はじめに
ユズ(シトラス・ジュノース)は、交配種の柑橘系の果物で、ユジャなどとも呼ばれます。 元々は、1,000年以上前の中国で発見されたのが始まりとされていますが、現在では日本、韓国、そのほかの国々などで栽培されています。
ユズフルーツの実は小さく、5.5-7.5センチメートル(2-3インチ)程度の直径です。 比較的厚い黄色の皮を持ち、他の柑橘類に比べても香りや、酸っぱ味が強いのが特徴です。
特に東アジアでよく使用される食材で、ジュース、皮、種などがお酢の味付けや、調味料、ソース、マーマレードなどに使用されます。 また、ユズオイルは、美容用品、香水、アロマセラピーなどに使用されます。
面白いことに、このフルーツには炎症を軽減したり、心臓の健康を促進するなど、複数の健康への効能が期待されています。
ユズを摂取するメリット
1. 高い栄養価
ユズはカロリーが少ない一方で、栄養価が非常に高いフルーツです。 以下は、ユズ100グラムあたりに含まれる栄養素です。
- カロリー:53
- 炭水化物:13.3グラム
- タンパク質:0.8グラム
- 脂質:0.3グラム
- 食物繊維:1.8グラム
- ビタミンC:1日摂取量の59%
- ビタミンA:1日摂取量の31%
- サイアミン:1日摂取量の5%
- ビタミンB6:1日摂取量の5%
- ビタミンB5:1日摂取量の4%
- 銅:1日摂取量の5%
また、ユズには少量のマグネシウム、鉄、亜鉛、カルシウム、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンEも含まれています。(参考)
さらに、カロテノイド、フラボノイド、リモノイドなどの強力な植物化合物も含まれています。
これらの化合物は全て抗酸化物質として働き、炎症の軽減、癌細胞への抑制効果、心臓の健康促進効果などが研究で報告されています。(参考1, 参考2, 参考3, 参考4)
Point:ユズはカロリーは少ないものの、豊富にビタミンAやビタミンCを含んでいます。また、多くの植物性化合物を含んでいるフルーツでもあります。
2. 強力な抗酸化物質
抗酸化物質とは、細胞を傷害したり、体内で過剰になると酸化ストレスの原因となる活性物質である遊離ラジカルを中和する物質のことです。 この酸化ストレスは多くの疾患に影響していると考えられています。(参考)
抗酸化物質が多い食事は、脳の病気、心疾患、2型糖尿病、その他の特定の癌などのリスクを軽減すると考えられています。(参考1, 参考2, 参考3)
ユズには、ビタミンC、カロテノイド、フラボノイドなど、複数の抗酸化物質が含まれています。(参考1, 参考2, 参考3)
ビタミンCは抗酸化物質であるだけでなく、ビタミンEなどの他の抗酸化物質を再生を促す効果があるとされています。(参考1, 参考2
加えて、試験管内の実験では、ゆずとその他の柑橘類の皮に含まれる香り成分であるリモネネが、抗酸化物質として機能して、炎症を軽減させると報告されています。 この作用は、特定のタイプの喘息の治療に役立つと考えられています。(参考)
そして、動物を対象とした研究と、試験管内の実験では、ユズ抽出液の抗酸化物質は肥満、炎症性腸疾患などに対しても有効であると報告されています。(参考1, 参考2)
これらの研究データには期待が持てますが、今後もさらに人を対象とした研究は必要でしょう。
Point:ユズには強力な抗酸化物質で、有害な遊離ラジカルを中和し、体内の炎症を軽減すると考えられているビタミンCやリモネネが含まれています。
3. 血流の改善効果
切り傷やすり傷の後、出血が止まるように血液は凝固します。 しかし、過剰な血液の凝固は小血管や大血管などを閉塞してしまい、そのことが心疾患、脳卒中などにつながるかもしれません。
面白いことに、試験管内で行われた実験と動物を対象とした研究では、ユズの抽出液は血小板の作用を抑制して血栓形成に抑制的に働いたと報告されています。(参考1, 参考2, 参考3)
