活性炭とは?エビデンスをもとに効果や副作用を解説

Written by alloeh編集部

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活性炭とは?

活性炭は古くから中毒症状における万能の解毒薬として知られていました。(参考)

解毒薬としての役割は薄れてきたものの、コレステロールの低下作用・歯のホワイトニング・二日酔い治療など、多くの効能が現在でも期待されています。サプリメントとしての製品も販売されています。

活性炭とは、骨炭、ココナッツの殻、泥炭、石油コークス、石炭、オリーブピッツ、おがくずなどから作られる、真っ黒な粉末です。炭は高温で処理されることで活性化されます。高温での処理が炭の内部構造を変化させ、炭の表面にある穴を小さくして数を増やします。(参考

この結果、炭が通常よりも多孔質となります。活性炭を、バーベキューなどに使用される木炭練炭と混同しないようにしましょう。

いずれも同様の材料から作成されますが、木炭練炭は高温処置で活性化されてはいません。さらに、木炭練炭の場合は、人の体に有害となる物質が含まれている点も注意が必要でしょう。

この記事では活性炭がどのように活用されているのかについて解説します。

活性炭の効果

活性炭は、胃の中の毒物や化学物質を吸着して、吸収を阻害することで機能します。(参考)

活性炭の多孔質部分は電気的にマイナスに帯電しており、毒素やガスなどの、陽性に帯電している分子を吸着します。これが、胃のなかで毒素や化学物質を吸着する作用を発揮する理由です。(参考1, 参考2)

活性炭は消化管の中で吸収されないので、吸着された毒素などは便と一緒に体外へ排泄されます。

こういった機序により、下記に述べる効果が実現されています。

活性炭による緊急時の中毒治療

活性炭の毒素吸着能力により、活性炭は様々な治療に使用されます。

例えば、中毒などの治療にも活性炭はしばしば使用されます。これは、活性炭が色々な薬物に吸着して、薬物の作用を減弱することができるからです。

人では、活性炭は薬物中毒に対する解毒薬として1800年代から使用されてきました。(参考1, 参考2)

しばしば、処方薬の過量内服時などに使用される他、アスピリン、アセトアミノフェン、鎮静剤などの市販薬の過量摂取などの際に使用されます。(参考1, 参考2)

例えば、研究によると50-100グラムの活性炭が、薬剤摂取後の5分以内に摂取されると、その薬剤の吸収率が74%程度減少すると報告されています。(参考)

この薬物の吸収阻害効果は、薬剤摂取から30分が経過すると50%、1時間が経過すると20%にまで低下します。(参考)

初期の投与量は50-100グラムで、しばしば2-6回、30-50グラムを2-6時間程空けて追加投与する場合があります。しかし、この複数回投与の方法は最近では使用されなくなっており、ごく限られたケースでのみ有効であると言えるでしょう。(参考1, 参考2)

しかし、活性炭が全ての中毒症状に対して有効であるわけではないことには注意が必要です。

例えば、アルコール、重金属、鉄、リチウム、カリウム、酸・アルカリ中毒などに対しては効果がほとんどないとされています。(参考1, 参考2)

💡 POINT

活性炭は、多くの薬剤や毒素に吸着して、体内に薬剤が吸収されるのを阻害します。しばしば、解毒治療、中毒治療のために使用されます。

活性炭による腎機能の改善効果

活性炭は、腎臓が本来濾過する数々の老廃物を減らすことで、腎機能を亢進するかもしれません。この機能は特に、慢性腎不全などの腎臓が正常通りに濾過機能を果たさなくなった人において重要であると言えるでしょう。

健康な腎臓の場合には、通常は問題なく体で濾過作用を果たすことができます。しかし、慢性腎不全のある患者さんにおいては、尿素やその他の毒素などを体から濾過して排泄することが難しくなってしまいます。

