スターアニス(ダイウイキョウ)の効能、使い方と可能性のあるリスク
スターアニスは、中国の常緑樹の1種であるイリシウム・ベラム(ダイウイキョウ/トウシキミ)の実から作られるスパイスです。これは、スパイスの種が形成される星形のサヤにちなんで名が付けられており、リコリスに似た香りを持っています。スターアニスは、その風味や名前が似ているので、しばしばアニスと混同されますが、この2つの種は特に関連がありません。スターアニスは、独特の風味と料理への利用などで有名ですが、薬としての効能も期待されてきました。この記事では、スターアニスの効能、使い方と可能性のあるリスクについて取り上げていきます。
強力な生物活性を持つ化合物に富む
ハーブやスパイスは、あまり知られていないだけで、しばしば健康や栄養の面で人の健康に大きく貢献している場合がありますが、スターアニスもその例外ではないでしょう。(参考)
スターアニスに含まれているビタミンやミネラルの情報はありませんが、スパイスとして利用される際に使われる量はごくわずかなので、その栄養価については無視しても良いでしょう。(参考)しかし、スターアニスには、人の健康にとって有効な複数の強力な生物活性のある化合物が含まれています。スターアニスに含まれる、最も価値のある有効成分はフラボノイドとポリフェノールでしょう。 これらの成分のおかげで、スターアニスのスパイスは、薬としての利用を含む、広い使われ方がされていると考えられます。
スターアニスに含まれる、主要な健康促進作用がある化合物には以下のようなものがあります。(参考, 参考2, 参考3)
- リナロール(Linalool)
- ケルセチン(Quercetin)
- アネトール(Anethole)
- シキミック酸(Shikimic acid)
- ガーリック酸(Gallic acid)
- リモネネ(Limonene)
これらの化合物が一緒になって、スターアニスが抗酸化作用、抗炎症作用、抗菌作用などを発揮している可能性があります。
いくつかの動物を対象にした研究や試験管内での実験では、スターアニス・スパイスの抗酸化物質が、腫瘍サイズの減少効果など、抗癌作用を持つ可能性が示唆されています。(参考, 参考2)
スターアニスに含まれる生物活性化合物が、人の健康に対して有益な効能を持つのかを知るためには、追加での研究が今後も必要です。
Point: スターアニスは、いろいろな種類のフラボノイドやポリフェノール化合物を含んでおり、これがその薬物的な効能の原因物質であると考えられています。
医学的な効能
スターアニスは中国の伝統医学の中で数千年にわたり使用されてきましたが、西洋医学においても最近認知されるようになってきました。スターアニスが有名になってきた理由は、その抗菌作用と薬物的な効能によります。
抗ウイルス作用
この効能に関連している、スターアニスの成分でよく知られているものは、シキミック酸でしょう。シキミック酸は、強力な抗ウイルス作用を持つ化合物です。 実際にシキミック酸は、インフルエンザの治療薬として有名なタミフル に含まれる、主要な活性物質の1つです。(参考)
現在、スターアニスは製薬に使用されるシキミック酸の主要な供給源です。 インフルエンザの大流行による健康への影響が、世界中で懸念される中で、スターアニスへの需要は高まっていくでしょう。(参考)試験管内で行われた実験では、スターアニスのエッセンシャルオイルが、単純ヘルペス1型(HSV1)などを含めた他のウイルス感染症に対しても有効である可能性が示されています。(参考, 参考2)
スターアニスはインフルエンザの治療によく使用されますが、他のウイルス感染に対する治療効果については、今後の追加での研究結果が待たれます。
抗真菌作用
スターアニスはフラボノイドアネトールを多く含んでいます。 この化合物は、スパイスの独特の香りの原因となる他、抗真菌作用も持つ可能性が示唆されています。いくつかの農業領域の研究では、スターアニス由来のトランスアネトールが、食料として栽培される特定の穀物に感染する病原性真菌の発育を阻害したと報告されています。(参考)
試験管内での実験ではありますが、テルペネ・リナロールなどのスターアニスエッセンシャルオイルに含まれる他の生物活性化合物も、人に感染性のある真菌のバイオフィルム形成や細胞壁形成を抑制する効果があったと言われています。(参考)
スターアニスの真菌感染症に対する効能をよく知るためには、今後も追加での研究が必要でしょう。
抗菌作用
他にも、スターアニスの大切な能力の1つには、様々な病気に関与する細菌の繁殖を防ぐ能力が挙げられるでしょう。ある研究では、複数の抗菌薬に対して耐性のある病原性細菌に対して、スターアニスの抽出液に、他の抗菌薬と同等の抗菌作用が認められたとされています。(参考)
