はじめに
薬草などの天然の治療薬は古来から、疼痛を含む数多くの疾患を治療するために使用されてきました。
ワイルド・レタス(ラクツカリュームソウ)は、疼痛軽減効果のある植物として知られています。 このため特に、従来の治療法よりも代替療法に興味のある人の間でよく使用されてきました。
ワイルド・レタスは複数の健康への効能があるかもしれませんが、多くの人は、この植物の摂取で起き得る副作用について認識をしていません。
この記事では、ワイルド・レタスの効能と可能性のある副作用などについて取り上げたいと思います。
ワイルド・レタスとは何か?
ワイルド・レタス(ラクツカリュームソウ)は、北アメリカ、ヨーロッパ、中東など世界中の国々に自生する植物です。
この薬草は、川沿い、炉端などの日当たりの良い場所で育ち、最大で1.8メートルほどまで大きくなります。
ワイルド・レタスは明るい緑色の葉が特徴的で、しばしば紫色の斑点を持つ緑色の茎を持ちます。表面を傷つけると、ラクツカリウムと呼ばれる白いミルクの様な物質を分泌します。この物質は、乾燥させると、ケシの未熟なサヤから抽出される麻薬の様に疼痛軽減作用を発揮すると考えられています。 麻薬は、古来から19世紀まで疼痛軽減、鎮静などの目的にしばしば使用されてきました。(参考)
ラクツカリウムは、麻薬と同様の効果があると考えられていますが、その副作用はより少ないでしょう。実際、ワイルド・レタスはしばしば、その疼痛軽減効果から「麻薬レタス」とも呼ばれます。(参考)
医療者の間では、歴史的には文献で1815年頃まで遡れるくらいに以前から、疼痛軽減や百日咳などの治療のために使用されてきました。(参考)
今日では、ワイルド・レタスの抽出液、種、葉、ミルク状の分泌液などから、複数の種類の製品が作られています。これらには、チンキ、粉末、オイル、錠剤などの形態があり、不安、呼吸障害、不眠、関節痛など、複数の疾患の治療のために利用されています。
さらに、生のワイルド・レタスは野生の植物を摂取する採食者の間では食料としても摂取されています。
そして、ワイルド・レタスの精神への効果が、天然の気分高揚薬を求める人の間などの間では、一時的な幸福感などを求めるために使用されたりされます。
Point: ワイルド・レタスの種、葉、分泌液など抽出液は、多くの疼痛や不安などの様々な健康問題を治療を目的とする製品に利用されています。
ワイルド・レタスには疼痛の改善効果があるのか?
ワイルド・レタスの抽出液は、またの名をラクツカリウムとも呼ばれ、疼痛軽減のためにしばしば使用されてきました。
ラクツカリウムは、ラクツシンとラクツコピクリンと呼ばれる苦味のある物質を含んでおり、中枢神経に働きかけて疼痛軽減効果、鎮静作用などを発揮します。(参考)
これらの化合物はセスキテルペンラクトンと呼ばれる、レタス、カレンデュラ、チコリなどのキク科の植物内で最もよく濃縮される有効成分です。(参考)
実際に、セスキテルペンラクトンはワイルドレタスが分泌する白色分泌液であるラクツカリウムの大部分を形成すると考えられています。
多くの天然健康食品会社や代替医療製品を扱うホームページなどで、ワイルド・レタスは疼痛への治療薬として販売されていますが、科学的なデータに乏しいのが実情です。
ワイルド・レタスの疼痛軽減効果に対する、人を対象とした研究はほとんどありません。
しかし、いくつかの動物を対象とした研究では、ワイルド・レタスの抽出液に含まれる化合物には、素晴らしい疼痛軽減作用があったと報告しています。
例えば、マウスを対象とした研究では、1kgあたり15mgのラクツシンと30mgのラクツコピクリンをそれぞれ配合した混合物を投与したところ、鎮痛薬であるイブプロフェンを1kgあたり30mgのと同等の鎮痛効果が認められたと報告しています。(参考)
しかし、動物を対象としたワイルド・レタスの鎮痛効果を調査した研究データにも限りがあります。
Point: ワイルド・レタスは疼痛の治療のために古くから使用されてきましたが、人に対する使用への十分なデータはまだありません。
ワイルド・レタスに可能性のある効能
疼痛以外にも、ワイルド・レタスは以下の様な複数の疾患に対しても利用がされてきました。
- 不安症
- 呼吸器系疾患
- 月経痛
- 関節炎
- 癌
- 不眠症
- 血流不全
- イライラ
- 尿路感染症