活性炭は、尿素やその他の毒素を吸着する作用があり、体内からそれらの物質を排泄する作用を助けると考えられています。(参考)

尿路や老廃物は、浸透作用によって血中から消化管へ移行します。消化管内で、活性炭に吸着されて、便中に排泄されます。(参考)

人の体では、慢性腎不全のある患者さんで、活性炭の投与が腎臓の機能を改善する効果が報告されています。(参考1, 参考2)

ある研究では、末期腎不全のある患者さんにおいて、活性炭のサプリメントを投与したところ、体内の尿路や老廃物の量が減少したと報告されています。(参考)

しかし、現時点での科学的根拠はまだ十分とは言えず、今後もさらに質の高い研究が行われる必要があるでしょう。

💡 POINT

活性炭は老廃物の排泄を促すことで腎臓の機能を改善する効果があると考えられています。この効能は、特に腎不全などのある人で有用であると考えられていますが、今後の追加での研究がさらに必要でしょう。

活性炭による魚臭症候群の症状改善

活性炭は魚臭症と呼ばれるトリメチルアラミヌリア(TMAU)による不快な体臭を持つ人において、症状緩和に有効であると考えられています。トリメチルアラミヌリア(TMAU)とは、腐った魚と同じ香りであるトリメチルアラニン(TMA)が体内に蓄積してしまう遺伝病です。

健常な人では、魚の香りのするトリメチルアラニン(TMA)は尿中に排泄される前に匂いの少ない物質に変換されます。しかし、トリメチルアラミヌリア(TMAU)を持つ人の場合には、この変換を司る酵素が欠損しています。

このためトリメチルアラニン(TMA)が体内に蓄積して、尿中、汗、呼吸などに排泄され、魚の腐ったような匂いがしてしまいます。(参考)

研究によると、活性炭による多孔質の構造がトリメチルアラニン(TMA)のような臭気のある化合物を吸着して、排泄を促進するとされています。

ある小規模の研究では、トリメチルアラミヌリア(TMAU)の患者さんで、1.5グラムの活性炭を10日間投与したところ、尿中に排泄されるトリメチルアラニン(TMA)濃度が健常者と同様のレベルにまで低下したとされています。(参考)

これらの結果には期待がもたれていますが、今後の追加での研究が必要でしょう。

💡 POINT

活性炭は、トリメチルアラニン(TMA)のような臭気のある小分子を吸着すると考えられています。このことで、魚臭症の症状が軽減される可能性が期待されています。

コレステロール値の低下作用

活性炭はコレステロール値を低下させる効果もあるかもしれません。

これは、活性炭がコレステロールと、コレステロールを含む胆汁酸に消化管の中で結合し、体内へのコレステロールの吸収を阻害するためだと考えられています。(参考1, 参考2)

ある研究では、24グラムの活性炭を毎日摂取していた人において、4週間後の総コレステロール値が25%、LDL(悪玉)コレステロールが25%減少したとされています。 また、HDL(善玉)コレステロールレベルも8%上昇したとされています。(参考)

別な研究でも、4-32グラムの活性炭を毎日摂取した、高コレステロール血症のある人において、総コレステロールとLDL(悪玉)コレステロールが29-41%程度低下したとされています。(参考)

この研究では、高用量の活性炭を使用した人において、特にコレステロール低下作用が顕著でした。

同様の結果が他の研究でも報告されていますが、すべての研究結果が一致しているわけではないことには注意が必要でしょう。(参考1, 参考2, 参考3)

また、このテーマに関する研究は全て1980年代に実施されたものです。 この関連を調べるためには、今後も追加での研究が必要でしょう。


💡 POINT

活性炭はコレステロール値を低下させる効果があると考えられています。しかし、さらに新しい研究がこの関連性を証明するためには必要でしょう。

その他の使用方法

活性炭は、これらの他にも家庭の治療薬として色々な事柄に使用されています。ただし、これらの使用方法の全てが、科学的根拠に裏付けられているわけではないことには注意が必要でしょう。

