はじめに
サフランは最も高価なスパイスの1つと言って良いでしょう。450グラム(1ポンド)のサフランが、米国ドルで$500から$5,000ほどの価格となります。サフランの価格がとても高くなる理由は、栽培に多大な労力を必要とするためです。
サフランは、元々はギリシアで自生していた植物で、その薬効から長い間、高く評価されてきました。一般的に、性欲の増進、気分の改善、記憶力の改善などが期待されて、人々に摂取されます(参考)
この記事では、サフランの健康への効能について解説をしていきます。
① 抗酸化作用
サフランには、人の細胞を遊離ラジカルや酸化ストレスから守ってくれる、抗酸化物質作用がある複数の植物化合物が含まれています。
サフランに特徴的な抗酸化物質には、クロシン、クロセチン、サフラナル、ケンプフェロールなどが含まれます。(参考)
クロシンとクロセチンはカロテノイド色素とも呼ばれ、サフランの赤色の素となります。
どちらの化合物も、抗うつ作用、脳細胞の障害予防、炎症改善、食欲抑制、体重減少促進などの効果が期待されています。(参考1, 参考2)
サフラナルは、サフランに独特の味わいや香りを与える素となっています。ある研究では、サフラナルが気分の向上、記憶力や学習能力の改善、脳細胞の酸化ストレスからの保護作用などにつながる可能性が示唆されています。(参考)
そして、ケンプフェロールはサフランの花弁に含まれる成分です。
この化合物は、炎症軽減作用、抗癌作用、抗うつ作用などの健康への効能が期待されています。(参考1, 参考2)
💡 POINT
サフランは、クロシン、クロセチン、サフラナル、ケンプフェロールなどの、抗酸化物質として機能する植物性化合物を多く含んでいます。抗酸化物質は、人の細胞を酸化ストレスから守ります。
② 気分向上と抑うつ症状の改善効果
サフランは、別名「サンシャイン・スパイス」とも呼ばれます。この名称は、サフランの特徴的な色だけではなく、サフランの気持ちを明るくする作用にも基づいています。
5つの研究をまとめた研究では、サフランサプリメントが軽度から中等度のうつ病症状の改善に有効であったと報告しています。(参考)
他の研究でも、1日30mgのサフランを摂取が、フロキセチン、イミプラミン、シタロプラムなどの伝統的なうつ病の治療薬と同様の効果があったとしています。
加えて、サフランの摂取の方が、これらの薬剤よりも副作用が少なかったと報告しています。(参考1, 参考2, 参考3)
さらに、サフランの花弁と糸状の柱頭のいずれも、軽度から中等度のうつ病の症状に対して有効であったとされています。(参考1, 参考2)
これらの結果には期待が持てますが、サフランをうつ病の治療薬として積極的に使用し始める前には、さらなる人を対象とした長期の研究が必要でしょう。
💡 POINT
サフランには、軽度から中等度のうつ病症状を改善する効果があるかもしれません。しかし、この効果は確定的ではなく、さらなる研究の結果が待たれます。
③ 抗癌作用
サフランは、有害な遊離ラジカルを中和する作用がある、抗酸化物質を多く含んでいます。遊離ラジカルは、癌などを含めた慢性疾患の発症に関連していると考えられています。(参考)
試験管内の実験では、サフランとその化合物が、大腸癌細胞を殺したり、癌細胞の成長を阻害する一方で、正常の細胞には影響を与えなかったと報告されています。(参考)
この効果は、皮膚、骨髄、前立腺、肺、乳房、子宮頸部など、他の部位の癌細胞に対しても確認されています。(参考)
さらに、試験管内の実験データではありますが、サフランの主要な抗酸化物質であるクロシンが、癌細胞を抗癌剤がより効きやすい状態に変える効果があるとも報告されています。(参考)
これらの試験管内の実験データには期待が持てますが、サフランの抗癌作用に関する人を対象とした研究は少なく、今後の追加での研究結果が待たれます。
💡 POINT
サフランは抗酸化物質を多く含みます。しかし、癌細胞への効果は確定的なデータではなく、今後の追加での研究が必要でしょう。
④ 月経前症候群の症状緩和
月経前症候群(PMS)とは、月経前に起きる身体的、感情的、精神的な症状のことです。
