プラセンタとは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説

Written by alloeh編集部

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胎盤は「スーパーフード」か、それとも怪しいファド・ダイエット(一時的に流行るブーム食)なのか?

プラセンタとは日本語で胎盤のことを指します。カプセルで飲んだり、スムージーに入れたり、野菜と一緒にローストしたり、女性が出産後に胎盤を摂取する方法はいくらでもあります。この妊娠に関わる臓器が「スーパーフード」として注目され、多くの母親たちが胎盤の摂取にチャレンジしようとしています。

しかし胎盤を食べることは本当にメリットがあるのでしょうか? 胎盤を食べること、つまり「胎盤食」は、動物界では一般的なことです。 胎盤のあるヒト以外のほとんどの哺乳類は「出産後に」胎盤を食べると考えられています。それ以外では、胎盤は新生児のにおいを消滅させ捕食動物から身を守るものとして知られています。

他の文献では、出産時に失われた栄養素を摂り、母親と子どものきずなを深める手段として動物は胎盤を食べるとしています。後者の仮説は、人間の母親たちが胎盤食に興味を持つきっかけとなり、キム・カーダーシアンやジャニュアリー・ジョーンズなどのセレブが胎盤食を実践したことにより一気に注目を浴びました。

多くの母親が出産後に胎盤を食べる健康上のメリットを称賛する一方で、専門家らは、その実践の有益性よりも有害性について言及しています。この議論の両面の根拠を見ていきましょう。

胎盤の役割

胎盤は妊娠中、子宮の壁に形成される器官で、胎児とへその緒でつながっています。 胎盤はトランスポート・システムとしての役割があります。この器官は酸素と栄養素を母親の血液から発達中の胎児に運び、胎児の血液から老廃物を取り除きます。 さらに胎盤は母親の免疫システムから胎児を守り、健康的な妊娠を維持する役目を持つホルモンを生成します。

このプロセスはすべて胎児の成長と発達に必要不可欠です。 出産時に胎盤も胎児と一緒に娩出されます。自然分娩であれば、胎盤は胎児の後に30分ほどかけて娩出されます。帝王切開の場合、胎盤は手術で取り除きます。

では出産後胎盤はどうなるのでしょうか?ほとんどの病院や産婦人科医院では、自動的に医療廃棄物として処理されますが、母親が取っておくように求めることもできます。 一部の文化では、重要な器官として崇める意味で胎盤を埋葬し子どもの命を祝うものもあります。しかし、昨今では、若干賛否両論のある「胎盤食」を選ぶ母親たちが増えてきています。

胎盤カプセル?それとも胎盤パテ?

胎盤食は、出産後に胎盤を食べるという行為です。これは古来の漢方医療に由来する行為だと考えられています。漢方医療では、胎盤は不妊症や肝臓疾患などに効果があるとして使用されていたのです。 胎盤を摂取する方法として最も一般的なのは(これは前述のセレブたちも好む方法ですが)、胎盤を乾燥させ、粉状にしてカプセルにする方法です。

このサービスは多くの助産師やドゥーラ(産前産後の母親を支援する専門家)が取り扱っています。 一つの胎盤で最高200錠のカプセルを作ることができます。出産後に母親は日々の栄養補給として胎盤カプセルを摂取することができます。胃腸の強い母親の場合は、胎盤をそのまま生(例えばスムージーなど)で食べたり、火を通し調理をして食べることもあります。

ドゥーラ・サービス・ネットワークでは、胎盤ラザニアや胎盤スパゲッティといった胎盤レシピを紹介しています。胎盤はどんな味がするのか興味がある人にはこちら。胎盤を調理して食べてみた男性の感想です。

「身の部分は牛肉のような感じでした。テキサスBBQと遜色ないローストしたブリスケット(肩バラ肉)のような感じで柔らかかったです。」と彼は付け加えました。 胎盤の調理は別として、妊娠中の女性が本当に知りたい一つの疑問、胎盤食にはメリットがあるのでしょうか?

