レジスタントスターチ(難消化性デンプン)の基本 、知っておくべきこと
食事の中に含まれる炭水化物の大部分はデンプン質です。
デンプン質はグルコースが長く連なった分子で、穀物、じゃがいもなどの多くの食材に含まれます。
ただし、摂取した全てのデンプン質が消化されるわけではありません。
しばしば、摂取されたデンプン質の一部は消化されずにそのまま消化管を通過します。
つまり、デンプン質は消化に抵抗性があるのです。
このタイプのデンプン質はレジスタントスターチと呼ばれ、可溶性食物繊維の1種として作用します。
多くの人を対象とした研究では、レジスタントスターチの強力な健康への効能が報告されています。
この効能には、インスリン感受性の改善、血糖降下作用、食欲低下、消化に関する効能などが含まれています。(参考)
レジスタントスターチは、今日とても注目されているテーマです。
多くの人が、このレジスタントスターチを食事に加えることによって、有効性を実感しています。
レジスタントスターチの種類
全てのレジスタントスターチが同じというわけではありません。 4つの種類のレジスタントスターチがあるとされています。(参考)
- タイプ1:穀物、種、豆果類に含まれるタイプで、食物繊維の細胞壁に付着しており消化に抵抗性があります。
- タイプ2:生のじゃがいもや緑バナナ(未熟なバナナ)のような、デンプン質の食材に含まれます。
- タイプ3:調理後に冷やされた、じゃがいも、米などの特定のデンプン質の食材に含まれています。調理後の冷却が消化可能であったデンプンを、劣化作用によって消化抵抗性のデンプンへ変化させます。
- タイプ4:化学プロセスで作られる人工的なデンプンです。
しかし、これらの分類は単純ではなく、同一の食材にいくつかの異なるタイプのレジスタントスターチが共存している場合があります。
食材がどのように調理されたかで、含まれるレジスタントスターチの量などは変化します。
例えば、バナナが成熟して黄色になると、レジスタントスターチが分解されて、通常の吸収可能なデンプン質へ変化します。
Point:4つのタイプのレジスタントスターチがあります。食材がどのように調理されたかが、最終的なレジスタントスターチの含有量に影響を与えます。
どのようにして働くのか?
レジスタントスターチが有効である主な理由は、その可溶性食物繊維または、発酵性食物繊維としての機能によるところが大きいと考えられています。
レジスタントスターチは、胃、小腸などを消化されずに通過し、最終的には大腸で腸内細菌の栄養源となります。(参考)
消化管内の細菌は、腸内細菌叢とも呼ばれますが、人の体の細胞数の10倍もの数があります。
この観点から言えば、我々の体は人の体の10%に過ぎないとも言えるでしょう。(参考)
ほとんどの食事は、腸内細菌の10%程度しか栄養できませんが、発酵性食物繊維とレジスタントスターチは90%もの腸内細菌を栄養する源となります。(参考1, 参考2)
腸内細菌には数百もの異なる種類の細菌が含まれます。
過去の数十年の研究で、腸内細菌の数と種類が人の健康に重要な役割を果たすことがわかってきました。(参考1, 参考2)
レジスタントスターチは、消化管の有益な細菌を栄養して、有益な細胞を補助する他、その数を増やす作用も確認されています。(参考1, 参考2)
腸内細菌がレジスタントスターチを消化すると、ガス、ブチル酸などの短鎖脂肪酸など、異なる化合物が産生されます。(参考1, 参考2)
Point:レジスタントスターチが健康を改善する理由の一つは、腸管内の有益な細菌を栄養して、ブチル酸のような短鎖脂肪酸の産生を増やすためであると考えられています。
消化管システムに対する特別な効果
レジスタントスターチは摂取すると大腸内へと移行して、そこで細菌に消化されることで短鎖脂肪酸が産生されます。(参考)
これらの短鎖脂肪酸の中で、最も重要なものはブチル酸です。 (参考)
このため、レジスタントスターチは、腸管内の有益な細菌を栄養するだけでなく、ブチル酸を増加させることで、間接的に大腸の細胞を栄養します。
レジスタントスターチは、大腸にいくつかの有益な効能があります。
大腸内のpHを低下させ、炎症の低下や、世界的にも癌による死亡原因で4番目に多い、大腸癌・直腸癌のリスクを軽減するような有益な効能を発揮すると考えられています。(参考1, 参考2)
大腸内で使用されなかった短鎖脂肪酸は、血中に入り肝臓やそのほかの体の臓器へ渡り、複数の有益な効果を発揮すると考えられています。(参考1, 参考2)
その、大腸に対する有益な効果から、レジスタントスターチは複数の消化管疾患に治療的な効果があると考えられています。
これらの疾患には、潰瘍性大腸炎やクローン病のような炎症性腸疾患、便秘、憩室炎、下痢などが含まれます。(参考)
動物を対象とした研究では、レジスタントスターチのミネラル分の吸収促進の効果も報告されています。(参考1, 参考2)
しかし、レジスタントスターチの使用の健康や疾患への効能を明確にするためには、ブチル酸の人に対する研究が今後も追加で行われる必要があるでしょう。
