はじめに―脂肪はどのように消化される? 消化を早めることはできる?
脂肪は、長年にわたって不当な非難を受けてきましたが、実は身体には必要不可欠なものです。
脂肪は、身体の機能をサポートし、身体に必要なエネルギーを与えてくれます。
また、重要なビタミンを吸収したり、炎症を沈めたり、脳の健康を促すなど様々な役割を行う身体に必要不可欠な脂肪酸を作ります。
脂肪を消化されるのに必要な時間は、個人差があり、男性と女性の間でも異なります。
メイヨー・クリニックの研究者達が1980 年に調べたところ、食べてから排泄までの平均移行時間は、約40時間でした。
男性の平均移行時間は33時間で、女性の移行時間は47時間でした。
一旦、消化のために分解されると、脂肪の一部はすぐにエネルギーとして使われますが、残りは蓄積されます。
運動したり、十分に食事を摂っていないなどといった理由から、身体が余分にエネルギーを必要とする際には、その残った脂肪がエネルギーになるよう分解されるのです。
脂肪は他の食品よりも消化に時間がかかり、また、摂取した脂肪の種類によっても、かかる時間は異なります。
食物の脂肪には以下の種類があります:
- 飽和脂肪
- トランス脂肪
- 一価不飽和脂肪酸
- オメガ3脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸
トランス脂肪と飽和脂肪は身体に悪いもので、悪玉コレステロールを上昇させます。
脂肪はどのように消化される?
脂肪を消化する過程は、食物を口に入れた瞬間から始まります。 脂肪消化のプロセスを最初から最後までみてみましょう:
1. 口
消化のプロセスは、食べ物を口の中で噛んだ瞬間から始まります。
食べ物を歯で細かくし、唾液で食物に水分を与えて、食道を通り易くし、スムーズにお腹に届けます。
唾液にも、食物に含まれる脂肪を分解する酵素が含まれています。
2. 食道
食べ物を飲み込むと、蠕動と呼ばれる筋肉の縮小が起こり、それによって、食物が食道を通ってお腹に入ります。
3. お腹
食物をさらに分解する酸と酵素が、胃の内壁から生成されることで、食物は小腸まで届きます。
4. 小腸
脂肪の消化は大半が小腸で行われます。
そして、栄養素の大半がここで吸収されるのです。
脂肪や炭水化物、たんぱく質を分解する酵素は、膵臓で生成されます。
肝臓で作られる胆汁によって脂肪やビタミンの消化を助けます。
胆汁は胆嚢で貯蔵されます。
これらの消化液は、管を通って小腸に届き、完全に脂肪を分解するのです。
このプロセスの間、脂肪とコレステロールは、カイロミクロンという小さな分子にまとまります。
消化された脂肪はどうなる?
脂肪が消化された後、脂肪酸はリンパシステムを通り、血液によって身体中に届き、エネルギーとして使われるか、貯蔵される、もしくは細胞の修復や成長に使われます。
リンパシステムでは、感染から身体を守るため、脂肪酸を吸収します。
アダポウスと呼ばれる脂肪組織は、カイロミクロンからトリグリセリドを取り込みます。
カイロミクロンは、小さくなっていき、最終的にはコレステロールがたっぷりの状態になって残り、肝臓に取り込まれます。
脂肪消化のプロセスは改善できる?
サプリメント
消化酵素が含まれるサプリメントは、ますますポピュラーになってきていますが、どの程度効果があるかは、まだ研究が必要です。
しかし、酵素不足よりも良いという結果は出ています。
こういったサプリメントには、特定の食物を分解するたくさんの種類の酵素が含まれています。
例えば、リパーゼは脂肪の消化を助け、アミラーゼは炭水化物、ブロメライン、パパインの分解を助けます。
ブロメラインとパパインは、いずれもたんぱく質を分解する酵素です。
パイナップルやパパイヤに含まれています。
2013年に行われた研究によると、パパインは、消化を助け、過敏性腸症候群患者の膨満感や便秘といった症状を緩和するということがわかりました。(参考)
先にも述べましたが、脂肪の消化を助けるサプリメントについてはさらに調査が必要です。
脂肪の消化を促進させるためにサプリメントを摂取する際には、必ず先に医師に相談しましょう。
膵臓の酵素
膵臓の酵素の中には、消化を助ける薬として処方されるものもあります。
これらは健康食品の店頭で扱われている酵素とは異なります。
パンクレリパーゼ(クレオン、パンクリパーゼ、ゼンペップ)などの膵臓の酵素は、健康状態が悪く、膵臓が消化に必要な酵素を生成する能力が阻害されている場合に、処方されます。
次のような症状の時に用いられます:
- 膵嚢胞
- 膵臓癌
- 嚢胞性線維症
膵臓の酵素は、医師に処方された時のみ服用することができます。
食物からの摂取
パパイヤやパイナップルを食事に取り入れるだけでなく、以下のようなもので食事にスパイスを加えることもできます。
- 生姜
- カプサイシン
- ピペリン
- クルクミン
2011年に行われた動物実験によると、こういった一般的なスパイスを高脂肪のエサを摂っているネズミに与えたところ、胆汁酸が多く含まれる胆汁を分泌させるという結果が出ました。
胆汁は、食物に含まれる脂肪の消化・吸収に重要な役割を果たしています。
これらのスパイスが、ヒトの脂肪吸収をどのように促進するかを理解するには、さらに研究が必要です。
摂取するとよい脂肪
食事からどの脂肪を摂取するのが良いかわからないなら、”悪玉”脂肪を減らし、より健康によい脂肪を取り入れてください。
2015~2020年版のアメリカ人のための食生活指針では、飽和脂肪をポリ不飽和脂肪、もしくは、1価不飽和脂肪に置き換え、トランス脂肪を完全に避けることを推奨しています。(参考)
オメガ3脂肪酸を含む食べ物は、心臓の健康のために良いとして推奨されています。
まずは、食品ラベルを読むことから始めると良いでしょう。
多くの食品が1種類以上の脂肪を含んでいることを覚えておいてください。
身体に良い油を含む食品は、以下のようなものです:
- オリーブオイルやごま油、キャノーラ油などの植物油
- アーモンド、ピーカンナッツ、カシューナッツなどのナッツ類
- アボカド
- ピーナツバターやアーモンドバター
- サーモンやイワシ、ニシン、マスなどの魚油
- ひまわり、カボチャ、ゴマなどの種油
要点
身体に悪い脂肪を減らし、身体に良い油が含まれている健康的な食事を摂ると、健康的な体重を維持でき、病気のリスクを減らすことができます。
食生活を劇的に変える時や新しいサプリメントを摂取する際には、必ず医師に相談することが大切です。そうすれば、あなたにあった最も健康的な方法を選ぶことができるでしょう。
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