これらの機能は、ユズの実と皮に含まれている、ヘスペリジン、ナリンジンなどの2種類のフラボノイド成分に関連していると考えられています。(参考)
血流を改善することで、ユズの抽出液は心疾患リスクを軽減するかもしれません。 しかし、この効能のために本格的に使用される前には、さらに追加での研究が必要でしょう。
Point: ユズに含まれる2つのフラボノイドが血栓形成を抑制すると考えられています。 この作用で血流が改善し、心疾患などに予防的に働く可能性がありますが、さらなる研究が今後も必要です。
4. 抗癌作用の可能性
ユズには、癌に対して抑制的に働く可能性のある物質が多く含まれています。(参考)
特に、複数の柑橘系果物に含まれるリモノイドはその典型でしょう。 試験管内のテストでは、乳房、大腸、前立腺などの癌に対して抑制的に作用したとしています。(参考)
さらに、ユズの皮にはタンジェレチン、フラボノイド、ノビレチンなども含まれています。 試験管内の実験や、動物を対象にした研究では、ノビレチンは腫瘍の成長を抑制する他、タンジェレチンは白血病細胞の成長を阻害したとしています。(参考1, 参考2, 参考3)
これらの効能には期待が持てますが、今後も人を対象にした研究は必要でしょう。
Point:ユズには抗癌作用の可能性のある化合物が多く含まれています。しかし、今後も人に対する効能を調べる研究は必要でしょう。
5. 脳機能の保護作用
動物を対象とした研究や、試験管内で行われた実験などでは、脳に対するユズのアルツハイマー型認知症への抑制効果の可能性が示されています。
実際、脳機能低下を伴うラットに対して、長期間ユズの抽出液を投与したところ、脳機能と血糖コントロールが改善しました。(参考)
さらに、ユズフラボノイドであるナリンジェリンは、特に脳に対して保護的な効果があると考えられています。
記憶障害を持つマウスを対象にした2つの研究では、ユズからのナリンジェリンの抽出液が記憶力を改善し、脳を傷害するタンパク質による酸化ストレスを軽減したとしています。(参考1, 参考2)
しかし、同じように、これらの研究も動物を対象とした研究に限られており、今後の人を対象にした研究がさらに必要でしょう。
Point:ユズの抽出液は、脳機能不全を軽減し、記憶力の改善、アルツハイマー型認知症の予防などの効果を発揮するかもしれません。しかし、今後も追加での研究が必要でしょう。
6. ユズの香りによるリラックス効果
リモネネやリナロールなどの化合物は、ユズオイルの特徴的な香りの主成分で、グレープフルーツ、マンダリン、ベルガモット、ライムなどのような香りの成分でもあります。(参考1, 参考2)
面白いことに、いくつかの研究でユズのオイルにリラックス効果があることが示されており、緊張や不安感などを軽減するのに役立つかもしれません。
ある研究では、20名の女性にユズの香りを10分間吸入してもらう実験を行いました。 結果として、ストレスマーカー、気分の変調、緊張感、うつ症状、怒り症状、混乱症状などが30分に渡って軽減したとされています。(参考)
他の2つの研究でも、小規模の若年女性の被験者グループに対して、10分間のユズの香料吸入を実施したところ、心拍数が減少し、神経システムの緊張が和らいだとしています。(参考1, 参考2)
加えて、ユズのエッセンシャルオイルの吸入は、緊張、怒り、倦怠感などを軽減などの面で、湯気(ホットスチーム)の吸入より効果があり、ラベンダーオイルの吸入とほぼ同等の効果があったとされています。(参考1, 参考2)
さらに、子供が入院中の60名の母親に対して、ユズオイルのアロマセラピーを実施したところ、有意に母親の不安レベルが軽減されたとされています。(参考)
このように、ユズの香りは他のアロマセラピーの香りと同じように、感情の改善につながる作用があるかもしれません。
Point:ユズの香りの吸入は心拍数を減らし、ストレス、不安、その他の緊張などを和らげる効果があると考えられています。