Point:ブチル酸の産生増加を介して、レジスタントスターチは大腸の細胞を栄養する他、消化管の機能改善のために数々の効果を発揮します。
レジスタントスターチの健康への効能
レジスタントスターチには代謝を含めた、様々な健康への効能が期待されています。
複数の研究では、レジスタントスターチが、細胞のインスリンに対する反応を示す、インスリン感受性を改善すると報告しています。(参考)
レジスタントスターチは、食後の血糖を下げる効果も期待されています。(参考1, 参考2)
さらに、レジスタントスターチには摂取後の2回目の食事後の血糖まで効果が持続することが知られており、例えばレジスタントスターチを朝食に摂取すると、昼食後の血糖も低下傾向がみられるとされています。(参考)
グルコースとインスリンの代謝に対する効果には期待が寄せられています。
いくつかの研究では、4週間に渡って毎日15-30グラムのレジスタントスターチを投与したところ、インスリン感受性への改善効果が認められたと報告しています。(参考1, 参考2)
インスリン感受性の重要性は、強調してもしすぎることはありません。
インスリン感受性が低い(インスリン抵抗性がある)と、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、肥満、心疾患、アルツハイマー型認知症などの重大な健康障害につながる可能性が示唆されています。
インスリン感受性を改善し、血糖を下げることで、レジスタントスターチは慢性疾患を避け、生活の質を改善すると考えられています。
しかし、全ての研究がレジスタントスターチの有効性を示しているわけではありません。
個人によって効果が異なり、レジスタントスターチの量や種類でも効果が違うと考えられています。
Point:多くの研究が、レジスタントスターチがインスリン感受性を改善し、食後に血糖を低下させる効果を報告しています。
満腹感の改善による体重減少効果
レジスタントスターチは1グラムあたり2カロリーと、通常のデンプン質の1グラム4カロリーに比べるとカロリーが少なくなります。
食事中のレジスタントスターチの量が多くなるほど、含まれるカロリーも低下します。
いくつかの研究で、可溶性食物繊維サプリメントが満腹感を出して食欲を軽減させることで、体重減少効果を発揮すると示されています。(参考1, 参考2)
レジスタントスターチにも同様の効果があるとみられています。
レジスタントスターチを食事に加えることで、満腹感が増加して、結果として摂取するカロリーが減る効果が期待できます。( 参考1, 参考2, 参考3)
動物を対象にしたいくつかの研究では、レジスタントスターチの体重減少作用が報告されていますが、この効果は人においては証明されていません。
Point:レジスタントスターチは通常のデンプン質よりもカロリーが低く、満腹感を増やし、食事摂取量を減らす効果があります。
レジスタントスターチをどのように食事に加えるか
レジスタントスターチを食事に加える方法には、食材として摂取する方法とサプリメントを摂取する方法の2種類あります。
多くの一般的に摂取される食材には多くのレジスタントスターチが含まれます。
これらの食材には、生のじゃがいも、調理後に冷やされたじゃがいも、緑色のバナナ、多くの豆果類、カシューナッツ、オーツなどが含まれます。
みてわかるように、これらの食材には多くの炭水化物が含まれており、低炭水化物食をしている人にとっては利用できない食材かもしれません。
しかし、低炭水化物食を摂っている人でも、炭水化物摂取を50-150グラム程度に絞っている場合には、これらの食材を炭水化物として摂取しても良いかもしれません。
そうは言っても、消化吸収されないレジスタントスターチの摂取方法もあります。
生じゃがいもデンプンサプリメントなどの摂取は、この目的で使用されることが多いでしょう。
生じゃがいもデンプンサプリメントには、おおよそスプーン1杯に8グラムのレジスタントスターチが含まれており、ほとんどが吸収されない炭水化物です。
さらに、価格も非常に安いです。
味は薄くて旨味はありませんが、食材に振りかけたり、水に溶かしてスムージーに入れたりして食事と一緒に取り込むことができます。
スプーン4杯の生じゃがいもデンプンは、32グラムのレジスタントスターチを含みます。
少量から初めて、腹部膨満や腹部不快感がない範囲で、ゆっくりと量を増やすことが重要です。
基本的には過剰に摂取しすぎることはないと考えられており、1日50-60グラム以上を摂取しても、消化管で消化されずに排泄されてしまうとされています。
短鎖脂肪酸が産生され体への有益な効能を発揮するまでには2-4週間程度の期間がかかるかもしれませんので、忍耐が必要でしょう。
まとめ
体重減量が思うように進んでいなかったり、血糖高値、消化器症状などで悩んでいる場合や、新しいことに挑戦してみたい場合、レジスタントスターチを新しく初めて見るのは良い考えかもしれません。
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