はじめに
トンカット・アリは東南アジアの伝統治療の中で、数世紀にわたってハーブ治療の一部として用いられてきました。日本名ではナガエカサ、マレーシアではPenawar pahit、Tongkat ali、インドネシアでPasakbumiと呼ばれています。
しばしば、発熱、勃起障害、細菌感染症などの幅広い疾患に対して用いられてきました。
研究の数は限られているものの、トンカット・アリの男性生殖機能の亢進、ストレス緩和、体組成の改善などに関する効能の可能性が示唆されています。(参考1, 参考2, 参考3)
この記事では、トンカット・アリの効能、可能のある副作用、用量などについて取り上げます。
トンカット・アリとは?
トンカット・アリまたはロングジャックとも呼ばれる、東南アジアに分布するユーリコマ・ロンジフォリア(Eurycoma longifolia)という名の低木の根から生成される。マレーシア 、インドネシア、ベトナムとその他の東南アジアなどでマラリア、感染症、発熱、男性不妊、勃起不全などの治療のために伝統医療の中で用いられています。(参考)
トンカット・アリの効能は植物に含まれる複数の化合物によるものと考えられています。特に、トンカット・アリは抗酸化物質として機能するフラボノイド、アルカロイド、そのほかの化合物を含んでいます。抗酸化物質は遊離ラジカルと呼ばれる分子による細胞への障害を防ぎます。また、これらの化合物は人体の中で他の機序によっても効果を発揮しているかもしれません。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)
トンカット・アリは典型的にはハーブの抽出液が含まれた錠剤で摂取されるか、ハーブ飲料として使用されます。(参考)
💡 POINT
トンカット・アリは東南アジアの低木ユーリコマ・ロンジフォリア(Eurycoma longifolia)に由来するハーブから作られる薬です。男性不妊や感染症など、いくつもの病気の治療に有効と考えられる化合物を複数含んでいます。
トンカット・アリのメリット
あまり詳しく調べられてはいないものの、いくつかの研究で提唱されているトンカット・アリの健康への効能としては、男性不妊、気分の改善、筋肉量の増加などが挙げられます。
テストステロンレベルを上昇させ、男性不妊を改善する可能性
テストステロン(男性ホルモン)が低値の男性において、トンカット・アリがホルモン値を上昇させるかもしれないことは良く知られ、多くの記述などもされています。
テストステロンの低下は、加齢、化学療法、放射線治療、ある種の薬剤、外傷、精巣の感染症、慢性アルコール中毒や閉塞性睡眠時無呼吸などの特定の疾患などで起こりえます。(参考)
不十分なテストステロンレベルによる症状は、性欲減退、勃起不全、そして特定のケースでは不妊なども起こることがあります。トンカット・アリの化合物がテストステロン低値を改善させる効果が期待されているので、これらの症状に対する治療薬としても使われることがあります。(参考1, 参考2, 参考3)
76名の高齢者を1ヶ月間にわたり調査した研究では、毎日トンカット・アリの抽出液を200mg摂取していた人の90%において、テストステロンのレベルが正常にまで上昇したとされています。(参考)
さらに、人間と動物を対象とした研究において、トンカット・アリの摂取が性的興奮、男性の勃起不全の改善などの効果を示したとの結果も出ています。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)
最後に、トンカット・アリは精子の動きと濃度を改善し男性の生殖機能を向上させるとも考えられています。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4, 参考5)
ある研究では、75組みの不妊治療中のカップルで、男性が200mgのトンカット・アリ抽出液を毎日摂取した場合、3ヶ月間で精子の濃度と運動が有意に改善したとされています。この治療で14%以上のカップルの妊娠につながりました。(参考)
同様に、12週間にわたり30-55歳の108名の男性を調査した研究では、一日あたり300mgのトンカット・アリ抽出液を摂取した人において、精子の量が18%、運動機能が44%平均で改善したと確認されています。(参考)
これらの研究では、トンカット・アリが低テストステロン症と男性の不妊症に対して有効である可能性が示唆されていますが、今後のさらなる研究が必要です。
ストレスを軽減する可能性
トンカット・アリは体内のストレスホルモンを減少させ不安の軽減やムードの改善につながるかもしれないと考えられています。
1999年に行われた研究で初めて、マウスにおける不安症の症状に対し、トンカット・アリが従来の抗不安薬と同等に作用する可能性が示され、ムードに関連する問題の治療薬として期待されるようになりました。(参考)
研究の数などは限られているものの、同じ効果は人間を対象にした研究でも認められています。
中程度のストレスを持っていた63名の成人を1ヶ月調査した研究では、毎日200mgのトンカット・アリの抽出液を摂取した人において、唾液中のコルチゾルと呼ばれるストレスホルモンレベルの16%もの減少が、プラセボを摂取していた人たちに比べて認められました。(参考)
また、被験者はトンカット・アリを摂取した人で有意に、ストレス、怒り、緊張などの軽減を経験したそうです。(参考)