胎盤食の秘めた利点

残念ながらその問いには簡単にイエスともノーとも言えません。 胎盤食が健康に良いという科学的根拠はほとんどありません。しかし胎盤は繊維質、たんぱく質、カリウム、さらにエストラジオール(卵胞ホルモンの一種)やテストステロン(男性ホルモンの代表的なもの)といったホルモンなどさまざまな栄養素を含んでいるという研究もあります。

さらに、世界中の数多くの母親たちが、胎盤食は産後の健康を改善させたと主張しており、多くの提唱者はこのような個人的な実感は科学を上回ると考えています。 では、この胎盤食の健康上の利点とはいったい何なのでしょうか?

母乳分泌の改善

授乳をしたいと考える多くの母親たちにとって、一番の心配は赤ちゃんに必要な母乳を十分作ることができるかどうかということです。胎盤食はこれを助けてくれるのでしょうか。ジェネビーブ・ハウランドは自身のブログ「Mama Natural」の中で、胎盤をカプセルの形で摂ったことにより母乳量がかなり増えたことを明かしています。

胎盤食提唱者は、胎盤食が母乳量を増やすと主張しています。 「24時間も経たないうちに、私は母乳がかなり増えたことに気が付いたのです。自分の胎盤を食べることで母乳量を増やすことが知られていますが、それが私にも起きたのです」と彼女は書いています。

胎盤食は母乳量を増やすことで「知られている」という説明は、誇張かもしれません。なぜならこの説を提示した引用回数の多い研究の一つは、60年も前のもののためです。 しかし、子育てフォーラムにおいて、胎盤食で母乳にいい影響があったという母親は多数います。

気分を上げエネルギーを高める

母親向けのオンラインマガジン、Babbleの中のとあるブログでは、エリザベス・スタークが、胎盤をカプセルで摂取したことで、いかに産後の体調がよかったかを伝えました。「驚いたことにカプセルを飲んでいる間は、気分のムラもなくエネルギーがありました。」「私は自分の意見を裏付けるためのダブルブラインド・ピアレビュー調査(偽薬を使ってプラセボ効果の影響を防ぐ調査)は受けていないのですが、胎盤食によって産後数週間が楽であったということは自信をもって言えます。」と彼女は書いています。

オンラインマガジンParentsでは、二児の母であるアリス・ロスは、胎盤カプセル摂取後の自身の状態についてこう語っています。「エネルギーが出てきて少し落ち着いたように感じました。気分が落ち込んだり疲れたりして泣いてしまったりするときは、私はカプセルを飲むでしょう。そうすれば、本当に気分がよくなるのです。」

2013年にある研究が発表されました。研究者は189名の女性に胎盤食を経験してもらう研究を実施しました。その多くは、産後うつを経験したことがある女性でした。 およそ40%が胎盤食の後、産後の気分が改善したと報告し、そしてほとんどの女性が次の出産では胎盤食をするだろうと答えたのです。

痛みの軽減

胎盤食の提唱者は、胎盤食は産後の痛みもコントロールできると主張しています。ラットを使ったある研究では、胎盤を食べたメスは胎盤を食べなかったメスよりも痛覚しきい値が高いという結果になりました。 しかし、ヒトの場合の胎盤摂取による痛みの軽減を示唆する科学的根拠はありません。

胎盤食は危険なのか

胎盤食の利点に関して事例証拠はたくさんあるようですが、研究ではまた違ったストーリーが出てきています。2015年、イリノイ州シカゴのノースウェスタン大学フェインバーグ医学部の研究者が実施した検証では、母親が胎盤を食べることで健康上のメリットがあると示す根拠は不十分であると結論付けました。この結論は、胎盤食の健康上の効果を評価する動物およびヒトの研究を詳細に分析したものから導かれたものです。

さらに、この年の初めに発表されたアメリカ疾病予防管理センター(CDC)の症例報告書では、胎盤食は母親だけでなく赤ちゃんに対しても悪影響の恐れさえあると指摘しています。この報告書は、胎盤カプセルを摂取した母親がB群連鎖球菌(GBS)に罹患(りかん)しそれが子どもにも感染したことを明らかにしました。