また、皮膚に塗布された場合、抗菌作用があるとも考えられています。
代替治療に関する多くのウェブページで、ワイルド・レタスに関する健康への効能をたくさん目にするかもしれませんが、上記に挙げた効能も含めて多くの謳われている効能については十分なデータがないことには注意が必要でしょう。
研究では、キク科の植物から抽出された他のタイプのセスキテルペンラクトンが、炎症を和らげる効果があったと報告していおり、喘息、関節炎などの疾患の治療に役立つ可能性が示唆されています。(参考)
さらに、一部のセスキテルペンは抗酸化作用、抗菌作用、抗癌作用なども発揮すると考えられています。
例えば、キク科の植物の1種であるカモミールなどは、強力な抗酸化作用を発揮するセスキテルペンであるカマズレンを含みます。(参考)
ナツシロギクは同じくキク科の植物で、試験管内の実験で白血病細胞の成長を抑制する作用を示した、パルテノリドと呼ばれる物質を豊富に含みます。(参考)
しかし、ワイルド・レタスに含まれる特定の化合物を対象にした研究は、まだほとんどありません。
ワイルド・レタスについての追加での研究がなされるまでは、一部のウェブサイトや製薬会社が提唱している効能については確証が持てないでしょう。
Point: キク科の植物に含まれる、他のタイプのセスキテルペンラクトンには、抗炎症作用や抗酸化作用がありますが、ワイルド・レタスの摂取に同様の効果があるのかはわかっていません。
ワイルド・レタスの安全性と副作用
ワイルド・レタスの効能については研究がされていない部分が多いですが、その副作用についてはデータがあります。
いくつかの研究で、ワイルド・レタスが健康に及ぼす有害な作用について報告があります。(参考)
ある研究では、生のワイルド・レタスを摂取した8名の人において下記の様な症状が出たとされています。(参考)
- めまい
- 光への過敏症
- 発汗
- 幻聴
- 不安症
- 尿閉
- 心臓合併症
- 呼吸障害
- 吐き気
- 嘔吐
ワイルド・レタスに関する研究データは不足しているので、そのサプリメントなどによる副作用などは明確には知られていません。
また、ワイルド・レタスの抽出液が他の薬剤と、どの様に相互作用するのかなどについてもわかっていません。
動物を使用した研究では、ワイルド・レタスの抽出液は鎮静作用を示しており、鎮静薬などをすでに使用中の場合は併用を避けた方が良いでしょう。
加えて、ワイルド・レタスの摂取が幻覚作用を引き起こしたとの報告もあり、この点でも摂取は危険を伴う可能性があります。
ワイルド・レタスよりも安全な治療方法
天然の治療法で疼痛や炎症を治療する場合には、より研究が行われている代替療法を使用した方が安全と言えるでしょう。
例えば、カンナビジオール(CBD)オイルは、大麻植物(カンナビス)に含まれる成分のうち精神への作用がない化合物を指し、多くの健康への効能があると考えられています。
カンナビジオール(CBD)オイルについては多くの研究が行われており、それらで炎症軽減、慢性疼痛改善、不安解消、心臓の健康改善、睡眠の質改善などの効果が報告されています。(参考)
ターメリックや、オメガ-3フィッシュオイルのサプリなどは、ほとんど副作用などもなく疼痛や炎症の軽減作用を発揮するとされています。(参考1, 参考2)
他にも、データに裏付けされた天然の疼痛軽減作用のある治療法としては、ヨガ、運動、瞑想、鍼灸、温熱療法などが挙げられます。(参考1, 参考2, 参考3)
Point: 生のワイルド・レタスや、そのサプリメントに関しては、現時点では副作用などについての情報がほとんどありません。 疼痛軽減に対しては、データがすでに揃っている代替療法からまず先に試した方が安全と言えるでしょう。
まとめ
ワイルド・レタスは、疼痛に対し天然の治療薬を好む人の間でよく使用されます。
しかし、この鎮痛作用やその他の効能を裏付けるデータはまだ不足しています。 さらに、いくつかの研究ではワイルド・レタスが重大な副作用につながると報告しているものもあります。
ワイルド・レタスが安全かや、本当に効果があるのかについては現時点では不明確です。
現時点では、代わりにヨガ、瞑想、運動などの健康的な全身運動などを行った方が確実でしょう。
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