フッ化物とは?
フッ化物は骨や歯に含まれるミネラルですが、水、土壌、植物、岩、そして大気と自然界にも広く存在しています。
フッ化物は歯の一番外側の層であるエナメル質を強くするために、歯科で一般的に使用されています。しかし、虫歯を防ぐだけでなく、アメリカや多くの国々の水道水にも少量加えられ、水道水のフッ素化がされています。
この記事では、フッ化物の使用方法や安全性を巡る議論を紹介します。
フッ化物の使用方法は?
人の健康においては、歯科衛生の改善が目的でフッ化物は主に使用されています。また、住んでいる地域の水道水や歯磨き粉、口内洗浄液、そしてサプリメントなどの市販薬に含まれている場合もあります。
虫歯が良くなる人は、歯科医からフッ化物入りの口内洗浄液を勧められるかもしれません。このようなマウスウォッシュには、市販薬よりもより高濃度のフッ化物が通常含まれています。また、フッ化物は以下のものにも含まれています。
- PETスキャン(放射断層撮影法スキャン)などの医療用画像スキャン
- 洗浄液
- 殺虫剤
- テフロン、スチール、そしてアルミニウム製品の製造
フッ化物の効果は?
フッ化物は歯にとても有効で、これには以下の理由があります。
- 弱くなった歯のエナメル質を再石灰化するから
- 歯のエナメル質のミネラル喪失を遅らせるから
- 初期の虫歯の修復効果があるから
- 有害な口腔細菌の増殖防止をサポートするから
口の中の細菌が糖と炭水化物を分解すると、歯のエナメル質中のミネラルを奪う酸が産生されます。このミネラルの喪失を脱灰と呼び、弱くなった歯のエナメル質は、虫歯の原因となる細菌に対して歯を無防備な状態にしてしまいます。フッ化物は歯のエナメル質を再石灰化し、虫歯を防ぎ、初期の虫歯を修復する働きを助ける役目を果たします。
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によると、1960年代後半〜1990年代初期にかけて、12歳のアメリカ人の欠損歯と虫歯の平均数が68%下がっています。これは、水道水へのフッ素添加水の導入と拡大、そして歯磨き粉やデンタルケア製品へフッ化物が添加されたことが要因となっています。 (参考)
フッ化物の副作用は?
フッ化物は天然由来の化合物ですが、大量に摂取すると副作用を引き起こす可能性があります。アメリカでは、水道水のフッ素濃度は通常0.7ppmで、これは2015年現在での最大許容量です。
歯のフッ素症
歯のフッ素症は、歯の形成期にフッ化物を使いすぎることによって起こり、症状として歯の表面に白斑ができます。しかしこの症状以外には、より深刻な症状が出ることはありません。
永久歯がまだ生えそろっていない8歳以下の子供にだけ発症する傾向があります。これは、フッ素添加水よりもかなり多くのフッ化物が含まれている歯磨き粉を、子供が飲み込みやすいのも原因だと考えられています。子供が歯を磨く時には、大量の歯磨き粉を飲み込まないように指導することで、歯のフッ素症のリスクを軽減することができます。
骨格フッ素沈着症
骨格フッ素沈着症は歯のフッ素病と似ていますが、この病気は歯ではなく骨に症状が現れます。初期症状には、関節の痛みとこわばりがあり、症状が進むと骨の構造をゆがめ、靭帯の石灰化を引き起こします。これは長期に渡り高濃度のフッ化物にさらされたことで起こり、飲料水が原因であることが多く報告されています。 (参考)
あるケースでは、火事や爆発などの事故による水汚染の場合もあるし、アフリカやアジアの大部分を含んだ地域では、フッ化物を含んだ大量の地質堆積物があり、これが飲料水を汚染しているケースもあります。
稀ではありますが、アメリカでもいくつかの症例が報告されています。52歳のアメリカ人のケースでは、歯磨き粉を飲み過ぎ骨格フッ素沈着症になったことが分かっています。(参考)
フッ素添加水は危険なのか?
飲料水に低濃度のフッ化物を添加した際の安全性について、何百もの調査が世界中で行われています。しかし、軽度の歯のフッ素症が時折報告される以外は、アメリカで地域の水源に添加されたフッ化物が原因で健康被害が起きたという証拠はありません。しかし、フッ素添加水は以下のような健康被害を引き起こすと主張する人もいます。
- 子供達のIQ(知能指数)の低下
- 骨肉腫
- 関節炎
- 腎臓病
これらの主張に対する調査には、全く異なる結果が報告されています。例えば、2006年の調査では、子どもの頃にフッ素添加水にさらされた男性は、骨肉腫のより高い発生率との関係性が見つかっています。 (参考) しかし、2011年と2016年の調査では、フッ素添加水と骨肉腫の発生の関連性は発見されていません。 (参考)
また、フッ素添加水と低IQの関連性についても賛否両論があります。2012年に行われた既存研究の再調査では、関連性の可能性があるものの、より規模の大きい、そして質の高い研究が必要だと指摘しています。 (参考)
もしフッ化物の摂取が心配であれば、フッ化物をできるだけ避ける方法がいくつかあります。
- ボトル入り飲料水などに飲み水を変える
- 水道水のフッ化物を取り除くフィルターを取り付ける。(AmazonなどのECサイトで購入可能です。)
- フッ化物の入っていない歯磨き粉を使用する。(こちらもアマゾンで購入可能です。)
まとめ
フッ化物は天然由来の化合物でエナメル質を強くするなど、虫歯予防として多くのデンタルケア製品に使用されています。また、アメリカの多くの都市では、水道水にも少量加えられ、水道水のフッ素化がされています。飲料水に添加された量のフッ化物は比較的安全だとされていますが、大量のフッ化物の摂取はいくつかの健康被害との関連性が疑われています。
もしフッ化物の摂取量が心配であれば、地方自治体に飲料水に含まれるフッ素について聞くことをお勧めします。また、特に小さいお子様がいる家庭では、フッ素の入っていないデンタルケア製品を選びましょう。
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