CDCは、胎盤をカプセル化するときにGBSを殺菌する十分な温度で加熱されなかったのではないかと示唆しています。 具体的には「摂取用の胎盤の加工に関する基準はありません。(中略)この場合、GBS細菌数を減らす十分な温度で十分加熱することができなかったと考えられます。

汚染した胎盤カプセルを摂取したことにより、母親の腸と皮膚へのGBS定着を高め、新生児にも感染した可能性があります。」 と示唆し、「胎盤をカプセル化するプロセスは、本来、感染性病原体を壊滅させるものではありません。したがって、胎盤カプセルを摂取することは避けるべきです。」と付け加えました。

しかし、この報告書の反応としてPlacenta Benefits(胎盤食を提唱するウェブサイト)では、CDCは一つの例だけにもとづいて胎盤食に反対するべきではないと書いています。「この報告書は一つの事例にすぎないということを頭にいれておかなければいけません。つまり前例といったものではないということです。もし胎盤食の効果を証明する一つの事例を認めないのであれば、すべての胎盤食の相違点の事例研究についても一つも認めることはできません」と反論しました。

胎盤食は「人肉食と紙一重」

胎盤食がヒトに効果があるという科学的根拠がないため、評論家の多くはそれを母親たちに勧めるべきではないと考えています。 ヒトの胎盤食についての評論を共著したオーストリアのウィーン医科大学のアレックス・ファー博士は言います。「医学的に言って、胎盤は廃棄物です。」「ほとんどの哺乳類は出産後胎盤を食べますが、その理由については推測するしかありません。胎盤は遺伝子学的に言って、新生児の一部だと考えると胎盤食は人肉食と紙一重であると言えます。」

またファー博士と彼の検証チームは、胎盤食に興味を持つ妊娠中の女性は、それがもたらす潜在的リスクについて気を付けるべきだと指摘しています。また、「さらに、分娩後の母親と新生児にB群連鎖球菌敗血症などの感染症が起きた場合、医師は胎盤摂取をしたことがあるかどうかを尋ねるべきです。」と加えました。

「未開の領域」に踏み入る

しかし、2015年、クラーク博士は、胎盤食を実践するかどうかの判断は、最終的には母親がするべきだと述べました。 「しかし胎盤食を考えている患者に私が言いたいのは、実際にその提唱者の主張を裏付ける根拠はなく、リスクを伝える根拠もないということです。つまり私の懸念は、これは未開の領域なのだということです。」

現在のところ、一般的な理解としては、胎盤食が産後の健康に良いのか悪いのかを決める十分な根拠が単にないということです。しかし事例証拠を前提にして、母親はもっとそれに挑戦してみるべきだと多くの女性が信じています。 今年の初め、子育てサイトRomperのブログに、二児の母であるサラ・ブレーゲルは、産後うつを防ぐために胎盤カプセルを摂取した自身の経験について書きました。

「気分を高めるための昔からの方法という点では、私はいつでも胎盤食を喜んで保証します。そして機会があればまたやってみたいと思っています。」と彼女は言います。 「たとえそれがプラセボ効果だったとしても、赤ちゃんを産んだ後の数週間、二児の母としての生活に調子を合わせる大きな助けになったのです。

私は、私の身体が作ったものをゴミとして捨ててしまうのではなく、活用するということに驚きを感じました。」 「胎盤にまさに健康上のメリットがあるのかどうか決定はまだ下されていませんが、私たちの身体は驚くべきことをやってのけるのだということは否定できません。」

この記事のまとめ

胎盤食は漢方療法として使用されてきた歴史がありますが、効能やリスクについては科学的に結論づけられたわけではありません。しかし、世界中には胎盤を食べることが、健康につながっていると実感している母親が多くいるのも事実です。胎盤食を経験したい方は一度医師に相談してみるのが良いでしょう。

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