内に治療しても改善されない発作が起こります。
分解することができないので、血中に亜硫酸がたまるのです。これが脳の異常な状態や深刻な発育不良へと導きます。
悲しいことに、この病を患った赤ちゃんはそう長く生きられません。
ただ、幸運なことに、これが起こる可能性は極めて稀です。2010年初期には、世界的に報告された例はわずか100ほどでした。(参考1、参考2)
Point: モリブデン共同因子が不足すると脳の以上や発育不要、幼少期の突然死などを引き起こします。ただ、幸運なことに、それが起こることは極めて稀です。
モリブデンの多量摂取が引き起こす深刻な副作用
多くのビタミンやミネラルと同様に、推奨量以上のモリブデンを摂取しても有効に活用できません。
事実、それはあなたの健康を害する可能性があります。
許容でいる摂取量は日常で摂取する栄養素の中で最も高いので、多くの人にとっては健康を害するような自体は起こり得ないでしょう。ただ、日常的に上限を上回ることは推奨されていません。
モリブデンの上限は一日あたり2000mcgです。(参考)
モリブデンの毒性は稀で、人体を対象にした実験は限界があります。しかしながら動物実験では、たくさん摂取し続けると 成長の抑制や腎不全、不妊、下痢などが起こりました。(参考)
稀なケースですが、モリブデンの栄養補助食品は許容される摂取量以内だったとしても、人体に深刻な副作用を起こす可能性があります。
あるケースでは、ある男性が18日以上にわたり一日あたり300-800mcgのモリブデンを摂取したところ、発作や幻覚、永久的脳障害が起こりました。(参考)
多量の摂取はその他の様々な疾患を引き起こす可能性があります。
痛風様疼痛発作
多量のモリブデンはキサンチン酸化酵素の働きによって尿酸の蓄積を引き起こします。
一日あたり10000-15000mcg、つまり推奨量の5~7倍を摂取した アメリカ人のグループは、痛風様疼痛発作になったという報告があります。(参考)
痛風様疼痛発作は血中の尿酸が高レベルになった時に起こります。それは関節付近に痛みや腫れを起こすような小さな結晶を作ります。
骨の健康状態の悪化
研究は、多量のモリブデンは骨の成長や骨ミネラル濃度を低下させる可能性があるとしています。
現在のところ、人体を対象にした研究はありません。しかしながら、1469人を対象にした観察実験では興味深い結果が出ました。
モリブデンの摂取量が増えるにつれて、50代以上の女性では腰椎の骨ミネラル濃度が低下したのです。(参考)
動物実験でもこのことは裏付けれています。
ある研究では、ねずみに多量のモリブデンが与えられました。摂取量が増えるにつれ、骨の成長度は減ったのです。(参考)
アヒルを使った同様の研究では、多量のモリブデンは足の骨の故障と関連づけられました。(参考)
妊娠率の低下
研究はまた、多量のモリブデンと妊娠のし辛さには相関関係があるとしています。
不妊治療院を通じて採用された219人の男性を含む観察研究では、血中のモリブデンの増加と精子の数や質の低下にはかなり関係があると示されました。(参考)
他の研究でもまた、血中のモリブデンの増加はテストステロン値の現象と関係していました。亜鉛の値の低下と組み合わさるとき、テルトステロン値は37%減少ととてつもなく大きく関係していました。(参考)
ネズミでは、多量の摂取は妊娠率の現象や子供の発育不全、生死の異常と関連していました。(参考1、参考2、参考3)
研究ではいくつもの疑問が上がりましたが、さらなる検証が必要です。
Point: レアなケースですが、多量のモリブデンは発作や脳へのダメージと関係しています。アヒルを使った初期の研究では、骨のミネラル密度が減少したり妊娠率が低下するという現象と関連していると示唆されました。
モリブデンはいくつかの疾患の治療薬として使われる
ある特定の状況では、モリブデンは体内の銅の量を減らす助けをします。このプロセスはいくつかの 慢性疾患の治療薬として調査されてきました。
牛や羊などの反芻動物では、余分なモリブデンは銅の不足の結果として見られました。
反芻動物特有の生体構造のため、モリブデンと硫黄はチオモリブデンと呼ばれる化合物の形で組み合わされます。これらが銅の吸収を防ぐのです。
人間の消化システムは異なるため、人間の栄養価の面では考えられません。
しかしながら、同じ化学反応がテトラチオモリブデンと呼ばれる化合物として発達するために使われてきました。
テトラチオモリブデンは銅の値を減らす能力があり、ウィルソン病やがん、多発性硬化症の治療薬になり得るとして研究されています。(参考1、参考2、参考3、参考4、参考5、参考6)
Point: モリブデンと硫黄の化学反応の生成物は銅の値を減らし、がんや多発性硬化症のような慢性疾患の治療薬として研究され続けている。
モリブデンはどのくらい必要?
モリブデンは多すぎるのも少なすぎるのも大きな問題だということは明らかです。
では、実際どのくらい必要なのでしょうか?
血液と尿の量は必ずしも状況を反映しているわけではないので、体内のモリブデン量を測るのは困難です。
そのため、研究のデータから必要量を見積もってきました。
下記が異なる年代のモリブデンの必要な摂取量です。
子供
- 1〜3歳:一日17mcg
- 4〜8歳:一日22mcg
- 9〜13歳:一日34mcg
- 14〜18歳:一日43mcg
大人
19歳以上のすべての成人:一日45mcg
妊婦や授乳中の女性
一日50mcg
Point: 研究では、大人と子供に対するモリブデンの摂取量を見積もっています。妊娠中や授乳中の女性も同様です。
まとめ
モリブデンはレンズ豆や穀物、臓物などにたくさん含まれる不可欠な栄養素です。
有害な亜硫酸塩を分解したり体内に毒素が溜まることを防ぐ酵素を活性化します。
多量に摂取したり不足したりする人々は極めて稀ですが、どちらも深刻な影響をもたらします。
モリブデンは多くの食べ物に含まれているので、平均して日々の必要量は摂取できます。そのため多くの人はサプリメントとしての摂取を避けるべきです。
あなたがたくさんの自然食品を含む健康的な食事をしている限り、モリブデンについては懸念すべき栄養素ではありません。
モリブデンをサプリで試してみたい場合は、「ディアナチュラ 29アミノ マルチビタミン&ミネラル」などがあります。ただし、重度の症状など適切な治療が必要とされる場合はサプリメントに頼らず、医療機関で診断を受けるようにしましょう。
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