エンテロコッカス・フェカーリスとは
「エンテロコッカス」は”腸球菌”という意味です。腸球菌は、消化器官に生息する細菌の一種です。腸球菌は少なくとも18種類存在すると言われており、一般的な腸球菌の1つとしてエンテロコッカス・フェカーリスが挙げられます。エンテロコッカス・フェカーリスは、口や膣内にも生息しています。弾力性があるため、高温・塩分・酸性の環境でも生存ができます。
フェカリス菌は通常の健康状態では感染症を引き起こす原因となることはありません。しかし、体の他の部分に広がると深刻な感染症を引き起こすこともあります。手術中に細菌が血液や尿・傷口に入ると、そこから敗血症・心内膜炎・髄膜炎など、より深刻な感染症を引き起こします。
基礎疾患がある人や、免疫力が低下している場合、感染症を発症するリスクは高まります。
フェカリスの症状とは
症状は感染症の種類によって異なり、また次のものがあります。
- 熱寒
- 気疲労
- 頭痛
- 腹痛
- 排尿時の痛みや灼熱感
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 速い呼吸や息切れ
- 呼吸時の胸痛
- 肩や首のこり
- 歯ぐきの腫れ発赤、圧痛、出血
関連のある感染症
フェカリス菌は下記のような感染症も引き起こします。
菌血症
血流中に細菌が検出される状態のこと。
心内膜炎
細菌が心臓の弁や心内膜の小さな傷などに付着し、病巣をつくることによって炎症を起こしたり、弁を壊したりする感染症のこと。
髄膜炎
脳や脊髄を覆っている髄膜に起こる炎症のこと。
歯周炎
重度の歯肉炎で、歯茎の炎症が歯を支える骨まで広がっている状態のこと。歯茎が腫れ、膿が出たり、葉がぐらついたりすることも。歯の一部が失われている可能性もあり、元の状態に戻すことは難しいとされている。
尿路感染症
尿路に細菌が侵入し、増殖して炎症をおこした状態のこと。症状として、38℃以上の高熱、腰痛、吐き気や嘔吐、排尿痛、残尿通などがある。
創傷感染症
手術などで傷口に細菌が入ると起こる感染症のこと。発赤・腫脹・熱感・疼痛の炎症症状(4つの炎症症状)が生じる。 ほとんどの場合、病院内でこれらの感染症にかかることが多いです。
E.フェカリスの治療法
フェカリス菌は抗生物質で治療しますが、問題は細菌が多くの種類の抗生物質に耐性をもつようになったことです。これは、”一部の抗生物質がもはやこれらの細菌には効かなくなった”ということを意味します。 適切な抗菌薬を確実に使用するために、医師は細菌のサンプルを採取することがあります。
そしてそのサンプルを検査室で精査し、どの抗生物質が最もよく効くかを調べるのです。 アンピシリンはフェカリス菌の感染症の治療に用いられる最も望ましい抗生物質です。 その他の抗菌薬の選択肢には以下のものがあります。
- ダプトマイシン
- ゲンタマイシン
- リネゾリド
- ニトロフラントイン
- ストレプトマイシン
- チゲサイクリン
- バンコマイシン
フェカリス菌はバンコマイシンにも耐性を示すことがあります。バンコマイシンに反応しない菌株は、バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE) と呼ばれます。この場合、リネゾリドまたはダプトマイシンが治療選択肢となります。
感染予防の対策
フェカリス菌に感染しないようにするための対策についてご紹介します。
- トイレ使用後は、指先や親指など手をよく洗う
- 食べたり飲んだりする前に手を洗う
- 石鹸、手ぬぐい、タオル、かみそりなど、他の人との共有を避ける
- 他の患者のベッドに座るのを避ける
- 他の患者のトイレや汚れているトイレの使用は避ける
- トイレを定期的に清掃
- ドアノブやリモコン、電話など共有するものの消毒
- 入院患者、スタッフ、訪問者による頻繁な手洗い
病院内で良好な衛生環境で過ごすことは感染リスクの低減につながります また、日常ではぬるま湯と石けんで手を洗います。石鹸と水が手に入らない場合は、アルコールベースの手指消毒剤を使用しましょう。
まとめ
この記事では、フェカリス菌について感染の原因、症状、そして予防対策についてご紹介してきました。フェカリス菌は多くの種類の抗生物質に耐性を持つようになり、抗生物質耐性の感染症は治療が困難です。すでに病気の状態で感染すると治療が難しくなります。フェカリス菌の伝播を防ぐためにも、清潔な衛生環境での生活を心掛けましょう。
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