はじめに―ピクノジェノールとは?
ピクノジェノールは、フランスカイガンショウ樹皮エキスとも呼ばれています。乾燥肌や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの治療に天然成分のサプリメントとして用いられています。ピクノジェノールは、ピーナッツの皮やブドウの種、ヘーゼルナッツの殻にも見られる有効成分を含んでいます。
皮膚への効果
ピクノジェノールは、老化の現れを目立たなくするなどとても皮膚に良いとされています。更年期障害の女性に対して2012年に行われた小規模な研究では、ピクノジェノールによって、肌の水分量や弾力が増したという結果が報告されました。被験者がピクノジェノールをサプリメントとして摂取したところ、乾燥肌の女性に最も効果があったという結果が出ました。ピクノジェノールは、一般的なアンチエイジング製品に含まれているヒアルロン酸やコラーゲンの生成を促進するであろうと、研究者は考えています。
2004年に行われた動物実験では、ピクノジェノールを含むジェルを使用することで、傷の治りが早くなったという結果が出ています。また、傷が小さくもなりました。
2017年には、皮膚の老化に対するピクノジェノールの様々なメリットが報告されました。その一つとして、ピクノジェノールは、肌の状態に関係する分子である、フリーラジカルが形成されるのを抑制するとされています。また、細胞の再生や複製を促すとも言われています。
さらに、この報告にはピクノジェノールが、次のようなことに役立つとされています:
- 紫外線による皺の軽減
- 皮膚の厚みを薄くする
- 皮膚を滑らかにする
- 目に見える老化のサインを改善する
- 炎症を抑える
- 黒皮症の改善
- 皮膚の褪色の軽減
- 紫外線による老化の防止
- 皮膚がんを防ぐ
注意欠陥多動性障害(ADHD)への効果
肌を治癒する特性だけでなく、ピクノジェノールは、子供の注意欠陥多動性障害のコントロールにも役立つことがわかりました。2006年に行われた研究で、子供に4週間毎日ピクノジェノールサプリを摂取させたところ、多動のレベルが劇的に低下しました。また、注意力も長くもつようになり、視覚運動能力や集中力も高まったと報告されました。しかし、被験者がピクノジェノールの摂取をやめると1か月でもとの症状に戻りました。
また、ADHDの非遺伝子的要因の一つとなっている、酸化ストレスに対するピクノジェノールの抗酸性作用の効果を調べた研究も2006年に行われました。ピクノジェノールサプリを1か月摂取した子供の抗酸化レベルは、正常でした。こういった良い結果が得られているものの、ADHDに対するピクノジェノールの抗酸化作用効果を完全に理解するには、さらに研究が必要です。
ADHDの治療には他にも方法があります。
その他の効果
神経保護作用
2013年に行われた動物実験では、ピクノジェノールは、外傷性脳損傷による神経細胞の損傷を軽減するという結果が報告されました。これは、ピクノジェノールの酸化ストレスや炎症を軽減する能力に起因すると考えられています。しかし、これらの結果や外傷による損傷を軽減するピクノジェノールの役割をより良く理解するにはさらに研究が必要です。
心臓の健康を促進
2017年に行われた小規模な研究では、更年期に関連して起こる心臓血管疾患の治療のため、ピクノジェノールの効果を調査しました。閉経周辺期の女性が、8週間ピクノジェノールを摂取したところ、コレステロールとトリグリセリドの数値が下がりました。これらの数値が高い場合、心臓病のリスクが高まるとされています。また、被験者の空腹時の血糖値や血圧が正常化されたことから、心臓病のリスクも軽減できるという結果に至りました。しかし、この実験はあくまで小規模のものであり、ピクノジェノールの役割を完全に理解するにはさらに規模の大きな研究が必要です。
メタボリックシンドロームの治療
2015年に行われた研究では、ピクノジェノールは、メタボリックシンドロームやそれに関連する肥満、糖尿病、高血圧症などといった症状の治療に使用できるということが示されました。その結果から、ピクノジェノールは、以下のような効果が期待できます。
- 糖尿病患者の血糖値を下げる
- 血圧を下げる
- お腹周りをスリムにする
- 肝機能を促進する
神経保護作用と同様、ピクノジェノールのメタボリックシンドロームに対する効果も、抗酸化作用や抗炎症作用に関係していると考えられます。
ピクノジェノールの使い方
ピクノジェノールは、基本的にカプセルで経口摂取します。ですが、局所的に用いる場合もあります。用途に関わらず、摂取量はできるだけ少なくしてください。身体がピクノジェノールにどう反応するかわかってから、徐々に摂取量を増やすことができます。
国立衛生研究所によると、成人の安全な摂取量は、毎日50~450ミリグラムを最長で1年間です。肌用クリームとして使用する場合は、1週間までが安全とされています。しかし、肌用パウダーとしては、6週間まで安全とされています。
子供が使用する場合の用量については、まだ調査が不十分です。小児科の医師と協力し、それぞれの子供の禁忌症を調べる必要があります。ピクノジェノールは、子供にも安全であると考えられているものの、連続して使用できる期間は1回につき数週間だけです。数週間使用した後は1~2週間使用を中止し、その後、また数週間使用することができます。
しかし、子供のADHD患者が、ピクノジェノールの摂取をやめてから1か月間は症状が戻らなかったことから、定期的に摂取を中止してもさほど効果に影響がないという研究結果も報告されています。ですが、長期摂取による肝臓へのダメージについては、まだ研究されておりません。ご使用の際は、国立衛生研究所が個々の症例に対して定める使用量のガイドラインをご参照ください。
副作用は?
ピクノジェノールは、ほとんどのひとに副作用がおこりません。しかし、少なめの使用量から試し、身体の反応を見てください。
ピクノジェノールの副作用は、以下のものが考えられます。
- めまい
- 回転性めまい
- 疲労
- 胃腸疾患
- 吐き気
- いらつき
- 頭痛
- 眠気
- 口内炎
- 皮膚炎
- 低血糖症
- 尿疾患
以下のような症状を伴う場合、必ず医師に相談してからピクノジェノールを使用してください。
- 妊娠中もしくは授乳中
- 自己免疫状態
- 出血
- 糖尿病
- 2週間以内に外科手術を受ける
- 肝臓疾患
- 心臓疾患
また、以下の薬を服用している場合も、ピクノジェノールを使用する前に医師に相談するなどしてください。
- 免疫抑制剤
- 化学療法剤
- 糖尿病薬
- 血液や血管のつまりに影響する薬やハーブ、サプリメントなど
まとめ
ピクノジェノールは、天然成分のサプリメントですが、良くも悪くも身体に大きく影響します。少ない量から使用を始めて、副作用が出ないことを確かめてください。他に何らかの疾患がある場合や他の薬を摂取している場合は、必ず医師に相談してから使用してください。
Powered by Froala Editor