よく知られている家庭での使用方法には以下のようなものがあります。

ガス(おなら)を減らす

いくつかの研究では、活性炭がガスが増える食事を摂取した後の、ガス(おなら)の産生を減らす効果があると報告しています。

また、ガスの匂いの減少も報告されていますが、全ての研究において同様の結果が得られているわけではありません。(参考1, 参考2

水の濾過

活性炭は、水分中からの重金属やフッ化物を除去するためによく使用されます。

しかし、ウイルス、細菌、硬水のミネラルなどの除去効果はないようです。(参考1, 参考2, 参考3

歯のホワイトニング

活性炭を歯磨きに使用することで、歯が白くなると一般的には言われています。

歯のプラークや沈着色素を吸着することでこの効果が出ると言われていますが、この効果を裏付けるデータはありません。

二日酔いの予防

活性炭は、しばしば二日酔いの治療にも使用されます。

アルコールと一緒に摂取すると、血中のアルコール濃度が低下しやすいと考えられていますが、二日酔いにも有効であるのかはデータがありません。(参考


皮膚の治療

活性炭を皮膚に塗布することで、痤瘡、虫や蛇咬傷の治療になると謳われています。


💡 POINT

活性炭は、家庭の治療薬として複数の用途に用いられます。しかし、現時点ではガスの減少と、水濾過作用だけにのみ、関連する科学的データがあり、その他の効果についてはまだ確証が持てる状態にありません。

活性炭は安全なのか?

活性炭には副作用はデメリットはないのでしょうか?結論から言えば、基本的には安全であると考えられており、副作用はとても珍しく、重症化することもほとんどないと考えられています。

そうは言うものの、吐き気や嘔吐などの不快な症状が発生する可能性はあります。加えて、便秘、黒色便なども有名な副作用の1つと言えるでしょう。(参考)

また、活性炭が緊急時の解毒薬として使用される場合、胃ではなく肺に投与された活性炭が入ってしまうリスクがあります。これは、患者さんが嘔吐している場合、意識が混濁している場合などに特に起きやすいと考えられています。この危険性のために、活性炭は意識がしっかりしている人で使われるべきでしょう。(参考1, 参考2)

さらに、活性炭は、皮膚、消化器、神経に影響するまれな遺伝子疾患である異型ポルフィリン症を持つ患者さんにおいて、投与されると症状悪化の原因となる可能性があります。(参考)

また、まれなケースでは、活性炭が腸閉塞や腸管穿孔などの原因になることもあるとされています。(参考)

活性炭は、特定の薬剤の吸収も阻害することが知られています。このため、すでに薬剤を服用している場合には、医療機関で活性炭の摂取について予め相談をした方が良いでしょう。(参考)

💡 POINT

活性炭は、通常は安全であると考えられていますが、一部の人に置いては副作用が起きるかもしれません。また、他の薬剤との相互作用が起きるケースもあります。

活性炭の使用用量

活性炭のサプリメントなどを試してみたい場合には、アマゾンなどで多くの製品を見つけることができるでしょう。基本的にはそういった製品のパッケージに記載されている目安量を守るようにしましょう。

上述してきた研究の中での使用量を参考として記載すれば、魚臭病の場合には1.5グラム程度の摂取量、コレステロール低下や末期腎不全患者さんへの腎機能改善のための使用では4-32グラム程度の使用が一般的です。(参考1, 参考2, 参考3)

まとめ

活性炭は、色々な用途があるサプリメントです。面白いことに、活性炭にはコレステロールの低下作用、中毒の治療作用、ガス減少作用、腎機能改善作用などが様々な機能が期待されています。

しかし、これらの効能の一部については、まだまだ確証を持てる段階になく、更なる研究が必要でしょう。活性炭を試してみようか考える際には、この点を考慮に入れましょう。

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