はじめに
人間の体内には約40兆個の細菌がいるといわれています。
そのほとんどが腸内に存在する腸内微生物叢(ちょうないびせいぶつそう)と呼ばれる細菌で健康に重要な役割を果たしています。ただし腸内の細菌には、さまざまな病気の原因になるタイプもあります。(参考)
興味深いことに、食べるものが体内の細菌のタイプに大きく影響します。ここで腸内細菌を改善するための、科学をベースにした10の方法を紹介します。
1.さまざまな種類の食品を食べる
腸内には何百種類もの細菌がいます。健康を維持するため、それぞれの細菌にはそれぞれの役割があり、成長には異なる栄養が必要です。
一般的に、多様な微生物叢があると健康になると考えられています。体内の細菌の種類が多いほど、健康への効果が大きくなるためです。(参考1)(参考2)(参考3)(参考4)
食事で多くの種類の食品を摂取すると、多様な微生物叢(びせいぶつそう)が作られます。(参考1)(参考2)(参考3)
2.野菜、豆科の食品、豆、果物をたくさん食べる
果物は、健康な微生物叢の最良の栄養源です。(参考)。体内で消化されない食物繊維を多く含んでいます。(参考)食物繊維は腸内の特定の細菌で消化され、成長します。
豆や豆科の食品にも、非常に高い割合で食物繊維が含まれています。
腸内細菌に良い食物繊維を多く含む食品は以下です。
- ラズベリー
- アーティチョーク
- グリーンピース
- ブロッコリー
- ひよこ豆
- 平豆
- 豆(いんげん豆、ピント豆、白豆)
- 全粒粉
果物や野菜中心の食事をしていると病原菌の増加を防ぐことができる、という研究があります。(参考)
りんご、アーティチョーク、ブルーベリー、アーモンド、ピスタチオはすべて、人体内でビフィズス菌を増やすことが分かってきました。(参考1)(参考2)(参考3)(参考4)
ビフィズス菌は腸炎を防ぎ、腸の健康促進を助ける有益な細菌と考えられています。(参考)
3.醗酵食品を食べる
醗酵食品は、微生物の力で作られた食品です。(参考)
醗酵の過程では通常、細菌やイースト(酵母)が食品内の糖分を有機酸またはアルコールに変換します。
醗酵食品の例は以下です。
- ヨーグルト
- キムチ
- ザワークラウト
- ケフィア
- 昆布茶
- テンペ
このような食品の多くは、健康に有益な細菌の一種である乳酸菌を多く含んでいます。
ヨーグルトを大量に食べる人の腸内には、たくさんの乳酸菌があることがわかっています。(参考)このような人たちは、炎症や多くの慢性疾患に関連する腸内細菌が少なくなっています。(参考)
同様に、ヨーグルトの消費は腸内細菌の働きを改善し、子供でも大人でも乳糖不耐症の症状が改善されるという多くの研究があります。(参考1)(参考2)(参考3)(参考4)
特定のヨーグルト製品は、過敏性腸症候群の人の病原菌も大幅に減少させている可能性があります。
ヨーグルトが微生物叢の機能や構成を強化していることを明らかにした研究が2つあります。(参考)
ヨーグルト、特にフレーバー・ヨーグルトには大量の糖分が含まれていることに気をつけてください。
プレーンな天然ヨーグルトが最良です。このタイプのヨーグルトはミルクと細菌を混ぜただけで、「種菌」と呼ばれることがあります。
さらに、醗酵した豆乳はビフィズス菌や乳酸菌のような有益な細菌の成長を促進し、他の病原菌の量を減らします。(参考)キムチも腸内菌叢に有益です。(参考1)(参考2)
4.人工甘味料を食べ過ぎない
人工甘味料は、砂糖の代用品として広く使われています。しかし、人工甘味料は腸内微生物叢に良くない影響があるという研究が発表されています。
ネズミを使った研究で、人口甘味料のアスパルテームは体重の増加は抑えるが血糖値を上げ、インスリン反応を悪化させるという報告があります。(参考)
アスパルテームを与えられたネズミは腸内のクロストリジウムや腸内細菌も増えています。クロストリジウムや腸内細菌の数が非常に多いと、病気の原因になります。
マウスや人でも同じような研究結果が発表されています。人工甘味料による微生物叢の変化が、血糖値に悪影響を与えているという報告があります。(参考)
5.プレバイオティクス食品を食べる
プレバイオティクスは、腸内の有益な微生物の成長を促進する食品です。(参考)
プレバイオティクスは主に食物繊維と複合糖質で、ヒト細胞が消化することはできません。代わりに特定の細菌が分解し、栄養として使います。
プレバイオティクスは多くの果物や野菜、全粒粉に含まれていますが、単体でも存在します。