ユズのその他のメリット
研究データは限られていますが、ユズには下記に挙げるような他の効能もあるかもしれません。
- 抗糖尿病効果 ある研究では、高脂質食を摂取するマウスにおいて、ユズの皮抽出液を投与したところ血糖レベルが改善したとされています。(参考)
- コレステロールの改善効果 ある研究では、高脂質食を摂取しているマウスにユズの皮抽出液と与えたところ、体重と血中LDL(悪玉)コレステロールが低下したとしています。(参考)
- 心不全に対する効果 動物を対象にした研究では、ユズの抽出液が心臓発作などによる心筋への傷害を軽減し、心不全のリスクを軽減したと報告しています。(参考)
- 骨の健康改善 動物を対象とした研究では、ラットにユズの皮抽出液を投与したところ、骨の強度維持につながったとしています。(参考)
- 感染予防効果 ユズの種抽出液は、インフルエンザ、大腸菌、サルモネラ、黄色ブドウ球菌などの感染に対して抗微生物効果を発揮するとされています。(参考1, 参考2)
- アンチエイジング商品への利用 ユズのような柑橘系果物は、美白効果、シワ予防のコラーゲン合成効果などの目的に、美容品に使用されています。(参考)
これらの多くの効能は、濃縮されたユズ由来の化合物、もしくは特定の化合物に関連するもので、ユズの摂取に直接関連が示されているわけではないことには注意が必要でしょう。
そのため、主に風味づけなどに使用され、直接摂取されることの少ない通常のユズの摂取だけでは、これらの効果が出るとは考えにいでしょう。
Point:動物を対象とした研究と、試験管内の実験では、ユズの抽出液が、感染予防、血糖改善、心臓や骨の健康維持などに効果がある可能性が示されています。また、美容のために使用されたりもしています。しかし、データは限られており、今後の研究が必要でしょう。
ユズの摂取方法
その酸味から、一般的にはユズはそのまま食べられることはありません。 しかし、その他の多くの方法で楽しむことができます。
ユズは伝統的にはアジアでお酢や味付けに使用されました。 日本料理では、生地、粉末、マーマレード、ゼリー、お茶などに加えられて使用されます。
ユズはレモンやライムと同じ酸味を持つので、ドレッシング、調味料、デザート、焼き物、飲み物などを作る際に、他の柑橘系の果物の代わりに使用することができます。
ユズを近くのスーパーマーケットなどで見つけるのは難しいかもしれませんが、ユズジュースであれば、専門店やオンラインで簡単に手に入るでしょう。
その効能のためには、添加物が含まれていない100%のユズジュースを購入するようにしましょう。 多くのユズ製品は、酸味を打ち消すために多くの糖分が添加されがちなので、購入時には成分表示をよく確認しましょう。(参考)
さらに、ユズの香りは、ユズのエッセンシャルオイル、もしくはユズの皮の摺り下ろしをグレープシードオイルなどと一緒に小さなボールに入れて、楽しむことができます。
エッセンシャルオイルは経口摂取すべきではなく、使用時も希釈が必要であることを覚えておきましょう。
Point: ユズはレモン、ライムなどの代わりに多くの料理に利用することができ、ソース、マーマレード、ゼリー、飲み物、お菓子などに適しています。 ユズ製品を購入する際には、添加されている糖分に注意しましょう。
まとめ
ユズは香りの良い柑橘系の果物で、その酸味、健康への効能、心地良い香りなどで人気があります。
人に対する研究データは限られていますが、その抽出液と化合物は、脳の健康、血流改善、抗癌作用など、多くの効能に関連しているとされています。
ユズは、その果肉、ジュース、風味などから、ドレッシング、味付け、お茶、飲み物など、多くの料理に利用されます。 他の柑橘系の果物の代わりにも使用することが可能です。
ユズを含むサプリメントとしては、「オルビス ディフェンセラ」などが有名です。
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