これらの結果はかなり期待が持てますが、さらなる人間を対象とした研究が待たれます。
体組成を改善する可能性
トンカット・アリはしばしば、陸上競技のパフォーマンス向上と筋肉量の増加などの効果があると言われます。
これは、トンカット・アリに含まれるクワシノイドと言われるユーリコマオシド、ユーリコラクトン、ユーリコマノンなどの化合物が、体内のエネルギー利用効率を高めて、疲労の軽減や、持久力の改善につながるためと考えられています。(参考)
つまり、このサプリメントは身体パフォーマンスを向上させ、体の組成を改善する強壮剤としての効果があるとされているのです。(参考1, 参考2)
小規模の研究ではありますが、筋力増強プログラムに参加している14名の男性を5週間にわたり調査した研究では、1日あたり100mgのトンカット・アリの抽出液を内服した人において、除脂肪体重除(脂肪を除いた体重で筋肉量の目安)が有意に増加したと報告されています。(参考)
また、内服した人においては、プラセボを内服していた人に比べて、より多くの脂肪燃焼につながったともされています。(参考)
さらに、25名の高齢者を5週間にわたり調査した研究でも、1日あたりトンカット・アリ抽出液を400mg摂取した人において、プラセボを摂取した人と比較して有意に筋肉の増強効果が認められました。(参考)
しかしながら、小希望の研究ではトンカット・アリを運動中に内服していた自転車走者においては、水を内服していた人と比較して競技のパフォーマンス向上や筋力の増強などの効果は認められませんでした。(参考)
これらの相反する研究結果は、トンカット・アリが用量と使用期間によって強壮剤としての効果を示すか否かが変わる可能性を示しており、今後のさらなる研究が待たれます。
トンカット・アリの安全性と副作用
人におけるトンカット・アリの効果を検証した研究では、特に副作用などの報告はありません。(参考1, 参考2, 参考3)
ある研究では、毎日トンカット・アリの抽出液を300mg摂取していた人で、プラセボを摂取していた人と比べて体調の変化はなく、安全であったと報告されています。(参考)
他の報告でも、成人が1日あたり1.2gのトンカット・アリを摂取しても特に副作用などは起きなかったとされますが、この高用量は他の研究では使用されていませんので注意が必要です。また、まだ長期的なトンカット・アリの使用を調査した研究はないため、健康に対するトンカット・アリの長期使用の効果については確定的なことはわかっていません。(参考1, 参考2)
さらに、ある研究ではマレーシア産の100種類のトンカット・アリのサプリメントを調査したところ、26%のサプリメントで推奨量を超える水銀が検出されたとされています。(参考)
過剰の水銀を摂取すると、気分の変調、記憶障害、運動能力の障害などの症状が起きる水銀中毒を起こす可能性があります。(参考)
加えて、子供、妊婦、授乳婦に対するトンカット・アリの効果はまだ調査されていません。このため、トンカット・アリがこれらの人に対して安全であるかは、まだわかっていません。
💡 POINT
トンカット・アリは多くの健康な成人において1日あたり200-400mgの摂取であれば安全と見られています。しかしながら、妊婦や授乳婦においてのトンカット・アリの安全性はわかっていません。そして、一部の製品には水銀が含まれている可能性があります。
トンカット・アリを摂取した方が良いのか?
数は限られているものの、ある研究ではトンカット・アリが不安を軽減し体の組成を改善する効果が示唆されています。
また、低テストステロン、性欲減退、男性不妊などの治療効果もあるかもしれません。
トンカット・アリの使用量については、研究の数は少なく短期使用のデータに限られていますが、1日あたり400mgの摂取までは特に副作用はないと考えられています。
ただし、長期にわたりトンカット・アリを摂取した場合の有効性や安全性などについてはわかっていません。もしもトンカット・アリの摂取を検討する場合には、その安全な摂取の方法について医療機関で相談しましょう。
加えて、いくつかの製剤には水銀が含まれているかもしれないことを知っておきましょう。
最後に、妊婦や授乳婦では十分な安全性に関するデータがないことから、トンカット・アリの摂取は推奨されません。加えて、基礎疾患や他の薬をすでに内服している場合などは、トンカット・アリの摂取を開始する前に医療機関で相談しましょう。
💡 POINT
トンカット・アリは、データは限られているものの、低テストステロンの改善、不安症状の改善、体組成の改善などに効果があると考えられています。サプリメントの摂取を開始する前に、医療機関で相談をしましょう。
まとめ
トンカット・アリ、またはロングジャックとも呼ばれるハーブ由来のサプリメントは、低テストステロン、男性不妊、不安症、陸上競技のパフォーマンス、体の筋肉量などを改善すると考えられていますが、データは限られています。
トンカット・アリの内服を開始する場合には、あらかじめ医療機関で相談をする他、信頼できるブランドの製品をお店やオンラインで購入することが大切です。
また、alloehではサプリユーザーのクチコミから、トンカットアリサプリのランキングも作成しています。
ぜひ参考にしてください。
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