難消化性でんぷんもプレバイオティクスです。(参考)このタイプのでんぷんは、小腸では吸収されません。大腸まで送られ、そこで微生物叢によって分解されます。
プレバイオティクスがビフィズス菌を含む健康に良いさまざまな細菌の成長を促すことを、多くの研究が証明しています。
研究の多くは健康な人で実施されましたが、いくつかの研究ではプロバイオティクスが特定の病気の人にも有益なことが証明されています。
例えば特定のプレバイオティクスは、肥満の人のインスリンやトリグリセリド、コレステロール値を下げることができます。(参考1)(参考2)(参考3)(参考4)(参考5)(参考6)(参考7)
この結果は、心臓病や糖尿病のような肥満による多くの病気のリスク要因を、プレバイオティクスが減少する可能性を示しています。
6.全粒粉を食べる
全粒粉には多くのの食物繊維や ベータグルカンのような消化されない炭水化物が含まれています。(参考1)(参考2)
このような炭水化物は小腸では吸収されず、大腸に送られます。
大腸では微生物叢によって分解され、特定の有益な細菌の成長を促進します。
全粒粉は人のビフィズス菌や乳酸菌、バクテロイデスの成長を促進します。(参考1)(参考2)(参考3)(参考4)(参考5)
このような研究では、全粒粉は満腹感を増し、炎症や心臓病のリスク要因を減らしています。
7.野菜中心の食事にする
動物性食品を含む食事は、野菜中心の食事とは違うタイプの腸内細菌の成長を促進します。(参考1)(参考2)
ベジタリアンの食事は腸内微生物叢に有益だという多数の研究があります。これは、食物繊維の含有量が高いためと考えられます。
ベジタリアンの食事は、肥満の人の病原菌のレベルを下げ、体重や炎症、コレステロール値を下げるという研究もあります。(参考1)(参考2)(参考3)
他の研究では、ベジタリアンの食事が大腸菌のような病原菌を著しく減らすことも分かっています。(参考)
しかし、ベジタリアンの食事が腸内微生物叢に有益なのは、単に肉を摂取しないためだけなのかは明確になっていません。(参考)また、ベジタリアンは肉食をする人よりもライフスタイルが健康な傾向があります。
8.ポリフェノールが豊富な食品を食べる
ポリフェノールは植物性化合物で、血圧や炎症、コレステロール値、酸化ストレスを下げるという多くの健康上の効果があります。(参考)
ポリフェノールは、ヒト細胞が消化することはできません。効果的に吸収されずにほとんどが結腸に運ばれ、そこで腸内細菌によって消化されます。(参考1)(参考2)
ポリフェノールを多く含む食品
- ココアとブラックチョコレート
- 赤ワイン
- ブドウの皮
- 緑茶
- アーモンド
- 玉ねぎ
- ブルーベリー
- ブロッコリー
ココアのポリフェノールは、体内のビフィズス菌や乳酸菌の量を増やし、クロストリジウムの量を減らします。
さらに微生物叢の変化により、トリグリセリドや炎症のマーカーのC反応性タンパク質のレベルが下がります。(参考)
赤ワインのポリフェノールにも同じような効果があります。(参考)
9.プロバイオティクス・サプリメントを摂取する
プロバイオティクは生きている微生物で、通常は細菌です。摂取すると固有の健康効果があります。(参考)
多くの場合、プロバイオティクは腸に常在しませんが、微生物叢全体の構成を変え、代謝を助けて健康を維持します。(参考)
7つの研究のレビューでは、プレバイオティクスは健康な人の腸内微生物叢の構成にはほとんど影響していないことがわかっています。しかし病気によっては、プレバイオティクスが腸内微生物叢を改善することが証明されています。(参考)
微生物叢の変化によるプロバイオティクの有効性に関する証拠が63の研究レビューに見られます。しかし最大の効果は、明らかに損傷した微生物叢を健康な状態に戻すということです。(参考)
健康な人の腸内では、プロバイオティクは細菌のバランス全体に大きな影響はないという研究もあります。
しかし、プレバイオティクスが腸内細菌の機能を改善し、生成する科学物質のタイプの改善を示す研究もいくつかあります。(参考)
最後に
あなたの腸内細菌は、多くの観点から健康にとても重要です。
破壊された微生物叢はさまざまな慢性疾患を引き起こすということが、多くの研究で証明されています。
健康な微生物叢を維持する最良の方法は、果物や野菜、豆科の食品、豆、全粒粉のような植物に由来する新鮮な自然食品を食べることです。
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