研究では、サフランの月経前症候群(PMS)症状に対する有効性が示唆されています。
20-45歳の女性を対象にした研究では、毎日30mgのサフランを投与された人において、プラセボを摂取していた群に比べて、イライラ、頭痛、渇望、疼痛などの月経前症候群(PMS)症状が、より軽減されたと報告されています。(参考)
他の研究でも、20分間サフランの香りを嗅ぐだけで、月経前症候群(PMS)症状である不安症状の軽減や、ストレスホルモンであるコルチゾル値の低下などがみられたとされています。(参考)
💡 POINT
サフランを摂取したり嗅いだりすることで、月経前症候群(PMS)の症状であるイライラ感、頭痛、渇望、疼痛、不安などの症状が軽減させる可能性があります。
⑤ 性欲増進効果
サフランには、催淫剤効果とも呼ばれる、性欲を増進する効果が期待されています。
研究では、特に抗うつ薬などを内服している人において、サフランが性欲増進の効果があったとされています。
例えば、抗うつ薬摂取に関連した勃起障害を持つ男性を対象にした研究では、毎日30mgのサフランを4週間に渡って摂取したところ、プラセボを摂取していた群に比べて、有意に勃起障害症状の改善が認められたとされています。(参考)
加えて、6つの研究をまとめた報告では、サフランの摂取は勃起障害の改善、性欲増進、総合的な満足度の向上につながる一方で、精子の性状には変化を与えなかったとしています。(参考)
ある研究では、抗うつ薬を摂取することによる性欲減退がみられる女性において、30mgのサフランを4週間に渡って投与したところ、プラセボを摂取していた群に比べて、性交関連疼痛の軽減、性欲の亢進、腟部の潤滑亢進などの効果が有意に認められたとされています。
💡 POINT
サフランには、男性と女性の両者に対して性欲の亢進作用が期待されており、特にこの作用は抗うつ薬を摂取している人において顕著であると言われています。
⑥ 食欲の抑制と体重減量促進効果
間食(おやつ)の習慣は、望まない体重増加などの原因となる、頻度の高い生活習慣の1つです。
研究によると、食欲を抑制することで、間食を減らす効果があるとみられています。
ある研究では、女性を対象として8週間にわたりサフランを投与したところ、サフランを摂取していなかった群に比べて、満腹感をより感じやすくなり、間食の頻度が減少し、有意な体重減少が見られたと報告されています。(参考)
他の8週間にわたる研究でも、サフランの抽出液サプリメントの摂取が、有意に食欲を低下させ、BMI(ボディ・マス・インデックス)、腹囲、体脂肪量などの減少につながったと報告しています。(参考)
しかし、現時点での研究データでは、どのような作用でサフランが食欲を抑制するのかや、体重減量を促すのかなどについては、はっきりわかっていません。提唱されている説としては、サフラン摂取による気分の高揚感が、間食に対する欲求を減らすのではないかとも言われていますが、確定的ではありません。(参考)
💡 POINT
サフランの摂取は、間食の減少や食欲の抑制などにつながるとされています。これらの効能によって、サフランには体重減量の効果が期待されています。
⑦ その他の健康に対する効能
サフランには、他の健康への効能も期待されていますが、まだ研究データが十分ではありません。
心疾患リスクの軽減効果: 動物を対象とした研究や、試験管内の実験では、サフランが抗酸化物質が血中のコレステロールを低下させたり、血管や動脈の閉塞を防ぐ可能性を報告しています。(参考1, 参考2, 参考3)
血糖低下作用: 糖尿病のマウスを対象とした研究や、試験管内の実験では、サフランの血糖低下効果や、体内のインスリン量増加効果などが報告されています。(参考1, 参考2)
加齢性黄斑変性などを持つ成人における視力改善効果: サフランには、加齢黄斑変性症を持つ患者さんの視力改善効果、加齢性黄斑変性の原因となる遊離ラジカルによる障害を抑制する効果が期待されています。(参考1, 参考2, 参考3)