試験管内の研究では、スターアニスに含まれる生物活性のある化合物が、複数の異なる細菌による尿路感染症に対してそれぞれ有効であったと報告されています。(参考, 参考2)他の研究でも、スターアニスの抽出液が、現在の抗菌薬ほどの効果とは言えないまでも、試験培地上での大腸菌の繁殖を防ぐのに有効であったとされています。(参考)
現時点では、スターアニスの抗菌薬効果に関する研究は動物を対象にした研究か、試験管内の実験にデータが限られています。 このスパイスが、人の健康にどのように作用するのかを知るためには、今後の追加での研究が重要となるでしょう。
Point: スターアニスは、医療の領域では、数々の真菌、細菌、ウイルスなどの治療に利用されてきました。
料理への利用も比較的簡単です
スターアニスは、どちらとも直接の関係はないものの、アニスやフェンネルなどと似た独特なリコリスの風味をもっています。 コリアンダー、シナモン、カルダモン、クローブ(チョウコウ)などと相性が良いと言われています。(参考,参考2)料理では、スターアニスは丸ごと使用されたり、粉末で使用されたりされます。スターアニスはしばしば、中国、ベトナム、インド、中東の料理で、ダシ、スープ、カレーなどの風味を強めるために使用されることがあります。
また、中国の五香粉、インドのガラム・マサラなどのスパイスに含まれることでも知られています。中国の伝統医療や、民間医療において、スターアニスを水につけてお茶にしたものを、呼吸器の感染症、嘔気、便秘、その他の消化器症状に使用したりします。その他にも、スターアニスは、焼きフルーツ、パイ、クイック・ブレッド、マフィンなどの甘い料理やデザートに加えられることがあります。
今までスターアニスを試したことがなければ、まずは少量から試してみると良いでしょう。 量が多くなりすぎないように、少量から初めて少しずつ味を確認すると良いでしょう。スターアニスの粉末をマフィンにかけてみたり、数個のスターアニスをスープの鍋などに加えて風味を追加しても良いかもしれません。
Point: スターアニスは、リコリスの様な独特な風味があります。 スターアニスはアジア料理などではよく使われるスパイスで、スープ、シチュー、ダシ、焼き物、デザート、水出しのお茶などの材料としても利用されます。
可能性のあるリスク
純粋な中国スターアニスの場合には、安全に使用できると考えられています。 しかし、スターアニスにアレルギー反応が出る方もいるので注意が必要でしょう。(参考)
また、一般的に、より注意が必要な事としては、中国のスパイスによく似ている、毒性の強い日本スターアニスを間違えて摂取しない様にする事でしょう。日本スターアニスは強力な神経毒を含んでいる事で知られ、摂取すると痙攣、幻覚、嘔吐などの重篤な身体症状が起きることがあります。(参考, 参考2)
日本スターアニスは中国スターアニスと見た目がほとんど同じで、流通している中国スターアニスに少量ながら日本スターアニスのスパイスが混入している場合があると言われています。加えて、乳児においては、スターアニスの使用による反応で重篤さらには命に関わる様な反応が起きた症例の報告もあるので、注意が必要でしょう。(参考)これらの重篤化したケースでは、使用されたスターアニスに、毒性のある日本スターアニスが混入していた可能性が示唆されています。 これを踏まえて、乳児や小児においては、スターアニスの使用は避けることが望ましいとされています。(参考)
また、安全面からは、スターアニスを購入する際にはスターアニスの原料や、中国スターアニスの純度などの確認が必要でしょう。もしも、スターアニスの原料や純度に確信が持てない場合には、使用量を減らすなどして、副作用が起きないか様子をみることも大切でしょう。
Point: スターアニスは一般的には安全なスパイスと考えられていますが、毒性のある日本スターアニスが混入している場合があります。 スターアニスを購入する際には、スターアニスの純度の確認と原料の吟味が、思いがけない副作用を避けるためには重要です。
まとめ
スターアニスは、様々な料理に役立つ独特のリコリス風味を持ったスパイスです。その強力な生物活性化合物は、様々な真菌、細菌、ウイルスの感染症などに有用かもしれません。通常、純粋な中国スターアニスの使用は安全であると考えられていますが、毒性のある日本スターアニスが混ざっている場合もあるので注意が必要でしょう。スターアニスを購入するときには、必ず原料を確認し、純粋なスターアニスを購入する様に心がけることと、スターアニスの使用時には、少量から試してみる様にしましょう。
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