アルツハイマー型認知症患者における記憶力の改善: サフランの抗酸化物質は、アルツハイマー型認知症における認知機能を改善する可能性があるとされています。(参考)
💡 POINT
サフランは、心疾患リスクの改善、血糖改善、視力改善、記憶力改善などの複数の健康への効能があります。しかし、より確定的な結論を得るためには、追加での研究が必要でしょう。
サフランのの使用方法
少量のスパイスとして使用される分には、サフランには微かな味と香りがあり、パエリヤやリゾット、その他の米を使用した香ばしい料理などに適していると言われています。
サフラン独特の風味を引き出すためには、糸状のサフランを温かいお湯(沸騰させずに)に浸すのが一番効果的です。この糸状のサフランと、煮出した汁を料理に加えることで、より深みのある豊かな味わいが手に入るでしょう。
サフランは、糸状のサフランもしくは粉末状サフランなどの形で、専門店などで簡単に手に入ります。しかし、その汎用性の高さや、粗悪品が混入している可能性の低さから、可能であれば糸状のサフランを購入することが望ましいでしょう。
サフランは、世界的に見ても高価なスパイスの1つですが、少量で色々な役に立ち、料理に使用する程度であればひとつまみ程度の量で十分です。実際、サフランを料理に入れすぎると、料理が薬のような味わいとなってしまうことがあります。
さらに、サフランはサプリメントの形でも手に入ります。
💡 POINT
サフランは微かな味と香りがあり、日々の料理などにも使用しやすいスパイスです。香ばしい料理などとの相性が良く、使用の際には温かいお湯などにつけることで深い味わいが得られます。サフランの健康への効能を享受するためには、糸状のサフラン以外にもサプリメントのサフランを利用する方法もあります。
サフランの安全性・副作用
サフランは、基本的にほとんど副作用などの報告もなく、安全に摂取できると言われています。典型的な調理に使用する量であれば、サフランの使用は人に対して副作用を起こすことはないでしょう。
サプリメントとしては、多くとも1日あたり1,500mg以下の摂取が推奨されています。しかし、多くの研究などでは、1日あたり30mgの摂取だけでも、十分に健康への効能が発揮されると報告されています。(参考1, 参考2, 参考3)
一方で、サフランの5,000mg以上の摂取は中毒症状を来すかもしれません。特に、妊娠中の女性では高用量のサフランの使用は流産の原因になる可能性があるので、避けた方が良いでしょう。(参考1, 参考2)
他のサプリメントと同様に、サプリメントのサフランを摂取開始する前に医療機関で相談をしましょう。
他のサフランに関する問題としては、特に粉末タイプのサフランにおいて多いですが、ビート、赤く染められたシルク繊維、ターメリック、パプリカなどの他の成分が混合された、粗悪品が流通している場合があります。この粗悪品は、サフランの生産コストがとても高いので、そのコストを下げるために作られます。(参考)
このため、サフランを購入するときには、信頼のおけるブランドの製品で、本物のサフランを使用した製品であることを確認した上で、購入することが大切です。サフランが、通常以上に安く売られている場合などは、その製品の購入は避けた方が無難でしょう。
💡 POINT
通常の使用量であれば、サフランは副作用などもなく安全に使用できます。購入時には、信頼のおけるブランドの製品を購入することを心がけて、粗悪品を購入しないように気をつけましょう。
まとめ
サフランは抗酸化物質を多く含んだ強力なスパイスです。
サフランは、気分の向上、性欲や性機能の改善、月経前症候群症状の軽減や体重減量促進など、健康への効能があると期待されています。
サフランは、基本的には誰でも安全に摂取できるスパイスで、普段の食卓にも簡単に追加が可能です。その健康への効能を享受するために、サフランを食事に加えてみたり、サプリメントなどを購入して試してみても良いでしょう。
ただし、重度の症状など適切な治療が必要とされる場合はサプリメントに頼らず、医療機関で診断を受けるようにしましょう。
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